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実は本日から私の別作が書店に並んでまして、テンション上がってます。


「……すごい」


 ツクヨイの喉がなった。

 徐々に戦いのギアを上げていくデュアルとデソルの二人。

 観客席のボルテージも比例し、二人の一挙一動に大いに湧き立つ。


 デュアルは剣を二本抜き、高速で移動する。

 そして、デソルは後手に回っていた。

 上手い立ち回りも、速さでごり押しされれば下がるしかない。


「薄鈍、とでも言っておこうか」


「チッ」


 舌打ちをしながら、前に出た。

 後ろに下がり続けると、どの道追いつかれ、翻弄され、死角を貫かれる。

 デュアルの動きを予測し、そしてあえて彼が踏み込む位置に先に飛び込んだのだった。


「速いのは厄介だが……それだけじゃ十傑は名乗れないぞ」


 デュアルが攻撃を繰り出す前に先制。

 盾での面攻撃は変わらないが、ただ打つかる、それだけで体格差を利用した一撃となる。


「くっ」


 攻める機会を失ったデュアルは後ろに飛びのいて距離をとった。

 戦いは再び振り出しに戻る。


「ローレントさん、盾でぶつかられても無理やり攻撃可能なんじゃないです?」


「そうだが、三下さんにそれやれる?」


 戦いを見ながら首をかしげるツクヨイに簡単にそう言ってやる。


「ああ、無理です」


 納得した様で何より。

 ナガセのチャージもそうだが、単純なスキルは発動が早い。

 三下さんのカウンターなんか合わせるだけのノータイム。

 迂闊に攻撃して、返り討ちに合うのは避けたいところだろう。


「盾持ち、故に迎撃する手段を持っていると踏むのが普通だ」


「ご明察です。断崖のデソルはこれまで盾一つで十傑までのし上がりました。扱う技術、立ち回り、どれをとっても一級品で生半可な闘士では近づくことすらままなりません。さらに──」


 ハリスは続ける。


「──彼の絶対の守備を超えた後には“アレ”が控えていますから」


 なにやら含みをもたせた言い方だ。

 そのすぐ、実況の声とともにさらに大きな歓声が上がった。


『デュアル! さらに加速、加速、加速! そしてついに後ろを取ったあああ!』


 アクセラレーションというスキルの効果か、デュアルの速さはさらに上がり、風属性の魔装を行使したステファンばりの速さで、デソルの死角をついに捉えた。


「取ったぞ、貴様の弱点は盾に依存しないその本体だ──ダブルエッジ」


『出た、ダブルエッジだ! 斬撃による攻撃回数が倍加するだけの単純なスキルだが、単純ゆえに双剣使いのデュアルが使えばそれは四倍の脅威と化す!』


 実況の声を聞いて思ったが、地味だな。


「今、地味って思いました?」


「……まあ」


 読心術でも心得てるのか?


「速さと手数を主体とした戦い方は、どの闘士も速攻が主です。隙をついて大技を叩き込むのが圏外から下位ランクでは多いのですが、それが通用するのはあくまで“そこまで”です」


