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 積み上げられた石は己の力を表す。

 山籠りの修行の一つ、三途の石積み修行。

 俺の場合は、人の山。


「も、もう食べれねぇ……」


「くそっ、おえっ」


「ば、化け物かよ……」


 俺より大柄で屈強な男もちらほら。

 今は、超大盛りパスタの無限大食い一番をやっていた。

 耐久勝負というが、うむ、なかなか腹八分目!


「……スイーツ屋台の時は、あ、これすっごく良いかも、今回私が出し抜いたかも。って期待した私がバカでした。はいはい、バカでしたよー」


 やさぐれたツクヨイがいる。


「なんだ、腹減ってる?」


「減ってねぇですよ!!!!!!!」


 そんなに怒らなくても良いのに。

 ホットケーキを食べる俺を見ていた男たちが集まり、そしてあーだこーだと言われながら連れて行かれたのさ、──この無限パスタ大一番に。


「強い、強いぞローレント選手うううう!!!」


「……もう、勝手にすればいいんじゃないんですかぁ~」


 そこそこ腹も膨れたところで、賞金をもらう。

 この決闘場区画の周辺では、決闘場の戦いを楽しむものも多いが、フードファイトやら腕相撲やら、何かと大きく賑わいを見せる催し物が多かった。


「こんなはずではなかったんです、こんなはずではなかったんです」


 ブツブツつぶやくツクヨイを尻目に、歓声がどこかで上がるのが聞こえた。

 決闘場で時たま上がっているものとはまた違う。


「うおお! 今期、無名から速攻で決闘ランク11位入りした“双剣の貴公子”──デュアルさんだ!!」


「うおおおおおデュアルが来たのか!?」


「ってことは、今日のメインイベントはトップ10入りをかけた戦いかよ!」


「おい、チケット! ダフ屋いるか!? いねぇのか!?」


 何やら大盛り上がりである。

 金髪の羽帽子、腰の両脇にはサーベルのような剣を一つずつ身につけた貴公子のような男が不敵に笑って道を進んでいる。

 表情は、えらく自身に満ちているな。

 そしてなんだろう、気品さもうかがえる。


 オルトウィルにも近い雰囲気だが、これだけの声を浴びているところ、実力は坊ちゃん貴族以上なのだろう。

 もっとも、戦うステージが違うけどね。

 オルトウィルは基本的にニシトモやトンスキオーネ側の人間だ。


 だが、歓声の中。

 期待を込めた視線を向ける人々に向かって彼は、


「──退け、薄汚い下々風情が」


 表情一つ変えることなく、それが当たり前のように言った。


「おお怖え……」


「やっぱ、マジだったんだな。見下しのデュアルって」


 そんな声も、周りからちらほら上がり始める。

 でもそれが良いという輩もそこそこいた。


 なんだろうな、俺はそんなデュアルを横目で見ながら素直に思う。

 口は汚かろうが、腕は立つし雰囲気には品がある。

 なぜ、そんな男が血生臭そうな決闘場にいるんだろう、と。


「なるほど」


 一つの結論にたどり着く。


「って、まだ食べるんですね……次はケーキですか。まあ私も甘いものは好きなのでお姉さん一つください!」


「は~い、すぐにご提供しますね」


「うおっ、早いし美味しそう!」


「ふふ、カシミのケーキは王都で一番人気のスイーツですよ?」


「ふおおお、カシミ! 屋台でこの美味しさ! ってことは!?」


「そうですね、本店に行けば様々なラインナップ、季節折々の素晴らしいケーキがご堪能できますよ!」


「行きます行きます! ローレントさ──」


 カシミ……どこかで聞いたことある名前だな。

 そんなことを思いながら、ケーキに目を輝かせるツクヨイを尻目に。

 俺はふわふわのスポンジと生クリームをコーヒーで胃に流し込むと、思ったことを口にした。


「……プライドの高い貴族の三男坊か?」


 ──む、殺気。

 背筋を撫でるような、こんな殺気は初めてだった。

 なんと、鋭く切り裂くような殺気だろうか。


「──おい」


 デュアルと目が合った。

 そして、彼はいつのまにか俺の目の前に移動して来ていた。

 この喧騒の中、多少静まり返ってたとは言え、俺の声が聞こえていたのか。

 それに速いな、双剣を持つならば回避優先になるのも頷けるのでこの速さにも納得だな。


「……貴様、その言葉を取り消せ」


 軍服の襟をつかみ上げ、デュアルは殺気を込めた視線を込めてそう言う。

 取り消すも何も、決めつける言葉を口にしたわけじゃ無いので、どう取り消せと。

 俺の目方が悪かった、勘違いしてたとでも言えば良いのだろうか。


 違うな、ここまで激昂するなら合っているはずだ。

 何かが気に入らず、こいつの逆鱗に触れたのだろう。


「逆鱗に触れたのなら謝r──」


 ──ドバッ!

