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 町に戻ったら、屋台の目の前が騒がしかった。

 近寄ってみると、作業着を身につけた奴らが六人程。


「我らはチーム土建屋! 生産職が重要なゲームだと聞いて参戦した!」


「参戦って……、戦なんてしてないわよ?」


「まあ何でもいいってことよ! 俺らは土建屋、道作りから家作り、何でもこなす職人集団! 好きな熟女は小○幸子!」


「「「「「小林○子!!」」」」」


「好きな幼女はま○んちゃん!!」


「「「「「福○遥!!」」」」」


「理想の女上司は篠原○子!!!」


「「「「「イエスアンフ○ア!!」」」」」


 こ、コイツらオッサンだな!

 その風貌からして中年だろう。

 だが、土建屋らしく、皆確りとした体つきをしている。


 遠目から話を聞いている限り。

 この土建屋と名乗るプレイヤー達は第一拠点の建築を手伝わせてほしい。

 そう言っている様だった。

 渡りに船だと思うんだが……。


「いや、あのね」


「だがファンタジー風も有りいいい!!!」


「「「「「万歳VR!!!」」」」」


 女性陣が引いていた。

 そりゃもう、半端無いくらいの勢いで。

 レイラが詳しい話を聞こうとしても。

 すぐに若い女の子万歳って盛り上がってる。


「このおっさん共おおおお!!!」


 レイラがたまらず声を上げた所で。

 ヒーローが公園に登場する。

 颯爽登場、ガストンだ。


「落ち着くである」


 そうだ落ち着け!

 心の中で思っておくことにする。


「お前は誰だ!」


「ガストンである」


「その恵まれた体格、土建屋か?」


「鍛冶屋である」


「なるほど、納得だ! おいお前ら!どうやら商売敵では無いらしいぞ!」


「「「「「おお!!」」」」」


 いちいち五月蝿いので、周りの生産チームも耳を塞いでいる様だった。

 お、トモガラも珍しく居る。

 更に大量に盛られた肉を食っているみたいだが、爆笑して喉に詰まらせていた。

 HPがみるみる内に減って行く。

 急所攻撃の範囲なのかな。

 って、そんな場合じゃないな。


「しっかりしろ」


「わりぃ、あんまりにも状況が面白くって」


「笑い事じゃないわよ、ちょっとローレント、トモガラ、ガストン、何とかしてよ」


「む、他にも色々居るな! 俺らはチーム土建屋! そして俺は頭領のダイホウ」


「樵夫のトモガラ」


「漁師やってます、ローレントです」


 レイラの悲鳴に元気がなくなって来た。

 これは本当にやられる感じがしたので流石に助けに入る。


「なんですか? この騒ぎ」


「協力してくれるのはわかったであるが、そうテンションが高いと話が進まないのである」


 尋ねると、頭領のダイホウは頭を掻きながら豪快に笑った。


「いやすまんすまん、何ぶん俺達は汗臭い職業だ、女性に人気がない。ゲームと言えど、来てみたら美少女が一杯居てついつい舞い上がってしまった。……なぁ?」


「「「「「おすっ!!」」」」」


「嫁さんはいるが、頭はあがらねぇ! ここいらで夢見てもいいだろお!」


「「「「「ドリーム!」」」」」


 落ち着くまでに数十分くらいかかった。

 ガストンを通訳代わりに、話し合いが行われる。

 通訳というか、盾だけどな。

 そんな様子を俺は端から観察していた。


「と、言う訳で、俺達は何でも建てるぜ。だから交換条件といってはなんだが、その為の工具を融通してもらいたい」


「構わんのであるが、レイラはどうするであるか?」


「全然構わないわよ、渡りに船だし。ちなみに資材はある程度は運んでは居るけれど、まだまだ足りない状況よ、一応こっちには林業やってる生産職が一人居るから、そっちに交渉してみて?」


