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「交渉は決裂だ」


「誰がお釈迦にしやがったと思ってんだ」


「愉快そうにジャンケンに勤しんでたデブに言われたくない」


「殺す」


 デリンジャーとトンスキオーネの間ですぐさま戦いが始まろうとしていた。


「待て!」


 彼らの間に無理やり割って入り込む。


「邪魔すんじゃねぇコンシリ……なっ!?」


 トンスキオーネが驚くのも無理はない。

 デリンジャーは一瞬で消え、トンスキオーネの後ろを取っていた。

 そして首元の急所に向けて突き立てようとしている。


「近接戦が苦手なタイプだろうに、いきなり銃口構えて強がってるんじゃないぞトンスキオーネ」


「ぐっ」


 そう言い含めると、トンスキオーネは歯噛みして黙り込んだ。

 そんなに恨みがこもった視線を向けるんじゃない。

 俺が間に手甲を差し込んで腕を止めなかったら死んでたろうに。


「やはり貴様がネックだな」


「さも俺のことをよく知ってる風だな」


 軽業師のようにバク宙しながら飛び退くデリンジャーはナイフを構えながら言った。


「ああ、よく知ってるとも」


 だったら、


「喧嘩を売る相手を間違えたとは思わないのか?」


 ナイフが相手だ。

 得物は何を使う?


 相手が手練れだとして、怖がってリーチを長めに取るのは思う壺。

 ナイフ使いは自分のリーチの短さを心得て、相手の懐に切り込んでくる術を体得している。

 同じように取り回しがし易いといえばナイフがあるが、生憎俺が持ってる中で取り回し易いもの、それは双手棍くらいしかないだろう。


「ほう、だが振り回しがメインの武器で挑むとは、些か自分の実力に過信してるみたいだな」


「過信? 一切してないけど」


 とはいえ、デリンジャーの言い分は納得である。

 なんとかできないことはないが、不測の事態を考えれば同じ武器で相手したい。

 そんなところだ。


 双手棍もいいが、何か強力な武器は……ありました。

 思い出したぞ。


 ガストンからいつだかもらっていた。

 魚さばく用の黒包丁。

 文字通り、なんの飾り気もない、黒鉄製の包丁だ。


「これだな、これと双手棍でいこう」


 右手に包丁。

 左手に双手棍。


 なんとも滑稽であるが、なかなかトリッキーな攻めが期待できそうな組み合わせだ。


「……馬鹿にしてるのか?」


「いや全然」


 双手棍系の節武器は無限大だ。

 一時期三節棍にもはまっていた時期があるが、まああれは六尺棒が折れたからだな。


 さて、とりあえずデリンジャー相手に聞きたいことはたくさんあるが、それは叩きのめしてからにしよう。

 初手は投擲。

 ガストン謹製、黒鉄製の包丁は軽く投げただけでも石に刺さるくらいの耐久と切れ味持ってるぞ。

 なんたって、飾り気を排除しまくったおかげで貫通なんていう能力をつけることに精通してるからな。


「はっ、何かと思えば馬鹿の一つ覚えみたいに投擲──ッ!?」


「俺のことをよく知るなら初手で投擲はほぼ9割の確率であり得ることだぞ?」


 そう聞きながら手元にアポートで戻した包丁を振るう。

 ギンッと言いながらデリンジャーのナイフとカチあった。


「……うわぁ、ナイフの方が真っ二つですね」


「ど、どうなってんだありゃ……」


 ツクヨイとガツントが目を丸くしているが、ただの鉄製ナイフなら黒鉄が勝つ。

 さらにガストンの鍛冶技術と俺の斬る技術が合体すればたやすいことだ。


「コーサーにもいつか仕込むからな斬鉄」


「な、なんで私に話を降るんですかコンシリエーレ! いやだ、なんかそんな怖い特訓したくない!」


 ニコリと笑って返しておいた。


「いやだー! すっごい怖い顔でニヤついてるいやだー! コンシリエーレ怖いぃぃい!」


 ……普通に笑ったつもりなんだけど。

 しょっく。

 コーサー覚えてろ。


「コーサー落ち着きなさいまし」


「姐御助けて!」


「妾にあなたとローレント様の優先順位をつけろといっているのかしら? 無理な注文ですこと」


「うごああああああああ!!」


 頭を抱えて甲板にガンガンぶつけるコーサー。

 彼に一体何があったというのだろうか。

 さて、そんなことを話している場合ではない。


「くっ、まだだ」


 デリンジャーが消えた。

 そして後ろに気配を感じる。


 左から首元に殺気を感じて手甲を構えるとギャリっとした硬いものが削れる音がした。

 甲冑魚であるピラルークの鱗でできた手甲は斬れない。

 それはトンスキオーネの時に実行済みだ。


「それはスキルか?」


「チッ、答えてやる義理はない」


 連続使用はできないが、クールタイムが経過したと同時に何度も使用されるのは面倒だな。

 俺は対処できるが、他の人では些か無理がある。


「全て吐け、そうすれば痛い思いをしないぞ」


「……断る」


 そうか、


「なら死ね」


 そう言いながら双手棍を繰ってナイフを持つ左手を打ち付けた。

 苦悶の表情になるデリンジャー。

 骨が折れただろうな、ナイフはしばらく持てないだろう。


「ぐっ」


 膝を正面からへし折る用に蹴りを入れながら彼の左頸動脈に狙いを定めて包丁を突き込む──


「──カイトーを知ってるか? てめぇのお気に入りだろ?」


「む?」


 くそったれだな、もうすぐ死ぬってところでどうしてその名前を口にする必要がある。

 だがまあ、行方がしばらくわからなかったカイトーの情報が聞けるとあれば、必然的に俺の攻撃は止まる。

 ニヤリと笑うデリンジャーに一杯食わされた気分だ。


「それがどうした」


「あいつが盗賊ギルドから移籍したいって言ってたからな……一つ、抜けるために大仕事をして貰っているんだ」


「大仕事?」


 なぜ奴のことを今この場で言う必要があるのだろうか。

 ただの時間稼ぎか?


「聞きたい気持ちもあるがただの時間稼ぎでくだらないことを言うくらいなら死ね」


「──時間稼ぎは正解だが、果たして俺の相手をしていていいのか?」


「はあ?」


 そこで急に後ろから声が掛かる。


「ロ、ローレントさん!」


 ツクヨイの声だった。

 どことなく必死そうな声で彼女は叫ぶ。


「レイラさんがPKにあいましたとメッセが届きました! そ、それで、なぜか第一拠点の管理権限が、何者かに奪われたそうです!!」


「は?」


 思わず口を開けてツクヨイの方を見てしまった。


「──ハハハハ!! ヒントは十分やったかわからんが、謎を謎のままにして慌てふためていていろローレント!!」


「む! 待て!」


 デリンジャーは左手を抑えながら水中に飛び込んだ。


 するとタイミングを合わせるように魔道船外機が積まれた小型ボートが姿を現してさくらとして入り込んでいて、レイドボスの中を生き残った盗賊ギルドのプレイヤーを全て載せて走り去って行った。


「くそっ、追いかける。ルビー!」


 すぐに追うためにルビーを呼ぶ。

 無理を言うことになるが載せて貰って空から追う。

 だがすぐに待ったがかかる。


「お、おい! 船室にいた村議会の連中が全員殺されて死に戻りしてる!」


 一体どう言うことだ。








え!?





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