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「っていうか、デュアルの試合なんじゃないのか?」


 カシミでケーキを食べつつ、まったり雑談しているが、このハリスがマネージメントするデュアルの試合が本日行われるわけで、こんなところで時間を無駄にしてもいいのだろうか。


「ああ、デュアルさんは開始三時間前に会場入りして、二時間の精神統一と一時間のウォーミングアップを欠かさないんですよ」


「ほぇぇ、すっごい打ち込み様ですね」


「まさにプロだな」


「えへへ、すごいでしょう? まあ、その間に少しでも集中力を削いでしまうとデュアルさん本気で殺しにかかって来るんで、近づかないようにしてるんです……ハハハ……アハハ……はぁ……」


 そう言いながらハリスのテンションがどんどん落ちて行った。

 あれだけの殺気を出せる人物だ。

 それを向けられた一般人は耐えきれないだろうな。


「だが、甘い」


 試合への事前準備は確かにプロとして素晴らしいが、逆に言えばベストコンディションに持って行くまでにそこまで時間を要するということだ。


「本物は、平素から一瞬にしてトップスピードに乗る」


「うーん、いきなり何言い出してるんですかって突っ込みたいところですが、ローレントさんならば、わりかし言ってることが正しいと錯覚してしまいますね……私も伝染してしまったんでしょうか?」


 人が病原菌みたいな言い方をするな、ツクヨイよ。


「はあ……? どういうことですか?」


 ハリスは未だよく理解できてないような顔をしているので、一つ例を出すとするならば……。

 ちょうど窓の向こうの大通りで、俺にスリを仕掛けてきた無礼な男が、懲りずに誰かの後ろをぴったりとマークし歩いていた。


「あの右腕に包帯を巻いた短髪の男を見ておけ」


「はあ……とりあえずわかりました」


「あの人……最初になんか痛がってた人ですね」


 俺もスリの男を観察する。

 スリには獲物を狙うポイントが存在する。


 無警戒そうに歩いている人よりも、何かに興味を惹かれて歩いている人の方が格段に狙いやすい。

 そうして、人目を引く……例えば王都で有名なスイーツ店カシミの看板のようなものの目の前でスッと気づかれないうちに盗みを働くのだ。


 スーパーで真剣に値段を見比べている人。

 注意が必要だぞ。


 さて、そんなスリの男。

 略してスリ男に二度目の天罰をくれてやる。


「デュアルくらいの殺気なら俺でも出せる──」


 俺はスリ男を睨み殺気を込めた。

 しかも、先ほど手首の関節を外した時と同じものを向ける。


「──ひえええ!? ゆ、許して!! 許してくれ!!」


 手首を抑えて転げ回るスリ男。

 いきなりの様子に瞬く間に人混みができる。

 そして、


「見つけた! こいつだ! こいつが俺の財布を盗みやがったやつだ!」


「ああ! 私もこいつにやられたわ!」


 おそらく何度もスリを働いてたのであろう。

 スリ男は騒ぎを聞きつけた民衆の中にいた被害者たちに捕まりお縄となった。


「……何をしたんですか、ローレントさん?」


 唖然とした顔をしているが、その目には光がない。

 なんだろう「こいつ、またやらかしたな」みたいな意思が読み取れる。


「殺気を飛ばした」


 指向性をもたせてな。

 ただそれだけである。


 表情、行動、それに伴う威圧感が殺気のように現れる場合もあるが、このようにすることも可能。

 なかなか腕の立つスリ師だったから通用するっていうのもある。


「……よくわかりませんが、何かあったんでしょうかね?」


「むむむ?」


 ハリスはよくわかっていないような感じで、野次馬で群がっている店前の騒動を見ていた。

 そうか、わからないのか。

 これがトモガラとかだったら「いきなり殺気出してんなよ」とか突っ込んでくれるんだが……しまったな。

 うっかりしていた、普通直接ぶつけないと気づかないもんなんだ。


「とにかく、デュアルさんは今が十傑を張れる絶好の機会なんですから、邪魔はしないでくださいね?」


「む……」


「ローレントさん、もう諦めましょうよ。とりあえず普通に参加するところから始めてもいいじゃないです?」


「いいのか?」


「もういいですよ……だってローレントさん闘技大会でも勝手に一般応募してたじゃないですか」


 たくさん戦えるから、あえて一般応募にした。

 そしたら運営からメールがめちゃくちゃきたんだが、それも無視した。

 すると、次の闘技大会は俺名指しで参加不可。

 まさかの優勝者と一回こっきりの戦いになってしまうなんて……。

 しまったなあと思いました。


「でもいいのか?」


「これから王都に通うんでしたら私も一緒に連れてってくれれば許可します」


 やったぜ、おい。

 許可がなくても来るつもりだったが、晴れて色々と小言を言われない環境になるってことは、俺は自由の身だ。


「なんでしょう、ツクヨイさん。自由な人が側にいると苦労しますね」


「ハリスさん……わかりますか……?」


「ええもう、すっごくわかります。わかりますとも」


 女子二人は、いつのまにか固く手を握りあい涙目になりながらウンウンと頷いていた。

 人のことを自由自由と、傍若無人の化身みたいに言ってるけど。

 ツクヨイ、お前も十分節操がないといつも思うんだけどな……。


「さてと」


 締めの紅茶を飲みきると、ハリスは口元をハンカチで拭いながら席をたった。


「ごちそうさまでした。これでデュアルさんのマネージメント業務頑張れます」


「頑張ってください! 応援してます! ハリスさん!」


「決闘場か……」


 今日は時間がなくて出れないのは仕方ないが、デュアルと十傑の戦いを見てみたいってのもある。

 だが、大慌てでチケットを購入するような人たちがたくさんいたし、今更買いに行っても遅そうだ。

 名残惜しむ俺を見て、ハリスが言った。


「ローレントさん、かなりご馳走になりましたし、マネージメント席でもよかったらデュアルさんの戦いを見にきますか? でも、凄すぎて挑む気なくなっちゃうかもしれませんよ?」


 ニヤリと笑うハリスに、俺は頷く。


「ありがたい」


「え、結局行くんです? ……まあスポーツ観戦デートってことで今回は多めにみるですよ」


 なんだかんだツクヨイからの許可も出たので、俺は意気揚々とハリスについて決闘場へ向かった。







おい手紙。

手紙ーーー!!!






多分あとでちゃんと手紙は渡すと思います。

とりあえず本筋と関係ないのですっ飛ばします。

こぼれ話をどこかでやれたらいいんですが、その場合誰にスポットを当てて欲しいとか。

リクエストありますか?


あと10/24にtera名義で別シリーズのラノベでます。

そっちの更新もありまして、たまーに一日一更新の時間がずれてしまうこともありにけり。

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