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「……デュアルさん」
戦いの終わりを聞いて、肩を落とすハリス。
確かに驚異的なスピードではあると思ったが、デュアルの戦い方はあまりにも自分本位と言うところだろうか。
先手先手を取りに行く、相手の状況は試みない。
裏をかかれたらおしまいの戦い方だ。
駆け引きが下手くそだと言える。
おそらく、絶対的な自信があったのだろう。
「少し様子を見に行きたいところですが……うーん、今行ったら確実にまずいことになりそうですね」
「大変ですね……あれ?」
ハリスを労うツクヨイが仮想ウィンドウを開き何やら確認をする。
「ローレントさん、第一生産組のメンバーからの召集ですよ。お姉さまからメッセージが届いてます」
「む?」
確認すると、確かにレイラからメッセージが届いていた。
内容は、拠点を奪った人物の特定がおおよそ完了したとのこと。
それに関して、前日から動くことがあるので手伝って欲しいと。
「ふむ、ならばテンバータウンに戻るか」
「名残惜しいですが、私たちのホームを取り戻すためですし」
椅子をアスポートでストレージに送り、そのまま関係者席を後に。
俺とツクヨイは、宿に残しているローヴォとヤンヤンを回収しに行く。
ハリスはそのまま肩を落としながら決闘場の奥へを歩いて行った。
マネージメントの集まりと、次のブッキング会議があるらしい。
「くぅん……」
「きゅぅ〜」
「あらあら、なんだか仲良しこよしですね。私とローレントさんみたいに」
「……そうか?」
ヤンヤンから身を寄せられたローヴォが窮屈そうにしていた。
タイヤを抱っこするパンダのように、ローヴォが弄ばれている。
ローヴォはどうすることもできずに、もう好きにしてという表情で舌を出していた。
とでもじゃないが、仲良しこよしには見えない。
尻に敷かれてる気がするんだが、確かテイムモンスターはクラス1からレベルを上げていかなきゃいけない制限があるから、基本的に一緒に行動する飼い主プレイヤーに似る傾向がある。
ローヴォは対人戦にも対魔物戦における戦闘。
そしてぬかるみ、藪、森、草原。
山岳地帯から雪山まで、基本的な部分で仕込んである。
俺が一人で戦いたいときはそっと空気を読んでくれる、そんなテイムモンスターなのだ。
だが、ローヴォよ。
テイムモンスターの傾向から察すると、まるで俺が女の尻に敷かれてしまうことになるじゃないか。
もっと精進しろ。
「……今度強化合宿だな。久しぶりに狩りメインで南の果てまで行こうと思っていたのだが、少し厳しめにやるしかないな」
「わう!?」
「嫌なら茶番はやめてすぐ隣にこい」
そういうと、ローヴォはすぐに俺の足元へと座った。
ヤンヤンが残念そうに唸っているが、やられっぱなしになったままなのは俺が許さない。
テイムモンスター同士、今度戦わせてみるか?