「なるほど」


「……どういうことでしょう? まったくついていけませんですよ」


 終始首をかしげるツクヨイだが、魔法職ならば大きなスキルを使う前と後に、相応の代償があることを熟知して入るだろうに。

 今更なにを説明することがあると言うのだろうか。

 それでも期待を込めて視線を俺に向けてくるので簡潔に言っておく。


「俺のテレポートも、お前のブラックアウトも効果が大きい故に詠唱まで時間がかかるのともう一度使用するのにかなりの時間がかかるだろう?」


「ああ、確かにそうですね。あまり近接職のスキルを知らないのですが、やっぱり効果が大きなスキルだと魔法職と同じような状況になるんです?」


「……それは俺も知らん。魔法職だし。でも、おそらくそうじゃないかと思う」


 スラッシュなどの、初期スキルは発動も早ければ連続した使用も可能。

 だが、ダメージをたたき出せるかと言われればそうではなく、さらにいえば、モーション固定なので使用するとそれが大きな隙につながる。


「大きなスキルにはそれ相応のリスクがつきものです。故に、デュアルさんが使用したスキルの様に、特定のモーションがかからず使用できるスキルが好まれるんですよ」


 地味だが、地味な方が対人戦にはもってこいと言うことだ。

 GSOは初期から身体強化スキルゲーだと言われている。

 それは、具体的なステータス表示が追加されていないから、スキルによる強化がなければ基本的な部分で人間の域を出ないと言う制限がかかっているからでもある。


 首をへし折っても生きている奴がいれば、俺は近接戦で負けちゃうだろうな。

 死んでも生き返る奴とか、さすがにいないことを願うが……。


 そう心の中で思いながら、デソルとデュアルの戦いに目を向ける。

 ちょうど、盾を翻しデュアルの連撃を防いだが、それを見越してすでにデュアルが超スピードでそのさらに後ろを取ったところだった。


「──終わりだ」


 二本の剣が交差し、デソルの首を刈り取りに行く。

 実況も『決まったかー!?』と叫んでいるが、断崖のデソルは不敵に笑っていた。


「……まだまだ、だな」


「ッッ!?」


 ガギッと硬い音がして、デソルの首を刈りに行った二本の剣が両方とも折れた。

 驚愕に顔を染めるデュアル。


「デュアルさん……やっぱり調べてませんでしたか……」


 ハリスが頭を抱えた。


「どういうことだ?」


「いえ、デソルを破るには、まずその盾を乗り越えなければダメなんですよ。断崖と呼ばれるデソルは十傑に上がるために乗り越えなければならない壁だとされているんですが──」


 剣を折られ、動揺したデュアルの顔面を鷲掴みにしたデソルは、そのまま地面に叩きつけた。

 円型闘技場のステージに亀裂が入る。

 普通ならば、一瞬にして頭蓋骨を潰されかねないほどの一撃。

 それでも近接職のデュアルは頭部からおびただしい量の血を流す程度でなんとか耐えきっていた。


「──それ以前に、盾を壊せるほどの攻撃力を持っていないと、デソルには絶対攻撃が届かないので“断崖”と呼ばれているんです。持っている盾よりも本体の方が硬いって……言いたかったんですけどね……ハハハ……」


 ハリスは、一応調べた情報を彼に伝えようとしたのだが、聞く耳を持ってもらえなかったそうだ。

 どうしようかと思ったが、破竹の勢いでここまでこれたデュアルならば、もしかすれば何か秘策があると思っていたらしい。


「うわぁ、マネージメント意味ないですね」


「はい……ただのブッキングウーマンですよ……どうせ私は……」


 登りかけていた崖。

 一度足を踏み外せばどうなるか。


 それはまっさかさまに落ちていくだけだ。

 盾を破る選択をやめ、迂回し本体に攻撃するという選択肢を選んだデュアル。

 盾を壊せないことは、本体を破れないことにつながる。

 顔面を掴まれた、その状態で新しく取り出した剣で斬りつけようとも、


「ニュービー! 十傑入りした奴らは全て俺を正面からぶち破れる奴らだぜ! 速さと手数で勝ってきたお前の噂わかねがね聞いていた、どんなもんかと思ったら……全然だな、全然!」


 全く意に介さず、なんども、なんどもなんども叩きつけた。

 そしてデュアルのHPは、どんどん減っていき──、


「く、そ……ダブル・ウェポ──ぐはっ」


「まだ隠し持ってるのか? だが速さと手数が武器のお前がこうして掴まれてるのがすでにおしまいだと理解しろ、お前の攻撃じゃ、俺の身体、いや盾すら破れない。また出直してきな」


 ──消滅した。


『勝者、断崖のデソルうううう!! 高い、高すぎるぞ断崖!! 十傑の壁を破るものはまたしても現れなかったあああああああ!!』







ツクヨイ「結局噛ませだったんですかね?」


ローレント「だろうな」


ツクヨイ「他にもスキルを隠し持っているように見えましたけど?」


ローレント「使う前にやられたらそりゃ意味ないだろ」


ツクヨイ「ですよね……」


ローレント「…………」


ツクヨイ「…………」






ツクヨイ「あの……王都に何しにきたんですっけ?」


ローレント「……遊びにだろ。決闘観戦もできたし、とりあえず帰るぞ」


ツクヨイ「…………なんだろうそこはかとなく、これじゃない感……コレジャナイ感がする」








小話。


ちなみにですけど、デソルが攻撃を受けても平気っぽかったのはステータスが関係しています。

そろそろですね、ステータス表示解禁まで。


いやほんとに、この要素が揃えば、ようやくVRゲームらしくなってきますね。

スキルもそうですが、ステータスもそこはかとなく記載や考えるのが面倒です。

でも頑張ります。


次回、そろそろ無双。

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