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「待たせた」


「わっ!」


 シュンと現れた俺に驚く一同。

 ブクブク泡の出る温水プールから移動していた。


 そして、サイゼの屋台を前にしてみんなで腹ごなしと。

 そう言うわけか。


「わう」


「む、ローヴォに何かもらえない?」


 腹をすかせたと言う風な鳴き声をするので、サイゼに頼む。


「は〜い、特別サンドウィッチをおみまいしますよ〜!」


「はっはっはっは!」


 尻尾をフリフリしながら喜びを表現するローヴォ。

 もう、子供じゃないんだけどな。

 そこそこ体も大きい、巨大な狼になりつつあるのに。

 相変わらずサンドウィッチモンスターなのは変わらない様だ。


「そうだ、ノーチェやルビーにも何か食べさせよう」


 テイムクリスタルからノーチェを出し、口笛を吹いてルビーも呼び寄せる。

 いつもどこで何してるか分からないが、多分山に遊びに行ってるのかもしれない。

 自由な奴だが、こうして呼べば戻ってくるからいいよね。

 俺の口笛に合わせて戻ってきたルビーは、隕石ばりの速さでプールに突っ込んだ。


「きゃあああ!!」


「おわあああああ!!!」


「なんだっ!? ってうさぎっ!?」


 プールから上がり、水浸しのまま俺のそばまでやってきて顔を左手に擦り付けるルビー。


「ぴぃ〜」


「うむ、ほどほどにな」


「ほどほどにって……すでにほどほどしてないわよ?」


 げっそりとした表情で浅く突っ込むレイラだったが、「ローレントだからもう何も言わないけど」と言って大人しくテーブルに置かれた紅茶を飲んでいた。


「あ、ヤンヤンも一緒に遊ばせましょう」


 ツクヨイの側に座って笹を食べていたヤンヤンも合わさって、サイゼの屋台の前にアニマル大集合となった。

 ヤンヤンが食べている笹は、スティーブンが時々取ってくる様になったらしい。

 ツクヨイを孫娘の様に扱っている、生臭師匠だな、本当に。


「わぁ〜幸せです〜!」


 サイゼは満天の笑顔を浮かべながら出来上がった料理をテイムモンスターたちの元へせっせと運ぶ。


 あ、そうだ、このエリアに来たら海パン履かないと。

 装備をウィンドウから切り替えて行く。


「ロ、ローレントさん!? う、腕はどうしたんです!?」


 セレクからもらった海パン、アロハ、麦わら帽子姿になった俺を見てツクヨイがそんな声を上げた。

 周りを見ると、みんなも驚いた顔をしている。


「お、おい……なんで腕一本消えてんだ……」


「ついさっき三次転職行くって耳にしたけど……それであんなになるかよ……」


「しらねぇよ……しらねぇよ……」


「ってかなんか生傷増えすぎじゃない……?」


 周りのプレイヤーの声が聞こえる。

 ミラージュのガラス片、セレクの軍服を貫通して刺さってたから仕方がない。

 まあ、ログアウトしたら戻るし、消えるからいいか。


「その様子じゃ、無事に終わったみたいだな」


 トモガラがステーキを口に頬張りながらそう尋ねて来た。

 無事とは言い難いが、まあちゃんと三次転職して来た。

 魔装を覚えたことで、魔人に対しても有効となっただろう。

 魔銀装備をつけて耐性を上げつつ弱点をついてもいい。

 うむ、よかろうて、よかろうて。


「よっしゃ」


 トモガラは、ステーキを飲み込み立ち上がった。


「狩りに行くか──」


「──断る」


「んだとぉ?」


「腕が一本足りないし、俺も腹が減った」


 そう言うと、どこからともなくサイゼが300グラム程度のステーキを十枚ほど皿に盛って俺の前に置いてくれた。


「はいどうぞ〜!」


「ありがとう」


 ナイフで切って口に運びながら言う。


「基本的に闘技大会当日まで防衛にあたる」


 そのために色々と準備も進めていることだしな。

 トモガラには悪いが、残ってもらおう。

 そして、狩りに行けない理由は他にもあった。


「……ジー」


 そう、ステーキを食べる俺の目をじっと見つめてくるツクヨイ。

 ガス抜きに、連れていかなければそろそろ限界と言ったところだろう。

 一度言うことを聞くと言った手前……さすがに放置はできないのだ。

 くそっ、今まで放置した結果だと言うのか。


「ちぇ、オーガの集落見つけたってのによ」


「む?」


 それは気になる、気になってしまう。


「南東の藪の先の崖があっただろ? 沿って歩くと洞窟があって抜けたらオーガが住む鬼の森エリアだぜ」


「くそう、今すぐにでも行きたい俺がいる」


「だめーです! ローレントさんは今日はプールで遊ぶんですよ!」


 左腕にしがみつくツクヨイを振りほどきたいが、右腕がないんだった。

 ツクヨイは周りにいた、十六夜、セレク、十八豪に目配せしながら言葉を続ける。


「ウフフフ、今日は、逃しません」


「まあ、たまには羽根を伸ばすのって大事よ?」


「まあ一緒に狩りに行くのもいいが、たまにはこうして水着着てプールを楽しむのもいいってもんだね」


「えええ……トモガラ説得してくれ」


「……さすがに無理だ。俺は一人で楽しんでくる!」


 くそっ、それでも親友か?

 裏切られた気分だ。

 いや、裏切られたんだ。

 俺もオーガの森に行きたい、行きたい。


「ぴぃ」


 ん?

 食事の後は睡眠タイムに入ったテイムモンスターたちの中から、ルビーが出てきて俺の脇腹を突く。


「ついて行きたいの?」


「ぴぃ」


 どうやら、トモガラについて森の奥まで遊びに行きたいらしい。


「いいだろう。トモガラ、ルビーも連れて行け。ログアウトする時は連絡入れるから」


「ん? いいのか? だったら乗せてってくれよ」


「ぴい!」


 喜ぶルビーはそのままトモガラを背中に乗せて大跳躍した。

 この辺の空中をずっと跳び回っていたから、土地勘は掴めてるだろう。

 ルビーは本当に自由だな、これはテージにいた頃から変わってない。

 周辺の草原を大跳躍で行ったり来たり、気が向くままに。


 契約モンスターにしてからは、そんな性格が出まくっている。

 言うことは聞くが、それまでは基本野放しで散策。


「……結局、あの男も似た様なもんよね。なんで友達なのかよくわかるわ」


 そんな彼らの後を見送りながら、呆れた声でレイラが言っていた。


「もぐもぐもぐもぐ、失敬な、もぐもぐもぐもぐ」


「口いっぱいにステーキ頬張りながら喋らないで」









次回、つかの間の王都。





ツクヨイ「うはうはうはきたああああついにデート回、デート回ですよおおおおおおオ!! これで、これで勝つる、勝つる!!!!! ほわぁああああああああああ!!!」


レイラ「みんな思ってるわよ、あの男が普通にデートするはずないって」






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