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 クラフトという男を見た時、俺は面白いと思った。

 ただ本能の赴くままに人の悪い部分をさらけ出してプレイヤーを殺すPK。

 その中でも、なんだろう、また毛色が違う奴だなと。


 こんなスタンスのやつで、デリンジャーという男がいた。

 腹の中を隠して、ブラフをいくつも打ち。

 任務を遂行することに長けた盗賊ギルドの一人。


 ある意味戦いの中ではインテリ的なやつだ。

 考えて行動する。

 理性を超えて、本能の赴くままに戦うやつは何人もいる。

 そいつはある意味強い。

 生存本能が猛烈に強い証拠でもある。


 だが、それをコントロールし、理性の下に置く。

 それができるやつは、もう一段階違う存在感を持つ。


 トモガラなんかも、傍若無人の言葉が体裁をなした男だ。

 だが、その実はよく考えて勝利をもぎ取りにいく狡猾な奴だ。


「歩け、キリキリ歩け。殺すぞ」


 語尾が殺すぞとは、また何とも言えないほど強烈な語尾だな。

 恐るべし殺気だ。


「……ほんまに奇襲するん?」


「当たり前だ」


 億劫そうな表情をするカイトーにそう言葉を返しておく。

 ため息をついたカイトーは諦めたような顔をしてしっかり後をついてくる。

 コーサーみたいな奴だな。


 さて、初期の俺を知っていて、あれだけ用心深く動くとなると。

 単体では俺に勝てないと確信しているのだろうか。

 それか集団であれば勝てる、と踏んでいるのだろうか。


 だとしたら、面白い。

 そこからは簡単な話だ。実際に──、


「俺に勝てるのか試す、それしかないだろ」


「病気やん」


「失礼な」


 病気じゃないよな?


「……があう」


 ローヴォはそっぽを向いた。

 再教育が、必要なようだ。


 そんなこんな言っている間に、俺、カイトー、ローヴォは森の中を音もなく疾走する。

 相手に索敵に長けたやつがいなかったのが幸いし、高い速度を保って移動。


「わいは隠密系のスキルもっとるけど、あんさんはもっとらんよね?」


「うん」


「……とんでもプレイヤースキルや」


 森とか山に主軸を置いて狩りすれば、誰だって自然と養われるだろ。

 道を行けば魔物とエンカウントするが、道を歩くより魔物を探して森を往き、奇襲した方が狩り果もでかい。


「さっきと同じように木の上に登り、頭上から攻撃する。ローヴォは奇襲に備えろ。カイトーは後ろから追ってきたPKを装え」


 カイトーの出番を無理やり作る。

 戦闘向けというよりも、裏工作に長けた人物だ。

 相手を錯乱させる意味も含めて、色々とやってもらおう。


「ほんまかいな、気が重いわ」


「やれ」


「はいはい」


 接敵する。

 情報は伝わっているらしく、頭上を警戒しているが森の中だ。

 進行方向の木々に注意を払うのがセオリーで、それ以外は散漫になる。

 クラフト以外のPKは不満な顔を黙って押しかためて歩いているだけだしな。


「──おおおい! 待ってくれ! 隊列に混ぜてくれ!」


「ッッ!?」


 PKが一斉に振り返った。

 後ろからは、弓を持ったカイトーがPKに扮している。

 名前は適当に「オコノ・ミヤキ」とかそんな適当なものにしているが、赤く染まったそのプレイヤーネームはPKであることを証明していた。


「びっくりさせんなよ……」


 一番後ろにいたPKがほっと胸をなでおろす。

 クラフトも、特別疑うことはせず、


「大声を出すな、バカが」


 と一言告げるだけで再び先頭を歩き始めた。

 現状、レッドネームなのはPKのみ。

 さらに、偽装できる可能性を持つ盗賊ギルドのものは、すべてPK側についている。

 このことから、カイトーの変装スキルを疑うことは何もしなかった。


「お前、変な名前だな」


「おいしいだろ? お好み焼き」


「確かにそうだが……チッ、たべたくなってきやがったぜ。でも奪った拠点は物資が少ないしなあ」


「静かにしろ、と再三にわたり言ったはずだ」


「へいへい」


 ひと睨みされた後方のPKはだるそうな顔をする。

 クラフトは、そのままカイトーの方へ眼を向けると、言った。


「弓持ちか? 索敵は得意か?」


「まあ、そこそこかな?」


「なら先頭を歩け、そしてなんでもいい、異変を感じたらするに俺に知らせろ」


「はいはい」


 弓を持って先頭に行くカイトーは、そのまま「ちょっと見てくるわ」と一言。

 森の奥へと走って行った。


「ここからは安全確認を行いながら進む」


 クラフトは立ち止まり、周囲に気を配りつつ魔物と俺に気を配りながら進むことを決めたようだ。

 随分と用心な野郎だが、カイトーはそれを打ち崩す役割を担ってくれた。


「うぎゃあああああああ!!!」


 クラフト達の前方から、カイトーの声が響く。

 座ったり、各々休憩を取っていたPK達が一斉に立ち上がり前方に注視する。


「何があった!」


 クラフトが聞く。


「マ、マーダーアントや! うぎゃああああ!!!」


 マーダーアントは東側のクエストエリアに出現する魔物。

 以前レイラとマジックポーションの材料である菌類を採取しに赴いたことがあった。

 ここはかなりの境界線。

 迂闊に近づいてマーダーアントが出てくる可能性は十分にあった。


「ローレントではない!? ならば助けに行くぞ、ここで索敵役を失うのはまずい」


 俺の予想に反して、クラフトは俺じゃなくて魔物であれば助ける方向性で動くようだ。


「けっ、プレイヤーじゃねぇが暴れられるならなんでもいいぜ!」


 イライラが募っていたPK達は、そう言いながら各々前方に駆け出した。

 そして縦に大きく間延びした奇襲しやすい陣形へと至り──、


「へ──?」


 一番後ろにいた男をローヴォが音もなく茂みから襲う。

 そのまま首元に噛みつき声を出せなくして森の奥へと連れて行った。


 小さな悲鳴が上がったのだが、武器をガッチャガッチャ鳴らして威嚇するバカなPKがいて、さらにカイトーがずっと悲鳴をあげ続けているので誰も気づかなかった。


「ちょ、まって、私魔法使いだってばっ」


 そして俺は、遅れをとった女魔法使いの上に飛び降りた。


「きゃひっ」


 馬乗りになり声を出させないように首を絞める。

 そのまま刀を抜いて心臓をひと突きしようと思ったが、


「ッ!」


 無詠唱による風魔法スキルによって阻まれた。

 なかなか対応力があるな、この女。









「ほんま、病気ですやん。頭の中どうにかなってんちゃいますのん?」


「<●><●>」


「ひっ、」






名もなきモブ女魔法使いに、ローレントが襲いかかる。

そして感想欄が羅刹を使った処刑案羅列場に。笑

この戦いと、そして闘技大会などが終われば、ついに。

ついに、ついに、ついについに第二弾アップデートが。

あ、新作アルファのサイトで試し読みできるので、是非どうぞ。

そちらも合わせてGSOと同じように更新しています。

でも基本的にこっちの毎日更新を優先していますからね。





いつもお読みいただく皆様のために。

わたくしteraは、力の限り物語を綴らせていただいてます。

VRゲーものの大賞があるみたいなんで、そっち方面でもコツコツ準備中です。


それでは、いつもありがとうございます。

重ねて厚く御礼申し上げます。


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