-387-
「……冷たい」
とことんリアル寄せしてるからな、こう言ったずぶ濡れになった不快感もあったりする。
まあ、すぐ乾くんだがな。
それでも、服を着たまま水に入るのは少し億劫といったものだ。
有事でもない限り、な。
「ぶははは! 何やってんだよおまえ!」
さらに、よりにもよってこういう場面をあまり見られたくない人物が来た。
「……トモガラか」
腹を抱えて笑う海パンを履いたトモガラとそして、同じように水着を身につけた第一生産職のみんなが、水に浸かる俺を笑って見ていた。
「ふむ、不意をついた状況で二人を投げ返す。さすがである」
と、ガストン。
「でも結局モナカが投げちゃったわね」
と、モスグリーンの地味な色のビキニに前を開けたパーカーを羽織るレイラ。
「ローヴォちゃんの感触久しぶりですね〜! あ、ローレントさん。食事でもどうですか?」
「ご注文、お承りしますよ?」
俺ではなくローヴォに抱きついている水着に小さなエプロンを身につけたサイゼと、それを笑って見ているミアンはウェイトレスの制服を水着に改造したものを身につけて、お盆を持っている。
「おおう」
さすがに身近に素肌を晒した女子が増えると、目のやり場に困るな。
「そういえば、サイゼにミアン」
「はいなんでしょう?」
「ご注文ですか?」
ご注文じゃないな。
奪われた第一拠点に据えたサイゼミアンの件だ。
「また、屋台をやってるのか?」
そうたずねると、サイゼとミアンは一瞬困ったような顔を浮かべて、すぐに笑顔になった。
「屋台は私たちのアイデンティティでもありますし! 懐かしいですよ!」
「ですです! 昔に戻ったみたいで、なんだか懐かしくって、ウェイトレスの水着バージョン! どうですか!」
水着は、一部の男性ファンの視線を釘付けにしているようだ。
うむ、それが高じて売れ行きも絶好調みたいでなにより。
「ちょ! 鼻の下伸ばしてやがりますね! このバカ兄弟子め! ぶらっくぷれいやぁをなめるな! うりうりやっぱり意外と厚い胸板はいいもんじゃんじょんじゃぁああ」
「うふふ、まだ私はどうでしょう? い、いつもはウェットスーツなんですけど、こここ今回は、せ、攻めて見たんですよ。こ、これはスリングショットっていう水着で……」
顔を擦り付けるな、うっとおしい。
こっちも押し付けるな、うっとおしい。
「まあでも、安心した」
そう言うと、みんなの表情が重なった。
『え?』
な、なんだ?
「いや、あんたでも一丁前に心配するのね」
「当たり前だろうに、レイラ」
「いやいや、だいたい自分のことしか頭にないって思ってるわよ」
「ふむ、我輩は、剣を通じて趣向も合っていると思っていたであるが、見事に別の生ける刀に存在価値を奪われたであるなあ……」
うーん、PKの時は激しく激昂したと言うか。
どう潰すかの算段をしてたって言うか。
そもそも心配してレイラの元に駆けつけただろうに、はは、信用されてねぇ。
「ふふ、冗談よ。あんたをからかっただけ。とにかく、あんたは拠点を奪われた私たちのために頑張ってくれてるって、みんな聞いてるから。だからこうやって集まって帰ってくるのを待っていたんじゃないの」
「……そうか」
「そうだ、ローレントさん」
微笑むみんなに、ホッと胸を撫で下ろしていると、後ろでツクヨイが言っていた。
「セレクさんがローレントさんの水着も作ってくれてるみたいなんで、今すぐ着替えて遊びましょうよ! でもこれは言うことを一回聞く権利は消費しないですからね! みんなでプールを楽しむって言ってるんですから!」
……チッ。
適当な言葉にかこつけて、一回帳消しにして済まそうと思っていたが、その選択肢は先に潰されたか。
「あ、ローレントさん。こ、これを一回つけてくれませんか?」
ひっきりなしにベタベタし続ける十六夜が俺に布を渡す。
「なんだこれ」
「ふ、ふんどしです」
「着ないから」
俺をなんだと思ってるんだろう。
じいちゃんでもブーメランパンツだったぞ。
ちなみに第一生産組の中で、ブーメランパンツを履いているのはガストンとイシマル。
筋肉ダルマコンビだった。
「そんな! あんまりです!」
「……お前が着たら着る。だから着ない」
「え!? わ、私が身につけたら……いいんですか?」
いや、冗談なんだけど。
冗談なんだけど?
ごめん、本当に冗談なんだけど。
「で、でもでも、ここここんな水着……と言えば良いのかわからないもの……と言うよりふんどしって下着というかなんというか……さ、さすがに下着は……えっとその……はっ、もしかしてローレントさんの下着姿ぶーーーーーーっっっ!!!!」
「うきゃあああああ!! 十六夜さん!! 鼻血! 鼻血ぃっ!!」
……俺は先にシャワーを浴びるというか。
体を清めた方が良さそうだな。
ややげんなりとしながらプールサイドへ上がると、そこにはブイフロントの水着を着こなした十八豪と、彼女にせっせと飲み物や食べ物を運ぶアロハシャツと海パンを身につけた久利林の姿があった。
「あら、おつかれさまローレント」
「……優雅だな」
「でしょ? VRでこんなバカンスができるなんて最高じゃないのさ」
「おらローレント! てめぇ勝手に俺の女の水着見てんじゃねぇ!」
……どう考えても見せびらかしてるとした思えないんだけど。
「姫! 次は何を買ってきましょう!」
「そうだね、ならマスドッグの入れ歯、とれたて新鮮で」
「はいいい!!! 今から取ってくるぜうおおおおおおおおお!!!!」
久利林は、十八豪に命令されると気合十分と言った様子で走って行った。
マスドッグって言えば、テージシティの草原に出現するモンスターだよな。
しかも、それって通常ドロップは牙だから、入れ歯単位になるとレアドロ確定なんだが……。
「なんだい?」
横目で見ると、あっけらかんとした表情をしてジュースを飲んでいた。
そして飲み終わった彼女は堂々と言う。
「ちなみに久利林のいうことは気にしなくて良いからね」
「……は?」
どういうこと?
「好きに見ろってことだよバーカ!!」
ええ……素直に困惑なんだけど……。
別に見るつもりは全くないのだが、これを言ったら怒られるんだろうな。
ひどい無理強いだと思う。
さすがに身近に素肌を晒した女子が増えると、目のやり場に困るな。
さすがに身近に素肌を晒した女子が増えると、目のやり場に困るな。
さすがに身近に素肌を晒した女子が増えると、目のやり場に困るな。
何気に女性の素肌を見てローレントがやぶさかでもない反応を見せるのは、初めての描写では?
そう、思いました。
さて、コツコツ設定資料作りますかね。