 トモガラを見るレイラ。


「いや、個別めんどくさいから、俺がお前らに降ろすのを使ってやってくれ」


 それは同意。

 一人の為に木を伐るよりも、切っておいた木を捌いてくれる卸業者を噛ませた方が楽だ。

 使う計画とか把握する必要がないからな。


「……あたしがやるの?」


「もちろん」


 そこを譲るつもりは無いようだ。

 頭領はどっちでも資材が手に入れば良いという感じ。


「わかったわよ、商人にはニシトモが居るから。上手い具合に流通を計って行きましょ?」


 重要だと思われるのは、何をどこにどれだけ作るのか。

 それの計画はレイラになる。

 ちなみにレイラの話では後々NPCも呼べるようになって。

 グロウを払うことによって村の管理をして貰えるようになるらしい。


 プレイヤーだけで全て管理することは大変だ。

 是非とも誘致まで、行けたら良いですね!


「船着き場と簡単な筏が出来るまで、私は森へ……」


「逃がさないわよ」


 肩をガッチリ掴まれていました。

 逃がすつもりは無いと。


「とりあえず薬草の依頼は受けてもらえたみたいね?」


「はい」


 背中に背負った三つの麻袋と。

 ローヴォに背負わせた一つを持って来させる。

 合計四つ、満タンです。


「ツクヨイさんが手伝ってくれたの、助かりました」


「そうなの! ツクヨイ、ありがとね!」


「えへへ、でもレベリングもしてもらえたし、欲しいドロップや色々貰えたのでこっちも助かりました!」


「あら、ローレントがそんなことを? 珍しい」


 何が、珍しいだ。

 MMOゲームは人との繋がりが大事だ。


「なら中級ポーションはい。これは二袋分の予定だったから、追加でもっと作っておくわね」


「あ、どうも」


 あれ?

 ……いつも貰ってた初級回復ポーションと同じ量だった。

 多くないですか?


「言ってた量の二倍持って来てくれたから、あと一回受け渡しがあるわよ?」


「……あの」


「お願いローレント。資材運ぶのだけでも手伝ってくれないかしら。一塊にした物だったらあなたのスキルである程度持って行けないかしら? こう、シュンシュン転位させて」


 レイラが頭を下げる。

 それほど難航してるのだろうか?


「それは我が輩からもお願いするのである。理由は最近新参狙いのプレイヤーキラーが流行りだしてるのである。それに乗じて東の川に向かう道も、危険になってしまっていて、実際にミツバシやイシマル達が資材を奪われているのである」


 そう言う訳か。

 中々ログイン時間を合わせられない状況で、各自各々が資材を第一拠点に向かって運んでいる状況。

 そこを狙う人が多いらしかった。


「最悪護衛係でも良いの」


「いえ、貸し倉庫ってこの辺ありますか?」


 レイラに聞いてみる。

 資材を運ぶのなら有効に使えそうなスキルがある。

 ストレージからのアポート。

 ストレージを資材置き場にセットすれば使えないことも無いはず。


「いえ、アポートがマックスボーナスを迎えて、こういうスキルが使えるようになったんですよ」


 シュンと手元に空き瓶を引き寄せる。

 見ていた周りがざわめいた。

 仕事を任されたなら一気にこなすのが一番効率が良い。


「倉庫に設定した物なら、距離場所制限問わず引き寄せれるようになりました」


「……なんでもありね」


「そうでもありません」


 溜息をつくレイラは放っておいて。

 さっそく資材を倉庫に入れて行く。

 ちなみにイシマルがいないので石材は後回しだ。

 倉庫はトモガラの林業屋の所をお借りした。

 セットできる物は全てセットしておけ。


「大丈夫なの?」


「はい」


 ストレージには貸し倉庫と表示されて。

 中におかれている木材などがスタック表示されている。

 見た所、重量関係無く行けるみたい。


「支払いはあたしが持つわ」


「いちおう色を付けとくのである」


 ガストンが作って貯めてきたシャベルやつるはし。

 のこぎり等の使えそうな工具も運び込む。


「イシマルさん連絡取れました、石材は親方に聞いてくれれば持って行っていいらしいです!」


「あ、そうなの? よし、ならそっちもとりあえずあたし持ちでいいから買って荷車に乗せちゃいましょう」


 レイラの指示でみんな動いて行く。

 俺はアポートで倉庫の中に並べて行く係。

 転位先での向きも指定できるから楽ちんだ。

 その分MPは消費し続けるが。


 ローヴォも物を咥えて運んでいる。

 知らない人からも受け入れられて何よりだ。


 女性陣は?

