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「……散々やってくれたな」


 ガラス片の攻撃力はとんでもない。

 こっちから攻撃すれば弾き、そして向こうは防御を無視して容赦なく突き刺さる。

 おかげでセレクが作ってくれたせっかくの装備が、軍服がボロボロになった。


 血だらけだぞ。

 腕の出血はフェアリークリスタルを起動し、ツクヨイに貰った回復性能が強化された回復のスクロールを用いてなんとか止めている。

 それでも流血のバッドステータスは少々厄介だな。


 何がやばいって……血が足りなくなってHPが回復せず。

 さらにいえば腹がめちゃめちゃ減る。


「また泣かす」


「くっ、やれるもんならやってみるんじゃのっ!」


 減らず口か?

 ローヴォのスキル、悪運の瞳も起動している。

 俺の総力戦だな。


「お主は何もわかっとらんようじゃな、三華の鏡を壊しても、わしが空中にいる限り主の攻撃は当たらんぞ」


「エナジーブラスト」


「ミラーガード!」


 やはり、遠距離攻撃は通用しない。

 鏡の世界だと言っていたが、アポートでストレージから石柱を転移するのは……可能だった。

 跳ね返ったエナジーブラストは、石柱の陰に隠れる。

 今更ながら、最初から防御用に使っておけばよかった。


 だが、在庫がなあ。


 イシマルに随時作成依頼をしているんだが、基本的にイベント会場の建築とか臨時生産施設の建設様に回してもらっているからあまり、大盤振る舞いできないのが一つ。

 もう一つの理由としては倉庫を一時的にテージシティに写してあるのが、ネックとなっている。

 第一生産組の活動拠点から、テージシティはいささか遠い。

 単身での移動ならば早い馬車を使えばどうとでもなるが、物資を持った状態となるとどうしてもあゆみは鈍くなる。

 それもこれも馬車を持つと面倒臭いモンスターやNPCを引き寄せてしまうからだ。


 さて、話が逸れたが石柱は数を使えない。

 そして俺もこの戦闘で使う気もない。


「なんじゃ? 使わんのか? せっかくそれで空中にぴょんぴょん来れるじゃろうに」


「使わなくても勝てる」


 再び、空中に佇むミラージュの口角が歪んだ。


「ならばやってみせろ。ま、主の手段なんぞ簡単に予測できるがの」


 そう言いながら腕をかざし、再び鏡を出現させようと口を動かす。


「──三華の──」


「テレポート」


 刀を左腕に持ち、転移する。

 ミラージュの後ろへ、視界範囲の任意テレポート。


「わかっておったぞ」


 一度三華の鏡を出すのをやめて、すぐさま後ろで刀を振り抜く俺に対応するミラージュ。

 ふむ、攻撃手段は破片を飛ばすだけ。


「残像」


 焦点をずらし、さらにアスポートで納刀した刀を右脇に挟む。

 鞘を滑らせた方が威力は上がる。


「それも知っておっt──」


「アポート」


「ひっ」


 転移したるは、俺の血だらけの斬り落ちた右腕。

 そうだな、目くらまし要因に使わないと右腕に失礼だろ。


 そういう訳で、急に現れた俺の右腕に一瞬。

 ほんの一瞬だがミラージュの目に動揺が映った。


「鞘渡り──逆手居合抜き」


 剣身の届くフルの間合いなら、順手で握る方がいいのだが、今回の間合いは極めて近い。

 呼吸が顔に届くほどの距離での戦いだ。

 ならば、順手よりも逆手の方が都合がよろしい。

 速いのだ。


「くッ──!」


 それでもミラージュは一瞬の動揺からすぐさま立ち上がると、俺を押しのける様に両腕を突き出した。

 見た目でいえば、銀髪の年端もいかない少女の両腕が宙を舞う。


「腕が使えずとも、わしには魔法がある。弱体化しとるから口を塞げばなんとかなったかもしれんがのう」


 なんとか距離をとったミラージュはそう笑いながら言葉を紡ぐ。


「三華の──」


「エナジーブラスト」


「ミラーガード!」


 再びあの三枚の鏡を出されるのはまずい。

 こちらの手の内もバレているし、次は俺を弄ぶ様な余裕も見せずに殺しに来るだろう。

 すぐさま、遠距離で届きそうなスキルを選ぶ。


 そして案の定、すぐ出現した鏡に反射される。

