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 王都観光は二人きりと言うのが条件で、ローヴォはテイムモンスターOKの宿を借りてヤンヤンとともに預けられた。

 寂しくないように、ヤンヤンをツクヨイが側に置いておいてくれたんだけど、ローヴォ正直いって嫌そうだった。

 便乗してドヤされたのが答えたのだろうか……まったく、ローヴォに罪はないと言うのに。


「えへへっ、すごいですね。人通りも多いし、いろんな人種がいます。それに、いろんな店も!」


 往来を手を引かれて歩く。

 栄っぷり的に言うと、ノークタウンの自由市よりも、全プレイヤーに解放されている唯一の都市であるテージシティよりも、ずっとずっと栄えていた。


 様々な食材や、素材。

 さらにピンからキリまでの武器屋、防具屋。

 道具屋もニシトモの営む商会よりも確実にでかい。

 石畳の大通りに、ショーウィンドウが連なって……人混みすごい。


「む」


 俺の軍服のポケットを誰かが弄った。

 とりあえず手を捕まえて関節を外した。


「──イッテェ!!!!」


 ちらりと後ろを伺うと、手を抑えた男がうずくまり、人だかりができる。


「な、何かあったんです?」


 俺の腕をぎゅっと握りしめながらツクヨイも後ろを気にしていた。


「さあな。まあ……因果応報だろう」


 別に取られたものはないんだから、衛兵に突き出すこともない。

 手首の関節を外してずらしたからかなり痛いだろうし、良いお灸になっただろう。


「……ローレントさんひょっとして」


「ふむ」


「ふむ、じゃないですよ。もう、今日は騒ぎ起こさないでくださいでやがります!?」


 語尾がすっごいややこしいことになっているが……アンジェリック病か?

 まあ深くは突っ込まないでおこう。

 ツクヨイの言葉には適当に頷いておいて……そうか、スリもいるのか。


 こんなにでかい所にある裏ってどうなんだろうな。

 そもそもプレイヤーの滞在費は、NPCにも適用されるのだろうか。


 光が強いほど、闇も濃くなる。

 表が騒がしいほど、裏は隠れやすくなる。


 きっと、いるんだろうな。

 物々しい奴らが……。


「ちょっと、せっかくのデートなのによそ見するんですか?」


「む? すまん」


 裏路地の影に想いを馳せていたらツクヨイに現実に戻された。

 さて、彼女ととりあえず大通りを歩いて行く。

 そして大きな公園へとたどり着き、王都マップを確認する。

 こうやって地図が示してあって、どう言う建物があるのかは助かる。


「ふおおお、でかいですね。さすが王都……いろんな施設がある……」


 俺はその中の一つ、決闘場というものがものすごく気になっていた。


「馬車レースに……球技場に……多目的イベント会場……? なんですかね、多目的イベント会場って、なんか公式的な運営臭がぷんぷんしますね……って、やっぱりそっちに目を奪われてましたかローレントさん」


「うむ」


「そんな男臭いものよりも、もっとこう、ほら、舞台とかカジノとか! でも、舞台には興味ありませんし、カジノもちょっと……ああ、ローレントさん」


 ツクヨイは王都マップのある一角を指差した。


「食事も兼ねて、食べ歩き屋台区画に行きましょう。それにここなら決闘場も近いですし、折衷案といきましょう」


「よし、行くぞ」


 別に行かないなら行かないでよかったのだが、気を使って決闘場へ行くといってくれたのだ。

 ありがとうツクヨイ、よし、ここは俺が男気を見せて、お会計全部持ってやろう。




「ほわぁ〜! 屋台って言ってもちゃんと女子好みなものもあるじゃないですか〜!」


「好きなものを選べ、全部俺が出す」


「ぇっ!? ……ローレントさん、一体どこでそんなれでぃふぁーすと技術を!? まさか、ここへきてギャップ胸キュン仕様に切り替えてくるとは……ふむむ、役得役得」


「何をぶつぶつ言ってるんだ、いらないなら他行くぞ」


「やー! 買う買う買います買いますいただきます! えっとぉ……そうだ、おじさんそのクレープください!」


 【あまぁいくれぇぷ】と書かれた屋台にツクヨイは俺を引っ張って行く。

 あまぁいくれぇぷ……か。

 まあ正直甘味は嫌いじゃない。


「ローレントさんはなんにします?」


「……三倍ストロベリークリームで」


「はわっ、意外と乙女ちっくなものをまた……なら私はこのチョコレートがすごいやつを」


「はいよっ!」


 軽快なおじさんの声とともに、クレープが焼かれて行く。

 香ばしい匂いがたまらない。

 なぜかいつのまにかツクヨイが俺の手を握っていたが、この人混みの中だし、逸れてしまうよりも良いだろう。


「はいお待ちどう! へへっ、なかなか身長差のあるカップルじゃないか!」


「え!? おじさん今なんて!? カップル? えへへ、やっぱりそう見えますか〜?」


 満面の笑顔で喜ぶツクヨイ。

 ちなみに俺は、ちょうど決闘場から沸き起こる歓声に耳を傾けていて聞き取れなかった。

 決闘場では、今まさに、誰かと誰かが戦っている。

 命の削り合いを行なっているのだろう。


 気になる、気になる、気になる。

 気になるけど、このクレープおいしいな。

 その向かい側にはなぜかホットケーキ屋もあった。


「ローレントさん、えへへ、あーんしあいましょう! お互い違う味ですし食べて見たい……ってもうクレープがない! イチゴもクリームも三倍のはずなのに!」


 なぜかショックを受けてよよよと泣き出すツクヨイの差し出したクレームを味見する。

 あーんとは、食べて良いってことだよな?

 うむ、チョコもま良し。


「ぁ……これ……かんせt」


「どうした」


 ホットケーキ屋台に行きたいのでぼーっとしているツクヨイに呼びかけると彼女は顔を赤くして慌てふためいた。


「はわわわ! な、なんですか!? なんでしょう!? 誰も間接キスだとかそんなことは思ってないですからね!? 別に食べたあとがどうとか!」


「はあ?」


 同じ師を持つ妹弟子である以上、同じ釜の飯を食っても差し支え無いだろうに。

 今更何を気にすることがあるもんかね。


「とりあえずホットケーキの五十段、食べたら賞金だってさ」


「え? やるんですか?」


「もちろん」


 タダでたくさん食べれ、かつお金ももらえる。

 めちゃくちゃ良いね。

 よく、こういう店を探してやらかして出禁になってた。


「……ああ、ローレントさん」


「なんだ?」


「なんだか楽しそうでよかったです」


 ふむ、戦闘以外にも俺はカルチャーに対しては寛容というか。

 割となんでも楽しむ方だからな。


「そういうお前は楽しくないのか?」


「……いいえ、めちゃくちゃ楽しいですっ!」


 ならばよし──。








今更な話ですが、ぶっちゃけ王都につくまでチュートリアルみたいなもんでもあります。

苦節一年にして、ようやくここまできましたね。

王都には、プレイヤー向けの施設がある区画が存在します。





次回、新NPCキャラがでます。

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