だがその前に、王都もキリのいいところで切り上げて、さっさとテンバータウンのイベントエリアへと戻ることにする。
「ツクヨイ」
「なんですか?」
「次来るときは、決闘場に出るぞ」
「……スイーツが素晴らしかったので、ぜひまた来ましょう」
フレンドリストからレイラを指定すると、ツクヨイとテイムモンスターを連れて、俺たちはすぐにテレポートした。
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「うわっ。わかっちゃいたけど、やっぱりそれびっくりするわね……」
テレポートした場所は、イベントエリアのプールサイドでも、そこに仮設された第一生産組のホームでもない。
調度品もそこそこに、色々な書類が置いてある大きなテーブル。
どこかで見たことあるような光景だと思ったら、第一拠点村のレイラのポーション工房の執務室に似ていた。
だが、かのポーション工房は取り壊されてしまっている。
ってことは──。
「テンバータウンの町長室?」
「いいえ、ここはノークタウンよ」
なんと、ノークタウンだったか。
それも話を聞くと、アンジェリックから提供されたノークタウンの一室ということらしい。
「彼女もなかなか粋な計らいをしてくれるわよね。あのバカとは大違いよ」
この部屋に揃っている備品は、どれをとってしても質がいい物ばかり。
アンジェリックと一部の親衛隊しか知らない、隠れ家的な場所。
俺とツクヨイが王都に滞在している間。
色々と粗相を起こして犬死したケンドリックの責任を、妹であるアンジェリックは自ら背負うとレイラに直接話に来たらしい。
何をしでかすかわかったもんじゃない悪人ロールであるPKと迂闊に繋がりを持っていたケンドリックが悪いので、別に責任を背負う必要はないと断ったレイラであるが、それでも何か力になれることがあれば、とのことでこのノークタウンで“快適かつ安全に”過ごせる環境を提供してもらったようだ。
「お抱えの使用人は彼女の息がかかってるらしいけど、よくやるわねぇ……」
世の中、いろんな人間がいるってことだな。
アンジェリックのそういうところはケンドリックとよく似ている。
「で、二人とも王都はどうだったの? ……デート、だったんでしょ?」
「えへへ、そういわれるとなんだか恥ずかしいですね」
そう言いながら自分の横髪をいじるツクヨイ。
俺は聞かれたことに答えておく。
「決闘場で血で血を洗うのが楽しそうだった」
「……台無しですよ、いやマジで」
「ローレントも相変わらずで何よりね。まあ楽しめたのなら良かったわよ。詳しい情報はあとで聞かせてもらうから、先に本題ね」
レイラはいつだか自分の手伝いをさせていたNPCを呼ぶと、二つの資料を準備させた。
それを俺とツクヨイに手渡すとペラペラとめくりながら説明していく。
「見て分かる通り、一つはノークタウンで行われる闘技大会の概要と、もう一つは……」
「……リストか」
「そうね」
俺の言葉にレイラは短く返した。
一つは闘技大会に関して、俺は指定した時間までに闘技場へログインすることが書かれていた。
今回はエキシビションマッチなので、なんとも楽しくない展開だが、勝ち上がって来たプレイヤーはしのぎを削り合ったツワモノだということにして、無理やり楽しみに置き換える。
そして、もう一つの資料には、端的にいえばプレイヤーのリストだった。
ただの羅列だが、それが意味するところは……、
「敵のリストよ。ナガセといったかしら? 彼から、あなたに丸投げすればいいって言われたのだけど、これでいい?」
「……十分だな」
不敵に笑い合う俺とレイラ。
そんな様子を見て、ツクヨイが若干顔を青くさせていた。
「正義のヒーローとはとても似つかない雰囲気ですね……ぶらっくぷれいやぁよりもブラックですよブラック」
正義のヒーロー?
あいにくだが、そんな柄じゃないな。
「やられたらそっくりそのまま倍以上にしてやり返す。暴力や殺しを振りかざす奴には、同じものを身を以て体感してもらうことが重要だ」
うーん、うーん、うーん。
主人公以外の場所でも色々とドラマが巻き起こりそうな気がするんですが、書くと間延びすると思うので、あくまでローレントのプレイ日記という形で引き続きお楽しみください。
(別の作品で二部一発目から主人公出さなかったら叩かれたので、笑)
もう少し他のプレイヤーにスポットを当てた方がいいのであれば、どんどこやっていきますが、とりあえず蹂躙回を書きたいのでね。
ローレント「よしいってくる」
レイラ「一応、明日結構予定なのだけど……?」
ローレント「フィールドならPK狩りオッケーだろう? 当日はノークタウンに戻って来てサーチアンドデストロイするから心配ない」
ツクヨイ「話が飛び飛びでわかんないんですけど、この作者しょっちゅう脳死状態で書いてるみたいですし、まーた別話で回りくどい補足説明とか、あとがきで私たちが駆り出されるんでしょうか? ひええ」




