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「……ふむ」


 終わった。

 死屍累々の有様とともに、地下水道全ての敵をサーチアンドデストロイ。

 かなりのハイペースにより、コーサーがついてこれるか心配だったが、なんとかついてきたようだ。


「ぜぇ……ぜぇ……」


 息を荒くして座り込んでいるが、すぐに立ち上がる。


「もう、地獄だあ」


「何腑抜けたことを言っているんだ? 地獄はもっと下だ」


 今はまだ、無限に奈落をつき落ちて入る段階。

 下の下の下の下。

 そう考えると、裏路地やらマフィアエリアやらは天国に思えて来るくらいに。


「ひええ……」


「一回落ちたら最後は底にぶつかって死ぬまでってことかァ?」


「そうとも言う」


「あの、どうすれば上に戻れますか? コンシリエーレ」


 ……戦いの連鎖に一度片足突っ込んだな、二度と戻れることはないのだが……どうしよう、なんて言おうか。

 そろそろ変なこと言ってしまったら精神崩壊しそうな勢いかも知れんし、取り合えずやんわり伝えておこう。


「知らん」


「あああああああああ!!!!!」


 うわっ、いきなり叫び出してどうしたんだ!?

 コーサーは膝をついて頭をかきむしりブンブンと振りながらひとしきり叫び終わると、急に落ち着きを取り戻した。


「ふぅ……もういいです。早くマフィアのボスを倒しましょうよ……」


「おお、なんと言う落ち着き払った静の気。やればできるじゃん」


 混乱をぐっとこらえて飲み込んだのだろうか。

 さすがコーサー、俺は信じていただぞ!


「……全てを諦めた境地にいると思うんだけどなァ、俺」


 さて、そんな三下さんの声は受け流しつつ、脅して聞き出した抜け道を使っていく。

 女マフィアが使っていたと言うだけあって、きっちり綺麗にされていた。

 コーサーが言うにはペンファルシオの時はとんでもない匂いだったらしい。


「ここが、あの女のハウスねェ……」


「ハウス?」


「いや……言ってみただけだ」


 ファミシストロの館の扉を開けると、三下さんがよくわからんことを言っていた。

 まあ、軽く流しておこう。

 本人も気にするなと言う視線を送ってきていることだしな。


 館へ赴くと、思ったよりも中は警備が少なかった。

 多少の警備はあるが、地下水道での兵力規模を顧みると天と地の差だ。

 コーサーに、いかに不意をつくことの大切さを教えつつ、警備に当たっていた女マフィアを闇討ちしていく。


 そうしている間にも、トンスキオーネの側で自分の騎兵隊を指揮するアンジェリックから適時報告が来る。

 全兵力を結集させて面からドンパチ攻め込むアイデアはかなり功を奏しているな。

 ペンファルシオを吸収した兵隊にプラスしてる訳だ。

 更に言えば、ファシミストロ側はマフィアマップ特有の三箇所の兵力を配備しないと行けない。


 そら手薄になる訳だ。

 地下水道に関しては兵力なんと三人。

 一騎当千とも言えるレベルのプレイヤーが受け持ち、そして制覇する。


「まるで悪夢ですね」


 俺の説明を聞いていたコーサーがそう言った。


「自分がされる側に回って考えてみろ」


「だから言ったじゃないですか……悪夢ですねって」


 そうなった際、どうやって対処するかが問題なんだ。

 一騎当千の腕前を持った奴なんかたくさんいるだろう。

 戦場に赴かない理由を持っている奴もいるが、そんなの関係ないとばかりに率先して前に立つ奴だって大勢いる。


「逆の立場になってみろ、俺たちがいなかったら誰がでる?」


「……」


 おし黙るコーサー。


「トンスキオーネだったら、捨て兵立てて本陣攻めだろうな」


 もしくは勝てないと見込んだら、捨て駒にして逃げの一手を選ぶだろう。

 そもそも勝てない戦いはしないと思うが、相手が勝てると思ったら否応無しに攻めて来る時がある。

 どうしようもない、そうなったら。


「それか捨て駒撤退戦かァ? あのデブだったらするだろうなァ」


 あ、俺が言わないようにしていたことを三下さんが言ってしまった。

 それを聞いたコーサーは、拳を握って難しい顔をしていた。


「捨て駒なんて、できる訳ないじゃないですか……ッ」


「だが、敵は俺らみたいに攻めて来るんじゃないか? どっちにしろ誰かが犠牲になるぞ」


 追い詰める気は無いが、現実は時として否応無しに襲いかかるものなのだ。

 三下さんやトモガラが言うには、死にイベントなるものも存在するとのこと。

 ゲームは絶対に勝てない要素も繰り出して来るものだと。


 GSOでは知らんが、自分で調べるか、NPCから教えられない限り、たいていの事柄をノーヒントにしとくこの運営だったら必ずあるだろう。

 そうなったらどうする?

 圧倒的な力の前に、うだうだ駄々をこねても子供のように優しく接してはくれないぞ。


「……なら、私が強くなればいいってことですね?」


 その通りだ。

 理想を追って生きるなら、それだけの実力を手に入れればいい。


「簡単な話だろ?」


 俺はそれだけ言って再び先に進む。

 横目でコーサーの顔を少し確認すると、何やら神妙な顔つきをしていた。

 そう深く考えることでも無いとは思うがなあ。

 今現在、そうなってもいいように、割りかしきつめの対人訓練にして、それになんだかんだ付いて来るコーサーには救いがあると、俺は思うんだ。









そういえば、サイゼミアン。

せっかく建てた二人のお店。

もちろん奪われてます。

でも彼女たちはきっと根強く屋台やってるはずです。

ミツバシの魔改造でかなーり色んな要素の詰まった屋台ですから。





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