 売買の連絡などはセレク、ツクヨイがレイラの手伝いをしていた。

 サイゼとミアンはお弁当を作って来るんだとか。

 そんなこんなで、いつもの生産チームにプラスして土建屋を交えたメンツは、集団で東の川にある第一拠点を目指す。


「石材は荷車四つに工具は二つ、貸し倉庫満載の木材もあるし、今回はかなり運べたわね! 助かったわローレント」


「いえいえ」


 一気にことが進んでご機嫌なレイラ。

 最近色々と溜まってそうだったから。

 お役に立てて何よりだ。


「建築物は建って来てるんですか?」


「ああ、最近森ばっかりだったわねあなた。まぁ少しずつだけど、今の所そこまで進んじゃいないわ。私達、家を建てた経験なんて無いもの。なんとか見よう見まねで作ってる状態なのよね」


「レイラ姉様、スキルでぐわーって家が立つとかないんですか!?」


「ツクヨイ、錬金術はボタンぽちぽちかしら?」


「いえ、どっちかっていうと数学数式みたいな感じです?」


「そういうことよ」


 ツクヨイは余りわかってない様だったが。

 生産活動に力を入れてるこのゲーム。

 木を切り出すのも、魚を釣るのも、鉄を打つのも、縫い物をするのも。

 ある程度スキルの補正はあるものの、それに便りっきりというわけではない。


 作るには作る人手が居るのだった。

 ホームモニュメントにシティとかキングダムとかメトロポリスとかあったけど。

 まず、無理だよな。

 行けてもタウンくらいだろ。


「リバーフロッグ倒したぞ!」


「「「「「親方ああああ!!」」」」」


「こらー! はよ運べーーーー!!」


 道すがら狩ったリバーフロッグは俺が血抜きしてバケツに入れて荷車に乗せといた。

 向こうに着いたら解体すればいいし。


「グロ! さっさと解体スキルつかいなさいよ!」


 勿体無いから断固拒否。

 リバーフロッグの皮は防水で良く伸びる。

 水辺に拠点を作るなら必要不可欠な素材だ。


 と、いうことで。

 第一拠点に辿り着いた。

 モニュメントがおかれた場所には沢山テントが並んでいる。


「ほんっと、邪魔よねこのプレイヤー達。さ、ここが倉庫よ」


 案内されたのは掘建て小屋だった。

 看板が立ててある。



【貸し倉庫】所有者:レイラ

[許可を受けたプレイヤーのみ出し入れできます]



 俺は、許可貰えてるのだろうか。

 そう思うとレイラが補足してくれた。


「あんたはとっくにホワイトリストに入れてあるわよ」


「どうも」


 問題なく倉庫内に入れたのでどんどん入れて行け。

 セットから呼び出して並べて行く。


「便利であるな」


「ええ、チートよチート」


 物騒な言われがあったもんだ。

 聞き流しながらガンガン並べて行く。

 ヤバいな、MPかなり消費してる。

 セットアイテムの呼び出しは、通常の【アポート】よりも多くMPを消費するのがわかった。

 書いとけよ説明に。


 並び終えて振り向くと、何やらレイラ達が他のプレイヤーに絡まれていた。

 見覚えのない顔ぶれだったので何だろう?