 目の前にあったテーブルが切り刻まれる。

 切り刻んだ奴は、今しがたとんでもない速さで剣を一本引き抜いたデュアル。


「私は取り消せと言っただろ」


 怒りと殺気が混じり合い、もはやとんでもない圧を放っている。

 そしてデュアルは言った。


「取り消すか、ここで死に戻るかをはっきりさせろ“プレイヤー”」


 街中で人を殺す方法となると、決闘か。

 なるほど、素直に謝るか、決闘するかを問うてるんだな?


「食後の軽い運動にもちょうど良い」


 それに気になった。

 これだけ大きな王都の、決闘場の、ランク11位の強さ。

 決闘ならば基本的にリスクは少ない。

 こいつのことならただ殺すだけで気が治りそうだから変な賭けもしなそうだ。




[決闘申請が届きました。申請NPC:デュアル]

[受諾しますか? yes/no]




「今なら殺すだけにしておく」


 そう言うデュアル。

 ふむ、面白く無いから全賭けルールを所望──、


「──ちょ、ちょっとお待ちください!!」


 決闘申請が届き、noを押して新たに全賭けルールでの申し込みをしようと思ったら、何者かが慌てて乱入する。


「……マネージメント」


 デュアルが横目でぎろりと睨んだのは、メガネをかけて栗色の髪の毛を後ろでまとめたスーツ姿の女性だった。

 スーツとか出て来て、世界観がちぐはぐになって来たぞ。

 俺がスーツに見えているだけかもしれんけどな、ブラウスに少しピチッとしたスカート。

 なんと形容したら良いかわからなんが、OLみたいだと素直に思った、ちんちくりんだけど。


「デュアルさん、すぐにランクマッチですよ、何やってるんですか!?」


「くっ……そうか、私がトップテン入りする日だからな……こんな小者に構ってる暇はないか」


 小物って……俺のことか?

 あの殺気をぶつけられて、面白いやつかと思ったが、ただの嫌な奴に変更しておこう。


「小者と十傑入りを天秤にかければ、最悪な気分も少しは晴れる」


 デュアルは剣をしまうと、歩き出した。

 そしてこんな捨て台詞を吐いていく。


「貴様、決闘に乗り気だったようだが、そこらの小者が戦えるほど私や安くない。この私が殺そうとした、その事実を自分の人生の宝として生きていくんだな」


 ムカッ。


「どっちが死ぬかなんて、戦ってみないとわからないと思うが」


「……馬鹿か」


「殺す気なら殺して証明してみろ、お坊ちゃん」


「……死に急ぐなら、今すぐにこの私が引導を──」


「──デュアルさん!」


 再び剣の柄に手を当てたデュアル。

 だが、マネージメントと言われた女性に止められた。

 周りを圧倒していた殺気もすぐに収められる。


「もういいや、許してやる。そもそも、戦うにも貴様と私じゃステージが大きく違う。貴様の戦いには一銭もでないが、私の戦いには多くの金が動く。それを考えるとなんか損だ」


 デュアルはそれだけ言ってこの場を後にした。

 むかー!

 なんたる言い草か。


 だが……、


「面白い……そんな奴がうようよと……あいた」


「何やってるですかああああああ!!!!!!!」


 ツクヨイの杖で頭を殴られた。

 街中でダメージは入らないと言えど、痛みは感じる。


「ほんっとですよ!! あなた、本当に常識ってものを知ってるんですか!?!?!?」


「む?」


 さらに、もう一人。

 メガネの女性が俺を怒鳴りつける。

 いったいなんなんだ?






決闘場はいつか出そうとずっと思ってました。

でも決闘が有名な都市を作るか作らないか。

まーた話が間延びするなーって思って、全部王都にひとまとめになってます。

まあ、多分そんな都市もあるんじゃないでしょうかね。


「くくく、王都の決闘場? ありゃ各所の決闘場の中でも最弱……」


的な感じで。

まあ、未定ですけど。





ローレント「小物とか言われたむかっ! 今すぐ決闘場いって申し込む」


ツクヨイ「あの、ローレントさん……さすがに今のはローレントさんが言い出しっぺですよ……?」


ローレント「む? 何か気に触るようなことを言ったか?」


ツクヨイ「…………戦いすぎて脳が壊れてないでしょうかね……トモガラさんに聞いておかないと……」




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