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「勘違いしてるところ悪いが、別に取って食うつもりではない」


 飛んでくる火の粉は容赦なく振り払うけど。


「関係ねぇよ。取って食おうがそうじゃなかろうが、俺に取ってもてめぇらは飛んでくる火の粉として変わりねぇよ!」


 と、ナガセは自分の背中にファシミを隠すと、戦闘態勢をとる。

 タフネスとヘビースキンの影響で、体は無傷だが、俺のエナジーブラストやら自分のチャージで突っ込んだ影響で装備にはガタがきているってところかな。


「ちっ、こんななりじゃ戦いたくないけど、今日はキマチがいないからとやかく言われる必要もない」


 性能を度外視してファッション性を突き貫くのがキマチのポリシーなのか。

 どうでもいいが、腕のいい縫製師に頼んでどっちも両立してもらえ。

 俺の装備は一級品。

 ピンチになってわかる、セレクの腕の良さ。

 ガストンも、セレクも、そしてレイラも。


 ここぞという時に、助けてくれるものを作ってくれる。

 武器に、防具に、回復薬。

 ちらほら出てくる上級ポーションの中でも回復性能はピカイチだ。

 ギリギリだった三下さんのHPが半分以上回復するのはやばい。

 彼は戦士職のレベル85だから、俺の何倍のHPを保持している?

 俺だったら全回復してるだろうなあ。


「で、どうすんだ? 初見殺しはもう通用しねえ。スキルレベルで圧倒的な優位性だぜこっちはよォ?」


 そう凄む三下さん。

 的を射ているのだろう、ナガセからの返答はない。

 ならば、PKであるならば蹴散らしてしまおうか。


 エナジーブラストや、マナバーストと魔闘を纏った一撃でもなかなかクリティカルヒットを与えることができないその防御力。

 うん、欲しい。


 だが、いうことを聞くようなやつじゃないだろうな。

 こういう手合いは死んでも自分のプライドで動きそうだ。

 だが雑多なPKとは一つ違って、一度舎弟に収めれば十分な役割をになってくれるだろう。


「加わる気がないなら……」


 そう言いつつ一歩前に出たところで、ナガセからこんな要求があった。


「待てよ……俺とてめぇの一騎打ちにしないか?」


「なんで」


「頼むぜ。正直これ以上人が減るのは俺は好きじゃない。仲間内でわいわいやってるのが一番出しな」


 だったらなんでPKやってんだろう。

 戦うのが好きなら決闘でもなんでもいいと思う。


「一定数いるんだよ、何やってもあぶれちまう奴って。嫌われちまう奴らってのがな」


「そうか」


 俺は別にいいが、他の二人はどうなんだろう。

 コーサーと三下さんに視線を送る。


「コンシリエーレに従いますよ? 一騎打ちで全ての方がつくなら、トンスキオーネさんだって物資の被害が少なくて助かるでしょうし、何より私はさっきこの人と対決してもう自分でもわからないくらい精神力を使ったというか、本当に疲れたんで帰りたいです、はい」


「……ああ、うん、そうなんだ」


 コーサーの精神、だいぶすり減ってたしな。

 俺がやられたと思って死ぬ気になって頑張ったが、結果生きてて気が抜けたというか。

 逆に精神死んだってさ。

 お疲れコーサー。


「ああん?」


 三下さんは不服そうだった。


「お前わかってんのかァ? 地下水道は全部ぶっ潰したし、こっちの戦力はテメェらよりもだいぶ上で、地上波全て掌握してるって報告上がってんだぞ? 今更何か隠し球があるとか、一騎打ちならば勝機があるとか舐めてるとしか思えねェだろォが、大人しく降伏して軍門に下るか、それが嫌なら素直に壊滅だ」


 そういうと、ナガセはファシミの顔をじっと見つめ、そして振り返って俺らに頭を下げた。


「頼む」


「ナガセッ!!」


 悲痛な面持ちで彼を心配するファシミ。


「ファシミの姐さん……」


「あ、あのナガセさんが……頭を下げるなんて……」


 周りで生き残っていたPKたちも、どうしたらいいのかわからない顔をしている。

 ……おい、なんでこっちが悪者みたいになってんだ。


 おかしくね?

 普通、PK側とマフィア側が絶対的な悪じゃないのか。


「悪魔だ……やっぱり、ローレント……鬼じゃねぇか……」


「くそう……下のまとまりがねぇ舎弟たちは好き勝手やってるけどよぉ……俺らはただ自由に生きたかっただけなのに……」


「姐さんだってそうだ……彼女を助けるために……ナガセさん……」


「こら! それはいうなって話だろ!!」


「で、でもよぉ……」


 ん?

 なんだか、混み合った話があるのだろうか。


 よくわからんが、PKやってるけど実はいい奴感出すのやめて欲しい。

 倒すのに罪悪感はないけど、色々と尾ひれがついた噂が立つのはマジ勘弁。


「いや、もういいだろ。隠してても殺されたら終わりだ」


 頭を上げて、横でうだうだ言う舎弟たちを手で制すと、ナガセは俺たちの方を向く。


「俺たちは復活できるが、NPCのファシミは殺されたら終わりだ。戦わなくても良い、負けを認める。だが、彼女の安全だけは確保してくれ頼む」


「ハァ……んだよ、こっちが悪者みたいじゃなねェかよ……」


 三下さんのため息。

 そしてナガセの案に、大きく声をあげたのは周りの舎弟PKたちだった。


「ナガセさん! 俺らのナガセさんは負けちゃダメだ! 諦めちゃダメだろ!」


「何やってんだよ! 諦めたらそこで終わりだってあんたが言ったんだろ!」


「血ぃ吐いても! 絶対に倒れなければ勝負はつかねぇってあんたが!」


「うるせぇ! 仕方ないだろ! これもお前らを守るためだ!」


「くそ……ちくしょうっ!」


「おいそこのローレント! 俺たちはテメェを絶対認めねえ! こんなやり方でナガセさんを貶めて、絶対後悔させてやるからな!」


「そうだそうだ!」


 ……なんだこれ。

 俺まだ一言も何も喋ってなくない?





読者のみなさん「言い訳乙」


ローレント「ぐぬぬ」






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