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 イベントエリアとしているこの場では、運営の協力により安全が保障されているらしい。

 さすがにいきなり拠点を奪われるイベントが発生し、PKがのさばるようなことが起こってしまえば苦情もたくさん入ってきてしまうようだ。


 安息の地として、羽休めができる場所であり、そしてPKは侵入できないエリアになっている。

 たとえレッドネームを偽装していても、PKは侵入できない。


「みんなの声を集めてもぎ取ってやったわよ」


 と、勝気な顔をするレイラが豪語していた。

 運営と交渉するとか、すごいよな。

 本来であればNPCとの交渉で警備を配置するとか、そういった形なら好きにしてもいいのだろう。

 直接交渉ぶっこんでPKを強制退場させるなんて、色々と設定ぶっ壊れそうだよな。


「特別措置よ」


「まあ、おかげで潜んでいたPKは強制退場といくつか顔も割ることができましたね」


 温水プールに浸かりながら、レイラやニシトモ、第一生産組のメンバーとそんな話をする。

 突発的プレイヤーズイベントの会場であるこのプールは、普通のプール、流れるプール、そして今俺らが浸かる温水プールがある。

 下からブクブクとジェットバスのような作りになっており、ここが終われば引き払われてテンバータウンの観光名所にでもなるんだろうな。

 そして流れるプールには、俺の魔道船外機が流用されてる。

 あれってば、スクリューを回すタイプではなく、前の水を後ろに吐き出す力で推進力を得る魔道具だから、ちょうどよく当てはまったようだ。


「むむー、流れるプールもいいですが、私としてはウォータースライダーも欲しいところです」


 俺の右隣に陣取ったツクヨイが流れるプールの方を見ながらそういっていた。


「スペースが足りないわよ……作り的に、あれは立体にしないといけないから、今は厳しいでしょうね」


「家は魔石とお金を払えば高速で建つようになったのに、レシピや設計図系のものがないと、この世界にないものはお手軽に作れないんですかねー?」


 そういう問題じゃないだろう。

 ウォータースライダーよりも、先んじてPKをぶっ潰す算段をつけないと。


「怖い顔してるわよ」


「む? すまん」


 顔に出ていたようだ。

 困ったような表情で、レイラはいう。


「ローレント、少しは羽を伸ばしましょ。ピリピリしてても始まらないわよ?」


 どうせ、来るべき時が来たら向こうも動き出すんだから。と心の中で告げていそうだった。

 第一生産組のメンバーは、基本的に待ち構えて迎撃体制をとるらしい。


 そろそろ第二の闘技大会が開かれる。

 そのイベント会場は、テンバータウンではなくノークタウン。


 俺たちの管轄外だ。

 テンバータウンにはそこそこ顔が聞くが、ノークタウンはケンドリックが手中に納めていると聞く。

 ニシトモあたりなら食い込めることもあるだろうが、ケンドリック……未だに真意がわからん相手だ。

 ただの馬鹿か、それとも腹に相当なものを溜め込んでいるか……。


「……ふむ」


「まあまあ、さっきが漏れていますよ。美男子さん?」


「ローレントでいい」


 ニコニコと、俺の左隣に陣取ったモナカがそう茶化して来た。

 いい加減美男子と呼ぶのはやめて欲しい。


「イケメンなら、そこらにいっぱいいるだろ?」


 顔をいじってる奴が多いから、だいたいがモテたくて不自然なイケメンになってるのばっかりだ。

 まあ、線が細いのが今風のイケメンならみんなそうだろうな。

 真なる男前は生きてく力と能力を兼ね備えたものだと思うのだが、時代錯誤だろうか?


「最低でも私に勝てるレベルじゃないとお話になりませんね」


 ……相手はスキルありで、モナカはスキルの使用なし+片手片足縛りだったらいるんじゃないかな。

 ってか、ババア色気付いてんじゃないっていうね。


「お前もうっとおしい」


「いや、別に今に始まったことじゃないじゃないですか?」


「…………」


 ツクヨイさん。

 本当に人目があるからやめて欲しい。


 今まで畏怖というか、腫れ物を見るような目で見られていたのが、今日この会場へ来て、憧れや羨望、期待の眼差しに代わり、そしてそれは速攻で嫉妬の視線になっていた。


「……ぷっくくく」


「何がおかしいんだよ……」


「いや、ネトゲの世界じゃモテモテだな! やったな! ローレント!」


 くそ、今すぐトモガラに決闘を申し込みたい。

 そしてボコボコにしてやりたい。


「あらまあ、寂しいのでしたら私がお隣へ行きましょうか?」


「こんでいい!」


 面白がったモナカが「じゃぐじーきゃばくら気分ですね」と言いながらトモガラの横に移動しようとしたが、足で蹴り押されて俺の隣にスーッと戻って来た。


「そうだ、ローレント。一応PKに対抗する手段は得て来たのよね?」


 レイラの質問に頷いて返しておく。


「教えてくれないの?」


「人払いしてある場所ならいいが、ここは少しな」


 PKはいないが、盗賊ギルドの連中は入り込める。

 どうせなら敵対側についてるのみんなひっくるめて入れなくしたらいいんだが、さすがにそれはできないらしい。


「なら、メッセージで」


「わかった」


 目で合図すると、俺は今回のファシミストロを吸収する作戦の顛末と、ニシトモとトンスキオーネを使って何をしていたか、そしてナガセたちが秘密裏に何を行なっているかをメッセージ機能を利用して伝えた。


「……なるほど」


「うーん、大事な話なのはわかってますけど。気になりやがりますねぇ……ぶらっくぷれいやぁ秘密大好きなもので」


「まあまあ、下手に知るとかえって動きづらいこともありますし、ここは作戦本部長のレイラさんにお任せと行きましょうね、ツクヨイさん」


「誰が作戦本部長よ、誰が」


 私はただの上級薬師よ。というレイラに対して周りにいたメンバーが呆れていた。

 上級生産職に行くだけでもかなり面倒なのに、それでいて初期から生産職をまとめて拠点を作り、今回のイベント会場も準備してのけたレイラが、果たしてただの上級薬師で収まる器なのかどうか。





ブリアン推しが意外と多いこと多いこと。






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