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「──断る」


「ええ、忙しいの? ……ってこら、テメェ何断ってんだよおい」


 顔を近づけ、鼻息も荒くすごむリーゼントの上級火属性魔法使いNPCブレイム。

 これからさっさと帰らないと、なんかツクヨイとか十六夜とか面倒な雰囲気を醸し出してるんだけどな。


「断らない理由がない」


「ああん? 魔法使いの先輩が来いって言ってんだから来いや」


「同時に、面を貸す理由もない」


 俺の言葉に呼応して、ローヴォもこういう手合いを追い払うために威嚇行動を取る。

 うなり声とともに、犬歯をむき出しにして。


「グルルルル……」


「……チッ、テイマーも持ってんのか……やっぱり気にいらねぇな」


 そんなことを言いながら、ブレイムは俺の右腕を取り──、


「ああん?」


 疑問の声をあげた。


「すまんな、今しがた斬れ落ちたばかりなんだ」


「へぇ……」


 真っ当な輩なら、右腕にハンデを背負った俺に対して勝負を挑んで来ることはないとおもったのだが……こいつはどうやら違うらしい。


 大きく顔を歪めると、「いい機会じゃねぇか」と一言。


「リハビリに付き合ってやるよ」


 と訳のわからないことを言いながら奥の修練場へと俺を連れて言った。

 ローヴォを噛みつかせても良かったのだが、NPC相手にそれをやるのもどうかと思う。

 それに、こういう面倒な相手には一瞬でケリをつけて、トラウマを植え付けてやればいい。

 そうすれば、二度と絡んでこないだろう。


「ちょっと、ブレイムさん。さすがに職員として看過できません」


「ああ大丈夫だぜセリーナちゃん。新入りには上の奴が色々と教えておくのが常ってもんだろぉ〜?」


 ……新入りではないんだけど。

 まあ、出入り全くしてなかったから顔を覚えられているとも思えんけどな。


 こういうのって、普通ギルドに入ったばかりのことにやられるんじゃないだろうか。

 だとするならば、一体何日、何ヶ月越しのフラグ回収とでもいうのだろう。


「ああ、もう、どうしようかしら」


 不安そうな目で、ギルドの中庭にある修練場に引っ張られる俺を見ているセリーナ。


「心配は無用だ」


「喋ってんじゃねぇ行くぞおら!」


「はいはい」


 そして連れていかれて──。




 ──十分ほどですぐに戻ってきた。

 やや、少し服が焦げているところもあるが、ミラージュから受けた損傷に比べればこれくらいは平気な部類だろう。


「ええと……」


 驚愕した様な目で俺を見るセリーナであるが、すぐにため息に変わる。


「さすがはスティーブンさんの弟子でありながら、ミラージュ様から直接転職試験を受けた方ですね……」


「あのリーゼント、早く治療した方がいいかもしれん」


「あなたは大丈夫なんですか?」 


「もちろん」


 っていうか、本当に早くした方がいい。

 今、必死こいて自分の顔を抑えてるところだろうけど、それもいつまで持つか。


「あ、ついでに首を固定するものも何か持って行くといい」


「ええ……?」


 やや困惑した表情を作るセレーナに言っておく。


「少しでも動かせば、首がずれ落ちるから」


 ──と。


 しかしまあ、我ながら見事な斬り口だとは思うが、まさか刀があんなことになるとは思わなかった。

 そしてその効果がさすが羅刹と言えるほどの凶悪な効果だった。






◆◆◆






 話は約十分ほど前に遡る。

 俺は、一人のバカの話を聞きながら修練場へ連れていかれ、勝負を挑まれていた。


「ルーキーに教えておくのが上の流儀ってもんだ。まあ属性も持たないテメェが天下の火属性様に勝てる訳ないけどなあ!」


 まさにテンプレートだな。

 PKの方がまだ頭がいい。


「で、話は済んだか?」


「……なめやがって、痛い目みないと気がすまねぇみたいだな!!」


 レベル75の火属性上級魔法使い──ブレイム。

 何が気に入らなかったのかわからないのだが、とにかく俺にはよくわからない理由をぶっこいて、火属性魔法スキルを行使する。


「フレイムボルテックス!」


 彼を中心に、炎の渦が巻き起こる。


「へへっ、熱いか? 熱いだろ? そしててめぇは俺に近づけねぇで焼け死ぬんだぜ!」


「…………」


「おら、火傷したくなかったら今すぐ土下座ぶっこきなあっ!!!」


 ふむ、威勢がいいのは結構だが……、


「弱く見えるぞ」


 決闘ならば、先にそう言えばいい。

 NPCともなれど、先に攻撃すればイエローマークとなる。

 つまり、反撃迎撃の許可が取れたとも同然だ。


「グルルル」


「いや、ローヴォは下がってていい」


 こんな奴はひと噛みで殺せるとでも言っている様だが……。

 それじゃ、つまらないだろう。

 兼ねてから俺の戦い方をみているなら、誠意を持つ相手には誠意を持って答え。

 こういう手合いには、相手と同じルールを適応せねば。


「マナバースト」


 まず、炎渦フレイムボルテックスの火傷効果は通用しない。

 セレクの装備もあるが、ローヴォの悪運の瞳が限りなく効果を下げている。

 そこへ大きく渦を弾く、マナバースト。


「──へ?」


 うむ、最近通用しない奴が多かったが、健在だな。

 火の粉は散らした、あとはそうだな、敵対者には相応の報いを。

 俺は悪鬼ノ刀を引き抜いた。


「ひっ」


「怖いか?」


 邪気を纏った鬼の刀を見たブレイムは尻餅を着く。

 あとは四肢を切り落とすつもりだったのだが……。




『──ケハッ、首が欲しいな』




「む?」


 声が聞こえた。

 どこからだろう。




『──ホラ、首を落としてよ』








新スキル『リフレクト』は使いませんでした。

まあ、使いどころは考えなくてもわかりますしね。






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