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「先輩?」


「……やっぱ覚えてないのな。つっても俺は、ただ弱虫を克服するためだけに無理やり通わされてたただのちびっこだったんだけど」


 記憶を探るが、基本的に実家の道場なんか一部の門下生を除いてあったことすらない。

 正直鍛錬のレベルが違うからしょうがない。

 俺が使っていたのは朝と夜。

 昼間は学校といざこざと、いろいろあって忙しい毎日だった。


「……すまん」


 やっぱり覚えてない。

 資金繰りがどうとかで、道場破りからの金銭的巻き上げ以外にもなんかやってたっけな。


「まあいいさ、とにかく。俺はあんたについていく。敗者は勝者に付き従うのみさ」


 そう言って、ナガセは立ち上がり、ファシミとPKを引き連れて出て行った。


「もう終わったんだから、いざこざ止めないとダメだろ?」


 実にあっけらかんとしたその表情。

 まあ、もともと深く考えない質だったんだろうな。


「なんだァ? やけにあっさりしてんな。まあとにかく……終わったのか?」


「うーんたぶん」


 なんだかよくわからん茶番に付き合わされて完全に不完全燃焼気味なのだが、まあ良しとしておこう。

 本懐は、裏ギルドと手を組むノスタルジオと、中立を破ってそちらについた盗賊ギルドだな。







 さて、それからの話だが、トントン拍子で決着はつく。

 お互いの被害状況少なく、唯一壊滅的被害だったのは俺たちが受け持っていた地下水道だな。

 それゆえに、女マフィアたちから少しばかり白い視線を向けられる結果となったが、知ったこっちゃない。


 これで、ペンファルシオ・ファシミストロ。

 かつて三大マフィアと呼ばれる存在を吸収し、いよいよ双頭の立ち位置に上り詰めたこととなる。

 テンバータウンの拠点は奪われたが、テージシティにて彼の地を治める貴族をバックにつけての商い合戦。


 ニシトモとトンスキオーネがまた好き放題暴れそうだ。

 今まで狩りした分のドロップアイテムは、すべて彼らが売りさばく。

 供給元が俺だけってのも忍びなく、基本的にブラウのクラン“ウィルソード”も受け持つようになっている。


 ウィルソードも、初心者育成支援として大きく旗を掲げるようになったな。

 揉め事も多いと聞くが、俺が出るまでもないらしい。

 つーか、もともと俺が管理する団体じゃないんだけど、その物資力からケツモチみたいな扱いになっていると聞いた。


 そして、そんな噂を流す不届きな掲示板も確認した。

 素直に書き込んでおいたぞ、トモガラに教わったやり方でな。


『<●><●>』


 って。

 どういう反応があったかは知らん。

 見る気もない。


「結局、ナガセって誰だったかな……」


 ラスボスに移る前の適当な前哨戦。

 いわゆる中ボス戦のようなものが終わり、結果的に俺に残った疑問はただそれだけだった。


 ミヤモトもいつだか言っていたな。

 俺が現実世界で蹴散らしてきた奴らが、このVRゲームの中で虎視眈々とつけねらっているはずだと。

 うーん、それは別に構わんのだが、そのヘイト被害が周りに行くのは勘弁願いたいことだ。


 と、言うよりなんでリアルの奴らが知ってんだよ。

 名前も完全に変えてあるって言うのによ。


 身バレ被害が怖いなーなんて、思っていたのだが……別にバレても困るようなことはなかった。

 現実世界の一部では有名でも、全体を見た中で、実際社会の枠から逸れることが多かった。


 そもそも十年くらい海外行ってたら、深いつながりがない限り、忘れることの方が大概だ。

 ナガセが昔の門下生って言ってたけど、年を聞いたらことして二十歳らしい。


 そりゃおまえ、道場通ってたって十歳以下の頃だろ。

 そんなちびっこ、俺は覚えてるはずがないのだが、彼はうちの近所に住んでいたことになる。


「世の中って意外と狭いな」


「ええ、そうっすね」


 少し一人になりたくて、現在進行形で全てを交えた祝勝会から抜け出してテージシティの数ある酒場の適当な場所に、ローヴォを連れて一人で飯を食っていると、隣にナガセが来ていた。


