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マーダーアントの大群の最中、とりあえずできる限りのことをして見たんだが……数は一向に減らなかった。
いや、むしろ増えてるような気がしないでもない。
ゲーム内時刻はすでに夕方を回って、薄暗くなり始めている。
「ほんま……全部きたんちゃうんかこれ……」
石牢の中で俺の見る景色をストリーミングで視聴していたカイトーがそんなことを呟いていた。
確かに、全部きてるかもしれない、そんな気がしてきた。
俺もローヴォもすでにレベル上がってるんだよなぁ……。
ノーチェを出してないぶん、トンスキオーネやコーサーの件を考えても、かなりの経験値量が必要なはずなんだが……。
プレイヤーネーム:ローレント
レベル:71
信用度:130
職業欄▽
[上級魔術師(無)]
[漁師]
[契約魔法師]
残存SP:10
ボーナスパラメーター▽
効果値:30
消費値:10
速度値:0
詠唱値:77
熟練値:30
見識値:50
ステータス▽
※※※第二弾アップデートから公開※※※
スキルツリー▽
【スラッシュ】Lv10
【スティング】Lv10
【マジックブースト】Lv30
【魔装】Lv4
【エナジーブラスト】Lv25
【マジックエッジ】Lv23
【マナバースト】Lv30
【スペル・インパクト(P)】Lv65
【ナート・エスカレーション】Lv7
【ナート・マジックアームズ】Lv7
【テレポート】Lv2
視認した範囲に転移する(再使用待機一時間)
指定された範囲への転移(再使用待機一時間)
フレンドリストから任意の人物の場所へ転移(再使用待機一時間)
【アポート】LvMAX
・制限解除、無詠唱、ストレージ
【アスポート】LvMAX
・制限解除、無詠唱、ストレージ
【契約魔法】Lv5
・空き契約数0
・[ローヴォ:バッドラックウルフ]
・[ノーチェ:ナイトメア]
・[ルビー:クリムゾンコニー]
・[コーサー:ボス]
・[トンスキオーネ:アンダーボス]
【投擲】Lv50
【掴み】Lv50
MPはできる限り温存。
立ち回りと剣戟のみによってなんとか数を減らしているつもりなのだが……百体くらいを越してから数えることをやめた。
「キリがないな……」
気力はまだある。
だが体力的な部分で少しだけ心配になってきそうだ。
だって魔法職だから、限度がある。
とりあえずヘイトが俺に全て行くように。
ギジドラが投げたマーダーアントの女王の一部を使った寄せ玉は俺が所持している。
握ると強い匂いを発して、投げる方ももろ刃の剣だと思うんだが、ギジドラの方向へアリが向かってないところを察するに、この玉に寄せつけられているようだった。
遠くへ投げても、一度エンカウントしてターゲッティングされてしまえば逃れられないのが軍勢を組んだアリの怖いところである。
「もう、どないするんや!」
「……そうだな」
取り囲むアリの足を斬って肉壁にしつつ、手を考える。
「この森一帯を燃やすか?」
「なんやて」
ストレージにはカンテラが大量に保管してある。
そして燃料も。
全てを転移させて、ばらまいて、火をつけたらいい感じに燃えるだろう。
「……だがお前は蒸し焼きになる」
「そんなもん却下や、恐ろしい!」
「だよな」
森を燃やしたり、環境を著しく変えてしまうと。
スティーブンに怒られるだろうな。
今度こそおいたをしたら大気圏外あたりまで飛ばされてしまうのが頭をよぎった。
さすがにそこまで転移は無理だろうと思っているが、うーんやりかねん。
「あ、そうだ」
ふと、ひらめいた。
「なんや? どうするんや? ええ案でも思いついたん?」
「妙案だ」
実に妙案。
唯一、NPCが非干渉である場所があったりする。
それはプレイヤーが作り上げた、プレイヤーズ拠点。
東だから、テンバータウンを通る必要はない。
