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あれから二日ほどたった。
第一生産組の倉庫に入っていたものは全て取られたと言ってもいい。
誰かが言った──、
『クソゲーだな』
『もうこんなゲームやめてやる』
──さもありなん。
だが、奪われた物は取り返せばいい。
もっとも、別に取り返す必要がないとも言える。
第一生産組、今回の騒動の渦中にいる連中はしぶといぞ。
なんでも一から作ってしまえるくらいのやつだからな。
それに俺も、大事なものは全てテンバータウンの倉庫。
そしてテージシティに新しく間借りしているニシトモの商会が使う倉庫を借り受けて移動させてある。
時間はたっぷりあったしな、制限付きのテレポートも覚えてるから簡単なことだ。
『──仕返し、したくないか?』
『できたらとっくにやってるよ』
『そうだ、せっかく生産拠点ができて軌道に乗って、これからが楽しくなってくるってとこだったのに』
『俺なんかすでに一つのパーティが専属で装備やってくれって言われてんだ』
『いやいや、それをいうなら俺たち狩りメインのプレイヤーだって困惑してんだぜ?』
『有名プレイヤー勢がみーんな忽然の居なくなって』
『あ、それならテージシティにいるって噂じゃなかったっけ?』
『ノークタウンかもな』
『いや、それはない』
『……だろうな、だがノークもプレイヤーキラーがウジョウジョいるって話だぞ』
『まじかよ……プレイヤーキラーゲームかよ』
『くそっ、でもレッドネームだったらペナルティ発生しないし、痛覚設定もいじれないんだろ?』
『ああ、日刊GSOで久々に通達があったよな』
『プレイヤーキラーは全員痛覚設定矯正マックスのイベント期間だって』
『知らなかった、何が引き金だ?』
『第一生産拠点のクーデターが引き金のイベントだってよ』
『よっしゃ、見つけたら頭ぶち抜いてやる、この三十連式クロスボウでな! もちろんぶち抜く時俺らの痛覚設定は全部オフっとくぜ』
『痛いのは嫌だし、人をやる感触とかごめんだからな! 笑えるぜ、でもなんだ?』
『仕返しイベントに仲間募集してんのか?』
『せやっ、じゃなかった。そうだ──禍根を立つには根元から、一度第一拠点は更地にしもう一度善良なプレイヤーでやり直そうという試みが上がっている。詳しくはこの掲示板を読め、もちろんチラシも作ってあるしメールマガジンも配信中だ。更に言えば今なら素敵な特典がつく』
『……なんか怪しいキャンペーンみたいだが、まじで大丈夫なのか?』
『テンバータウンの町長が特別に外周区画の一部をプレイヤーに解放し、なんとそこに、レイド強襲イベントで作った掘りを改造したプールが作られて、今ならそこが見える特等席とも言える建物が空いていて安く借りれるチャンス』
『よし乗った』
『乗った』
『乗る』
『早く案内しろ!!! どうなっても知らんぞ!!!』
『──ついてこい同志よ! 今なら変装したプレイヤーキラーを見つける講習もしてるぞ!』
──────、
────、
──。
「で、そっちはどうなんだ?」
「ああ、変装してプレイヤーを煽るのはわいの得意分野やっちゅうことや」
「でかした」
ハットにちょび髭をつけて貴族っぽいNPCに変装したカイトーが俺に色々と報告をしてくれる。
報告内容は、レイラがプレイヤーキラーに居場所を奪われたプレイヤーのためにテンバータウンの外周区画に新たにプレイヤーズ拠点を借り受けて解放したことと、そこに人を集める計画の報告。
水着ってところがそこそこの効果を生んでいるらしい。
ふふ、ひらめいたのだ。
ツクヨイの水着姿をなんとなく思い出して、やっぱり男にはうら若き乙女の柔肌だってことだ。
監視員には十六夜を任命。
これまた彼女の容姿とスタイルにはいろんな人が流入するだろう。
ゲス的な考えかもしれないが、毒を以て毒を制す。
いや少し意味が違うな、毒を食らわば皿まで。
ゲス的な案件には同じく毒素たっぷりの女をあてがえたってところか。
ちなみにセレクの水着は適当な鉄装備よりも強い。
ケンドリックがいつだか言っていた。
鉄装備に素手で勝てるわけない。
鉄に水着が勝てるなんて頭おかしいと、今ならその気持ちがよく分かる。
まあどこぞのゲームには冷凍マグロを強武器にしたりするのがあるんだってな。
……ぷくくく、冷凍マグロだって。
漁師スキル持ってる俺にはピッタリかもな。
「んで、テメェはどこに向かってんだ?」
右となりをカイトーが歩くとしたら、次は左となり。
こっちにはダラダラとした動きで俺に歩幅を合わせる三下さんがいる。
ガラの悪い口調ではあるが、意外に情に厚い。
ヤンキー理論でも礼儀正しい奴こそ実は冷酷だとかなんだとか。
「テージシティといえば」
「……ちょっとォ、俺はなぞなぞ聞きに来たんじゃねェけどォ?」
「マフィアでんがな! ここにいる魔王のあんさんが三分の一ほど仕切っちゃいるが、まだまだ二大勢力がはびこる夜のダンジョン。それがテージシティの裏の顔や」
「へぇ……」
三下さんがニヤリと笑う。
「まさに、おあつらえ向きってやつじゃねェの」
そうだ、おあつらえ向きだ。
一時期、プレイヤーキラーは裏ギルドと接触する前までは、ノークタウンでケンドリックの元にかくまわれていた。
奴が戦線にプレイヤーキラーたちを供給できる理由が、そこの縁にある。
街に住めないプレイヤーキラーに、拠点の代わりになるものを提供していたんだからな。
ここでいうプレイヤーキラーはプレイヤー及びNPCすらも手にかけた狂った連中のこと。
「裏ギルドからログインポイントの提供があっても所詮あぶれ者集団だってことや」
「そうだな、なぜか人との接触を嫌う」
疎外感はあるだろうし、それがなく、人に紛れるのはサイコパス。
社会の縮図、いつだって社会はあぶれ者を生み出して来た。
「なんだァ? 裏ギルドすらも邪魔だって思ってる奴らもPKの中にはいんのかァ?」
「そういうことだ」
「せや」
テージシティっていううってつけの場所ができてるんだ。
そこに紛れてアウトロー生活を送っているプレイヤーは、案外たくさんいたらしい。
と、いうよりも、俺がマフィアをちょくちょく潰して。
空いた隙間に入り込んだという。
「なるほどなァ」
察しのいい三下さんは気づいたようだ。
そう、プレイヤーキラーには何をぶつける?
同じくプレイヤーキラーだってこと。
「問題は、奴らが素直に協力するとは思えんっちゅうことやで」
「問題ない」
アウトローたちを従えるには、彼らが信じるもので真正面から叩き潰す。
それが一番だ。
先んじて独裁女編ではなく、チンピラ接収編。
プレイヤーキラーを倒すには、プレイヤーキラーを味方につけろって具合で。
(実際は、不良をまとめてコマにする)
ほんっと、クソゲーだな。
ドラク○11とホライゾンゼ○ドーン、まだクリアしてない。
せっかく買ったのに、ステラ○スが面白いのが悪い。
すでに銀河を二つも制覇しました。
SF群像劇でもここから参考になるかなと思いましたが、ろくな読み物をかけない私には無理そうです。笑