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 軽快な関西弁みたいな言葉遣いに、みんなの視線がドアの方へと向く。


 カイトー。

 NPCにも完全に偽装できる、とんでもないスキルを持ったプレイヤーだ。


 盗賊ギルドに所属して、善意的な窃盗行為を働く。

 ある意味で悪党の美学・哲学に近い思考を持ったプレイヤー。


「どう言うことだ」


 立ち上がって刀を抜く。


「おっかねェな、まずはその刀をしまえよローレント」


「…………そうだな、まずは話を聞こう」


 納刀する前に、跳躍してカイトーの前に出る。

 そして投げ出されて床に転がるカイトーの眼前に刀を突き刺した。


「話次第で、俺はお前の首を斬り落とす」


 そう言うと、カイトーの口から短く「ひえっ」と言葉が漏れていた。

 いきなりの様子に、空気がガラリと変わり、静かになるが知ったこっちゃない。


「ど、どどうしたんです? ロロロ、ローレントさん?」


「ハァ……相当頭にきてたってことかァ?」


 三下さんが顔を手で覆ってため息をついていた。

 カイトーは?


「…………ほ、ほんっとに申し訳ないことしたって思うてますぅぅううう!!! すいませんでしたぁぁああ!!!」


 ひっくり返った状態からゴキブリみたいに素早く身を転身させると、これまたとんでもなく素早い動きで綺麗な土下座をしていた。


「ん?」


 あまりの変わり身に少し拍子が抜けた。

 そんなところで三下さんが説明をする。


「店の前でなんか立ち尽くしてたから無理やり連れてきてやった」


 ああ、そう言うこと。

 だが……。


「罪悪感を感じても、罪は許されると思うか?」


「ひ、ひいいいい!!!!」


 酌量?

 いやいや、一律死刑に賛成。


「い、いや……ローレント、もういいのよ……うん……直接的に手を下したわけじゃないしね……うん……」


 カイトーのあまりの怯えっぷりにレイラが大きくため息をつきながらそう言っていた。

 まあ、本人が許すなら別にいいが、俺の今のこの気持ちは一体どこにぶつけたらいい?


「ま、まさかこんなことになるなんて、わいも思ってなかったんや……」


 そしてポツリポツリとカイトーの口から釈明がこぼれ出した。


「わいかて……わいかて……殺しに加担するのだけはポリシーが許さんかったんや……」


 プルプルと震えながら涙も流している。

 これが演技なら、俺はこいつをフィールドに連れて行ってレッドネームになってもいいから首を斬り落とすところだったのだが、どうやらマジっぽいな。


「……あんさんにはわいの美学は言ったやろ?」


「ああ、まあね」


 スマートに盗むのが彼のポリシーだしな。

 どうやら、レイラを騙すのも、もともと彼女の居た館にある上級ポーションの箱を取ってこいと言う指示を受けていた上での行動だったと言うのだ。


 町人NPCを装った偽のクエストを告げ、指定の場所へと連れ出す。

 その間に、カイトーは第一拠点村へと向かい、レイラのポーション工房に侵入し保管されて居た大量の上級ポーションを盗み出した。


 さらにその間に偽の依頼をでっち上げさせた盗賊ギルドは、なんと裏ギルドとつながっていて管理者クラスのスキルを持つものにレイラを殺させた。


「ってことは……だ」


 トンスキオーネがカルビを頬張りながら言う。


「中立を貫いてた盗賊ギルドは、そっちについたってことか」


 眉間にシワが寄っているところを見ると、なかなか難しい問題なんだろう。

 勢力単位の話になると数百人レベルの戦力が移行するからな。

 だが、こいつの眉間のシワもカルビを頬張れば伸びる。


「わい……盗賊ギルドもうやめたんや」


 涙を溜めた目を腕で拭うとカイトーは言葉を続けた。


「いいや、もともと足を洗ってあんさんのところに行くつもりやったんや。でも盗賊ギルドは情報網だったり色々なしがらみがあってん、一度入るとなかなか抜け出せんっちゅー業界なんや」


 うんうん、それはよくわかる。

 中国の裏武侠とか、抜けるイコール死としか考えてない連中が多くって本当に。

 秘宝と言われる物を盗んで無くした時は、追ってきた裏武侠の刺客になんて説明したらいいか迷ったんだよね。


 あ、これ初めてログインする数日前の話だ。

 結局拳で語り合うのさ。男はね。

 まあリアルの話はいいか。


「上級ポーションは? カイトー、あなたの罪はそれで許したげる……工房めちゃくちゃにした奴らは二度と許さないけどね」


 やっぱりレイラさん、怒ってらっしゃったか。


「それなら大丈夫や、わいが隠れ家に巧妙に隠してあるさかい、大船に乗ったつもりで安心してくれてええ」


 カイトーは上級ポーションを盗賊ギルドに引き渡す前に、自分が起こした事の重大さに気づき、隠して逃げてきたという所だ。

 盗賊ギルドプレイヤーの話を隠れてこっそり聞いたところによると、殺してでもいいから上級ポーションのありかを聞き出して奪い取れとか、そんな物騒な話をしていたらしい。


「戦いの準備でもするつもりがあったのであるか?」


「……裏に横流しや。わいが思うよりもずっと前から、盗賊ギルドと裏ギルドはつながっていたみたいなんや」


 ここで一つ、そもそも論だが。


「裏ギルドってどこだ」


 居場所がわかれば乗り込んで潰してやる。

 ミヤモトの話にも上がっていたが、俺の旧知とも呼べる連中がのさばってるんだろう。

 一つ遊びに乗り込んでやるのも面白いかもしれん。


「……それが、わからんのや。わいはあくまでダンジョン専門の探索家っちゅう立ち位置やさかい」


「盗人が何言ってんのよ」


 と、レイラ。


「姐さんもう堪忍してぇ! それにわいにとって全ての家、もしくはターゲットがある意味ダンジョンみたいなもんなんや!」


 罪悪感に苛まれるカイトーはひたすら土下座するしかなかった。

 軽快な関西弁だからだろうか、重たい空気は一変して、再びウィルソードの体育会系ノリがスタート。

 例によって彼は、


「ゴボボボボボボ──」


 第二のミツバシのようになって、潰されていた。

 ま、バッドステータスは起こるが、現実では問題ない。

 これがVRゲーのいいところよね。

 時代も発展したもんだ。






感想で色々と言われているのでちゃっちゃか進めますね






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