表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
368/626

-368-



「ぐえっ!?」


 その後、テーブルを破壊しながら頭部を床に叩きつける。

 思ったより力が入って加減ができなかった。

 すまんなサワキタ。

 わざとじゃない、これはあくまでお返しだ。


「な、なんだてめぇら!!!」


「おおお!? 喧嘩売ってんのか!?」


「ダッハッハ! 珍しいぜ、おら、袋にしちまえよ!」


 袋叩きするべく、ガヤガヤと群がってくるプレイヤーキラー達。

 この場合、不良ごっこしてる不良とでも言っておけばいいか。

 現実では飽き足らず、まさかゲームの世界にまでアウトローを求めるとはね。

 まああくまで個人の自由だが、力で方程式を導こうとするならば、導き出される答えは決まってる。


 力だ。


「三下さん、狭い部屋では双手棍が有用だ」


「んなもん扱えねェよ」


「なんで?」


「子どもの頃かっこつけておもちゃのヌンチャク振り回そうとしたら顎の骨折れた」


 おおう……、節武器には良くある。

 自分に反動が跳ね返ってくるから、うまく勢いを殺さないといけない。

 そこが難しいんだが、慣れれば変幻自在だけどな。


「なら、素手での制圧を教える」


「そっちがいいかも」


 ──キンッ。


「おごっ!」


 相変わらず片手に身につけた小盾で素手の攻撃を弾いていく三下さん。

 そうだな、確かモンスターもそれで疲れさせて仕留めるって作業を延々と繰り返してレベル80台までのし上がったとかなんとか言ってたな。


 うーん、正直言ってあんまり言うことないかもしれん。

 足運びでいかに立ち回るかが、三下さんには重要かも、だけど。


「うざってェな……フリップディレクション」


「うごっ!」


「ぐはっ!? て、てめぇ標的は向こうだろ!」


「し、しらねぇよ!」


 弾く方向を変えて相手の攻撃を自分の攻撃のように使えるんだから、逆に自分の道をひたすら極めるべきでは?

 なんて思ってしまう。


「うーん免許皆伝っ」


「……まだ何も教えてもらってねェぞー?」


 スキルで全て片がつくなら俺には何も言うことはないと察したのだ。

 天性の才能を持つものは、誰から導かれじとも自分の答えを弾き出すと言うしな。

 どう磨き上がるのか、期待したいところ。

 さて、俺も俺で打ったり投げたりしながらどんどん制圧していく。


「喧嘩は陣取り合戦だ」


 一対一の殴り合いでも相手との陣取り合戦なんだが、そこに行き着くまでには感覚をある程度研ぎ澄ませる必要がある。

 それがわからない連中は、闇雲に突っ込んでくるだけ。


 半身になり、目の前にいる相手の腕を引き込み顔面に肘をぶつける。


「うごっ!」


 まず一人、鼻がへし折れたな。

 次に後ろから殴りかかってくるやつに退歩で体を寄せ、肘で鳩尾一撃くわえながら体落とし。


「ごはっ!」


 首を踏み折って、体を転身させると。

 次は左右からくるやつに腕を限界まで伸ばし眼球を叩く。


「ぎゃあっ!」


「め、目が!!」


 モナカではないが、大人数の時は人の体も武器になる。

 体制を崩した相手の襟を掴み左足で足払い。

 相手から見て、右に大きくバランスを崩したことになる。

 俺から見れば左に。


 重心、力の向きが俺から見て左に流れるので逆らわずにそこらにいる不良どもに投げつけてやった。

 おーおーガラスの割れる音がする。


「な、何やってんだ!! たった二人だぞ!!」


 一人のそんな声によってなんとかにじり寄るように俺たちを取り囲む。

 ……なるほど、あいつがこの場を取りまとめてるやつか。


 一声で雑多な群れにまとまりが生まれた。

 まだまだ烏合だが、一応しっかり取り囲みながら闇雲ではなくにじり寄るように距離を詰めてくる。


「チッ……数が有利か? やっぱ二人じゃ無理だったか?」


 あたりを見回しながら舌打ちする三下さん。

 どうやら、お得意のカウンターも同時に来られちゃ難しいってことみたいだ。


「こう言う場合は頭をやる──」


 そう言いながら俺は跳躍した。

 空蹴を使い天上へ。


「へっ──?」


 遠くから酒瓶もってまとめようとしていたやつに、天井を蹴って一気に肉薄する。

 天翔飛あまかけと猿臂打えんぴうち。


 悪い不良には脳天一撃でお仕置きだな。

 ゲンコツすら生ぬるいぞ。

 ちなみにこの技だが、ルビーとローヴォはできるようになっている。

 ノーチェにはまだ厳しいみたいだが、馬だから仕方ない。


 ぐしゃっと言う、嫌な音が室内に響く。

 そして体に頭が埋まった死体がばたりと倒れる時、俺は振り返りながら不良を見る。


「よし、次はどいつだ?」


 雑魚の集まりは面倒だから、全力で速攻片付けてやる。

 ついでに穴が空いた天井と壁と壊れたグラスとテーブルの金を払ってもらおう。

 そして色々話は聞いている、ツケで飲み食いした分もそっくりそのままな。

 俺は悪運の瞳を起動させた。


「み、緑に光る目!」


「ま、魔王だ!!」


「おい、それって……ローレントじゃねェか!!」


「なんでこんなとこに!? 確か裏協定でまだ狩るなって言われてただろ!」


「しらねぇよ! ここはプレイヤーキラーの中でも治外法権をナガセさんが作ってんだ!」


「くそっ、向こうは向こうで第一拠点ともめてっからこっちに悪魔が来るはずないってお前言ってたじゃねぇか! だから好き勝手にしていいって!」


「はあ!? んなこと言ってねぇけど!」


 ……俺の店で好き勝手したんだけどな、こいつら。

 だから何処ともめてようがもめてなかろうが、俺とは関係ないってことにはならない。

 と、言うより直接的に一番関係あるよな。


「知らなかったのか……ってか鑑定すりゃ一発だろォ、俺ら偽装してねェし?」


 騒つくプレイヤーキラーたちに三下さんがため息をついて額を抑えていた。


「早くかかって来ないと、俺がいくぞ」


 悪鬼ノ刀を抜いた。

 ってか、こいつら今まで素手で殴りかかってきていたことに驚きだ。


「くっ、どうする? ナガセさんからは非常時はあいつに従えって!」


「仕方ねぇだろ、頭が熱くなって指示なんて俺らに出せるやつはいねぇよ!」


 ……バカの集まりだった。

 こいつらの話を聞くと、どうやら先に声を上げてまとめようとしたやつにとりあえず従っとけ的なルールがあったらしい。


「ナガセさんに連絡はっ!?」


「くそっ、俺が一旦ログアウトして電話して来る!」


「馬鹿野郎メッセージでいいだろうが!」


「そうだった!」


 もういい、死ね。

 そう言って斬りかかるところで、


「ちょ、待てよ」


 背は低いが顔は良く。

 パーマがかったセミロングの茶髪をお洒落に流した男が店の中に入ってきた。

 こいつがナガセか?


「キマチさぁん……」


 ナガセじゃなかった。

 キマチ?

 誰だよ!!!!!!!









一つ前の話では、適当にあとがき書いただけでしたのに、感想欄が大喜利になって笑いました。

元気が出ました、まだまだ書き続けられます。

本当に、ありがとうございます。

この物語は応援してくださるユーモラスなみなさんのおかげで続けることができています。



はい、全員にローレントとのエキシビションマッチを進呈!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