「……なんでいるんだ」


「いや、こうして先輩と飯を食うの久しぶりっすわ」


「はあ?」


「よく奢ってくれたじゃないっすか。近くのコンビニで駄菓子とか」


 それを聞いて思い出した。

 近所にいた、昔、いじめられてたクソガキ。


 いじめられて、抵抗して、それでも負けて。

 って繰り返すガキを不憫に思って、反抗してもしなくてもカツアゲされるなら、最初からお金出してればいいだろって言ったんだった。


「ん? そんなに奢ったっけ?」


「後ろついてちょろちょろしてたら、ため息つきながら10円のガムくれてましたよ」


 ……別に10円ガムくらい、くれって言われたらいつでもやれるしな。

 それを拒むのも、なんて言うんだろう……小学生に10円ガムくれって言われて断ると、なんか小学生以下みたいな感じがするから買ってやってた気がする。


 ……あんまり覚えてないけど。

 そんな気がする。

 っていうか強いやつ以外覚える気がさらさらなかったってのもある。


「当時クソガキだった俺は、そこで気づいたんすよ……抵抗にも力がいるってね!」


 そこからこのガキはなぜか、親に強くなりたいと言い。

 何故かうちの道場を紹介されたらしい。


「ちょうど、ちびっこ教室格安でやってたんで」


「ってかさ、その敬語やめない? なんか嫌なんだけど。ってか、先輩って……十歳は離れてるんだけど」


「いやいや、同じ道場の先輩じゃないっすか」


 ナガセは笑いながら食い下がる。

 そしてさらに、


「まあ、覚えてないかもっすけど。あの時高校生だった先輩が、不良十人に囲まれて、全部ゲンコツ一発で倒すところ見て、俺、こんな人になろうって思ったんすよ」


 ……俺は、知らないうちに小さなクソガキに不良の道を選ばせていたんだろうか。

 ただいちいち絡んで来て面倒なやつを粛清してただけなんだけど。

 俺自身は不良じゃない、不良じゃないと神に誓って言える。


「とりあえず、話はわかったからどっかいけよ」


「つれねぇー。昔っからつれねぇー」


「その昔もあんまり記憶にないからな」


「まあいいや、とにかく面白い巡り合わせってあるんだなって感じじゃん」


 俺としては、その不良がどうしてVRゲームでもこんな不良の真似事をしているのかが気になるところ。

 そっちの方が面白い巡り合わせだろうに。


「で、話は変わるけど。俺たちはあんたに潰されたってことで潜伏する」


「……へぇ」


 グラスに入った氷を揺すって鳴らしながらナガセは急に話の方向性を変える。


「PKにはPK専用の掲示板がある。そっちを使って適当な情報収集をしとくぜ。まあ、できることっつったら、そっちのつながりの情報かき集めることしかできないからな」


「頼む」


「任せてくれよ。って言うか、俺らはPKやってるけど闇討ちみたいな真似はしない。こっちから堂々と宣言して狩るのがPKの美学ってもんだ。まあ、PKじゃないけど、あぶれた奴らが最後に集まる場所ってのも俺は作って見たかったからな」


 そして、ナガセは一通り話すと席を立ち店から出て行った。

 協力的なのはいいことだが、後輩風吹かせて……いや先輩風にかこつけて俺に飲み物奢らせるってどう言うことだ。


「クソガキ……変わってないな」







次回、水着回。

誤字脱字すいません。


いつか、報告のものは直しておきます。

それより、地球○衛軍、発売日決まりましたね。


では、次回、次々回ともに水着回です。

(男の水着パラダイスではない、もう書き終えた)




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