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「……なんだか、人がいっぱいいますね」


 さすが王都、町人NPCや行商人NPCが門の前にはずらりと並んでいた。

 どうやら通行証やらなんやらの確認をしているらしい。


「──チッ、無駄に警備が厳しいな」


 黒い幕を張られた馬車の御者席に乗った男がそんな悪態をついていた。

 違和感、と言うより黒い幕の中から気配を感じる。

 人と同じくらいの大きさ、いやむしろ人が、十人ほどが詰め込まれている様な。

 これはもしや……、


「奴隷商ってやつか」


「ああん? こっち見んじゃねぇよ」


 ゲームの世界だが、そんなこともまかり通っているのかとふと尋ねてみるが、男は鋭い目を俺に向けてそう言いながら馬車を進ませた。


「ちょ、ちょっと、何いきなり話かけてるんですかっ!」


「いや、ちょっと中身が気になったから」


 現代日本だと奴隷文化なんてないが、近しいものは今でも横行している。

 人さらいとか、蛸部屋とか、黒企業とか、正直奴隷よりも過酷なものはたくさんあるだろう。

 中国国境の村から人さらいして中東紛争地域に売り飛ばす奴もいた。

 じじいとまとめて捕まえて海に流したなあ、懐かしい懐かしい。


「それよりもローレントさん……私たちって通行証持ってます?」


「ん? ……持ってないな」


 通行証がいるなんて聞いてないが、おそらく信用度やなんやらの要素が噛み合ってるんだろう。


「よし、次は君たちだ」


 そして俺らの番が来た。

 奴隷商と思しき馬車が、なんの問題もなく通れたところをみるとわりかし規制はゆるいのだろうか。

 それとも別の要因が……。


「通行証は?」


「持ってません」


「なるほど、初めて訪れたプレイヤーか?」


「そ、そうです」


 NPCからナチュラルにプレイヤーと呼ばれると、リアル感が薄れるよな。

 まあ、別にいいんだけど。

 区別されてしかるべきものだし。

 恐る恐る返事を返すツクヨイに、衛兵は言った。


「君の信用度は……1267ポイントか。よし、ならば5000グロウで滞在許可証を発行できる。ちなみに、この滞在許可証は王都に一週間滞在するごとに対応した費用を自動で算出し徴収する優れものだ!」


「え、高くないですか!?」


 一週間に五千グロウの維持費がかかるのは確かに高いと言える。

 だが、王都までこれるプレイヤーならばはした金とも言えるな。

 と、言うよりもツクヨイの信用度ちょっと高くない?

 俺の十倍か……。


「その分、王都にはかなりたくさんの施設がある。さらに流通の中心にもなっているからあまりある物資もある。額相応の価値が、──この王都にはあるんだ!」


 門から覗く、豊かな街並み。

 テージシティよりもよっぽど多い人通り。

 さらにはテンバータウンやノークタウンでは見かけなかった“人種”まで。

 なるほど……ある意味、スタート地点みたいなもんか。

 だとすると、とんでもなく長いチュートリアルだったな。


「それに、君はまだ安い方だぞ?」


 そう言いながら衛兵は俺を見上げる。


「ん?」


「通行証は……持ってないですよね?」


 なぜ、敬語になるんだ。


「持ってないです」


 俺も敬語で返しておく。

 するとツクヨイが「なんか大人の会話ですぅふおおお」と言っていた。


「なら信用ポイントに応じて……うーん、130ポイントですか。では一週間の滞在は50000グロウです」


「た、たっかああああああああああああああ!!」


 驚いて飛び上がるツクヨイに同意。

 十倍差なのはわかるけど、滞在許可証の費用も十倍ってまじですか。

 7日で五万グロウも維持費がかかるのか……。


「普通、ここまで来るには普通の冒険者でもある程度の依頼とランクを上げて来ますからねえ……えっと、あなた名前はなんですか?」


「ローレント」


「ローレントさん、冒険者ギルドのカードをお見せいただけますか? もしかすると割引適応できるかもしれません」


 それを聞いて、気分が重くなった。

 しまったなあ、冒険者ギルドとかあれから行ってないわ。

 色々と騒ぎもあったって言うか、うーん、ギルドの対応が悪かったのが悪い。


「冒険者ランクはEです」


「……割引適応は最低でもCランクからになりますので、申し訳有りません」


 上げておけばよかったな、ランク。

 でも地味に厳しいんだよなあ、行商に五回ついて行くとか、ニシトモも忙しいみたいだし。

 まあ、とりあえずツクヨイとの約束で王都を散策するのが今日の予定なので払っておく。


「普通に払います」


「ええ、大丈夫ですか?」


「まあ、大丈夫です」


 心配する衛兵に即席でお金を払っておいた。

 五万グロウ、昔の俺はPKを何人狩ればいいんだと思っていただろう。

 だが盤石な基盤を商人二人を築いた今、お金に余裕はあるんだった。


「そういえば、なんだかんだ乱獲やら上位素材やら黒鉄やらで、ローレントさんめちゃくちゃお金持ちでしたね……」


「お前も、スクロールでしこたま儲けただろ」


「てへぺろっ」


 割と財力はある方なので、五万グロウ払ったところで問題なし。

 まあ王都に根をはるかはらないかは、また別の話だし維持費が常にかかるわけじゃない。

 今日一日だけで、あと六日分は使えるわけだからな。


「では王都を楽しんで」


 衛兵に見送られて門を通る。


「でもローレントさん。王都、信用度で滞在費が変わるなら、さらに信用度の価値が上がりますね」


「そうだな……つっても今でも十分高いけどな」


「ああ、ブリアンさんから購入して一気にインフレさせた張本人でしたねローレントさん」


 そう、百ポイントで五千万グロウ。

 たまたま百ポイントもらうのに、五千万で購入した農機をブリアンに上げただけなんだけど。

 ブリアンからの信用度も上々だ。

 美味しいご飯を食べさせてもらってるから、いいんです。

 ブリアン、本当にいい子だよ、生産職の鏡。


「では、宿にチェックインしてテイムモンスターたちを預けて行きましょうか!」


 うむ、そそっかしい妹弟子だが、笑えば可愛いタイプだよな。

 なんだか服装にも気合を入れているように思えた。

 そうしたらなんだか軍服の俺が申し訳なくなって来たぞ……。


「ローレントさん! 早く行くですよ!」








生産職やってるやつの信用度はチート。

信用度とは、このゲームでは割と欠かせない奴です。


それと、冒険者ギルドなどでは強さよりも貢献度というものがあります。

ローレントが苦手な奴です。

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