 俺はエナジーブラストの本流に包まれた。


「……自滅したか? まあ、他に選択肢はなかったのかもしれんがの」


「自滅? そんなことする訳ない」


 殺されるなら、強いやつと戦って、戦い抜いた結果死ぬ。

 夢でも本望でもないが、多分そっちの方が俺は成仏できるだろう。

 だが、噛みつくぞ。

 殺しかかる相手には、何が何でも噛み付いて足掻いてやるぞ。


「今もまさに、そうだ」


 エナジーブラストの光によって、上手く武器の持ち替えを隠すことができた。

 幸いにして悪運の瞳の効果で火傷のバッドステータスを受けることはなかったが、それでも自分の身に返ってきた自分の攻撃はとんでもないな。


 今までこの技で消しとばしてきた人達。

 これ、相当地獄の苦しみだね。

 なんだろう、素肌がミチミチメチメチと焼けて行く感じ。


「くっ」


「余裕こかずに全力でとどめをさしにくればよかったものの」


 そう言って持ち替えた六尺棒を振るう。

 刀では届かない距離でも、これなら届く。


「腕を限界まで伸ばしても、所詮触れるだけじゃろうに!」


 どうかな、当たりさえすれば──スペル・インパクト。


「ぐはッ!? こ、これは無属性魔法スキルのスペル・インパクト!? ──しかも無詠唱!? お主、わしを謀ったのか!?」


 誰も何も言ってないのに、勝手にそっちが勘違いしただけだろうに。


「くっ」


 ミラージュと俺は一緒に落ちる。

 たまたま、泉の上空で戦っていたのが功を奏した。


「あぶねえ……HP一割きってる」


 さて、地面に落ちてからもミラージュのHPは健在だな。

 スペル・インパクトが決めてじゃなかったのは少し惜しいな。

 空中に飛ばす前に方をつけたいのだが……おかしい。


「ブクブクブクブク」


「ん?」


 浮かんでこないぞ。

 大丈夫か?


「わ、わしは泳げんのじゃあああ」


「……あっそう。なら、そのまま水の中で死ね」


「ひ、ひどいっ!」


 酷いも何も、俺らは戦った。

 そしてその結果水に落ち、俺は泳げて、お前は泳げず死亡。

 それでいいだろ。


「嫌なのじゃ、水の中で死ぬのだけはいやなんじゃ!」


「知らん」


「わああああ!!! 助けて助けて!!!」


 ふむ、どうしてもというならば。


「今すぐごめんなさいしろ」


「ッッ!?」


 鬼、鬼畜、悪魔、邪悪。

 と水中で必死にもがくミラージュから恨みつらみが聞こえてきますなあ。

 まあ、俺鬼だからしーらない。


「ふ、ふぐううう!!! ごめんなのじゃ! ごめんなのじゃああああ!!」


「……ったく、仕方がない」


 すごい形相で悔しそうな顔をしながら水中で謝るミラージュ。

 そろそろ限界がきそうだったのでおとなしく引き上げてやることにした。


「ブハッ! ハァハァッ!! ──この、たわけもn」


「あ、手が滑った」


「ぬわーっ!」


 今のミラージュは両手が無い。

 だから俺が捕まえておかなかったらすぐに水中にグッバイなわけだ。


「ひしっ、もう離さんぞっ!」


「泳ぎづらいなあ」


 ビビらせてやると彼女は俺の腰に足を回してホールドした。

 そしてそのまま背負って池の岸まで泳いで行く。


「こ、怖かったんじゃあああ!!」


「……」


 先ほど戦ったというのに、俺の胸で情けなく泣きわめくミラージュ。

 なんか締まらないなと思いつつ、俺の三次転職試験は終了した。







ツクヨイ「目の前に血だらけの片腕って……」


ニシトモ「自分の欠損した体でも躊躇しませんからねぇ、ローレントさん」


ツクヨイ「……まあログアウトしたら元に戻るのが救いですけど」


ニシトモ「あ、そう言えばですが、第二弾アップデートから、ちゃんとした施設で回復するまでアバターの欠損や、傷は保存されるみたいですよ?」


ツクヨイ「……ええ……いらない機能をなんでまたつけてやがるんでしょうかねぇGSOぐっろ……」


十六夜「ってか、またフラグ立ってませんか? うふふ、ウフフフフ」







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