そのまま川沿いを上って行って、裏ギルド所属のプレイヤーに占拠された第一拠点村にマーダーアントの群れをぶつけてやろう。
「エナジーブラスト」
まずは邪魔なアリを一掃する。
そしてできたスペースにノーチェをテイムクリスタルから召喚する。
「第一拠点に、アリをぶつける。森を抜けるともう暗いはずだから、夜に紛れて大行進だ。ノーチェに乗れ」
石牢の一部をアポートしてカイトーを解放すると、ノーチェに乗ってもらう。
ビクビクしながら出てきたカイトーはそそくさとノーチェに跨った。
ついでに俺も乗る。
緊急事態だと言うことをわかっているのか、ノーチェはカイトーを乗せるのを嫌がらないようだ。
「……それMPKになるんやないの?」
PKが踏みしめた森の小道を駆け抜けながら、どことなく上ずったような声でカイトーがそう聞いてきた。
魔物、モンスターによるプレイヤーキル行為か。
「どうなんだろうな、実際」
「あかんて、やっぱあかんて」
「いや、どうせ俺の身内みたいな人たちはみんな拠点をテンバーに隣接された箇所に移してる。もしくはノークタウンに足を運んでるから問題ないはず」
この際だが、今の第一拠点にいる中立プレイヤーは、PK側についているとみなす。
戦争だ、大戦争だ。
不用心にも至る所から恨みを買っているようなプレイヤーたちとつるんでいるのが悪いことにしよう。
「ってか……モンスターは近寄らへんで? モニュメントがあるさかい」
「それに関しては問題ないと思える」
「……あー、基本的なモンスターはよってこおへんけど……状況次第では絶対安全ではないんやったな」
「その通りだ」
レイドボス強襲イベントの時も、魔人の時も。
町が絶対に安全だと言う保証はどこにもない。
ログインポイントとして、ある程度の保証はされているが。
PKが奪えたりするシステムがある時点でお察しというものだろう。
ホームモニュメントの機能は、範囲にモンスターをポップさせない。
そして範囲外のモンスターを近寄らないようにする機能を持つ。
極めて限定的だが。
こう言った寄せ玉等を使って、無理やりモンスターを町に引きつける。
近寄らせることは大いに可能だということが確信できた。
「まあ逃げ帰ってマーダーアントが来なかったらそれはそれで儲け物だ」
「せやけど……信用度とかええのんか?」
「プレイヤーズ拠点だから関係ないだろう。それにアリが怖かったら大人しくテンバーに戻るかログアウトすればいい。MPKはレッドネームにならないし、俺は基本的にPKしか狙わないから多分大丈夫だ」
「とんでもないわぁ……けど乗りかかった船やし覚悟決めとこか」
「助かる。まだ看破の効きが弱いからな」
雰囲気で察することはできるが、そいつがレッドネームで殺してもいいかは判別つかない。
カイトーは俺の目として大いに役立っていた。
「もしテンバーにアリが行ったらどないするん……?」
「寄せ玉を俺が持っている限り、爆心地は俺だ」
その辺は問題ないだろう。
奴らの懐で、寄せ玉フィーバーしてやるんだ。
「全速力だノーチェ!」
なんだがワクワクしてきた。
俺は定期的に寄せ玉をニギニギしながらノーチェを駆けさせた。
最近あんまり乗ってなかったからかもしれないが、久しぶりのノーチェは大人二人分を乗せていても力強く走った。
ローヴォとともに適度にマーダーアントとの距離を管理しながら。
や、やばいやつがくるぞおおおおおお!!
に、にげろおおおおおおおおおおおお!!
ローレント率いるマーダーアント軍勢が、まさかの先走り先制攻撃です。
ちなみに、女王蟻の寄せ玉は、一体のマーダーアントの女王蟻の体内にあるフェロモン器官的な部分から作り出すことができ、マーダーアントがいる地域では凶悪な効果を産みます。
で、一度作れば何度か使用できて、そこそこスキルレベルの高い錬金術師がいれば女王蟻の部位さえあれば簡単にリファイン錬成することができてしまったりするので……誰が大戦犯やらかしたか丸わかりですな笑