「まだ第一拠点建設の目処が余り立ってない状況で、資材の譲渡は少し躊躇われるわ」


「そこを何とか、私達がエリアクエストをクリアすれば、貴方達生産チームにも益がある筈です」


「だから、先に拠点の建築からって言ってるのよ。筏を作るなら町の林業組合の人にでも丸太を売ってもらったら良いと思うんだけれど?」


「私達パーティはまだ四人なもので、流石にここまで大きな丸太を運んできて管理をするのは厳しい状況なのです」


「うーん、でも流石に譲渡は無理な話よ……。誰が損するかって言ったら、今日運んでくれた人達もそうだし何より資材の供給に携わってる方達だもの」


 革鎧を身につけた剣士プレイヤーがレイラ達に交渉していた。

 聞こえて来た内容から察するに。

 発生したエリアクエストを解放するにあたっての物資の支援を申し込んでいるようだった。

 生産職を味方に付けるとドロップアイテムの売買など、自分らで露店を開いて小売りする手間が省けたりするのだが、流石に彼の言い分は通らないんじゃない?


 まだ支援用の拠点すら出来てないし。

 物腰丁寧な剣士プレイヤーが頭を下げている中で。

 後ろに控えていた魔法使いプレイヤーの男が声を荒げていた。


「おい! いいから支援しろ! 支援するのが生産職だろ!」


「おい、言い方を考えてくれ。……すいません。でもある程度ポーションの融通などして頂けると」


「まぁそれくらいなら金額によるけど売れるわね。私は薬師なわけだし」


 下手にでる剣士は、魔法使いプレイヤーをなだめながら交渉して行く。

 今の所町を拠点に置いてるから、レイラの言い分だと町の露店にポーションなら卸してるからそれを購入するのは誰でもオッケーって感じかな。


「では……」


 と纏まりかけた所で。

 魔法使いプレイヤーが癇癪をおこす。


「無視するな! エリアクエストをクリアすればここはもっと賑わうだろ! だから俺達がそれをやるって言ってるんだ! 大体資材一杯持って来てるじゃねーか! ああ? お前ローレントって名前か?」


 鑑定されたっぽい?

 そして何故か矛先がレイラから俺に向かう。


「知ってるぞお前! 掲示板で見た! 最前線で攻略組が情報を共有してる中でお前だけ情報に無いスキルを独り占めしてるんだってな!」


「えっと」


「気にしないでローレント。ここはアタシが宥めるから」


「申し訳ない! ああもうなんで今日に限ってこんな……、すいませんコイツも中々川の先に進むのが難航してまして……、ストレスが」


「第一陣プレイヤーなわけ?」


「いえ、第二陣勢です。まぁその、寄せ集めの新規パーティなんですが、できれば人より先に進みたいってのは、彼たっての希望でして……」


「卑怯だとは思わないのか! おい! 聞いてんのか! 無視するな!!!」


 受け答えに怒りが蓄積するというより。

 少し呆れてしまった。


「トモガラ」


「ん?」


「そんなに掲示板で文句言われてんの?」


「まぁテイムモンスターとかアポートとか人に無いもの持ってるしな。なんだかんだ皆が第二の町で悪戦苦闘してる中でスポーンってエリアクエスト発生させた訳だから、掲示板とかでは色々と言われてるぞ?」


 ああそう、言われてんのね俺。

 ちょっとだけ、ちょっとだけショック。

 まさか掲示板に中途半端に書き込むだけでそんなことになるとは……。


プレイヤーネーム:ローレント

職業:無属性魔法使いLv15

信用度:80

残存スキルポイント:0

生産スキルポイント:4


◇スキルツリー

【スラッシュ】※変化無し

【スティング】※変化無し

【ブースト(最適化・補正Lv2)】※変化無し

【息吹(最適化)】※変化無し

【エナジーボール】※変化無し

【フィジカルベール】※変化無し

【メディテーション・ナート】※変化無し

【エンチャント・ナート】※変化無し

【アポート】※変化無し

【投擲】※変化無し

【掴み】※変化無し

【調教】※変化無し

【鑑定】※変化無し


◇生産スキルツリー

【漁師】※変化無し

【採取】※変化無し

【工作】※変化無し

【解体】※変化無し


◇装備アイテム

武器

【大剣・羆刀】

【鋭い黒鉄のレイピア】

【魔樫の六尺棒】

【黒鉄の双手棍】

装備

【革レザーシャツ】

【革レザーパンツ】

【河津の漁師合羽】

【軽兎フロッギーローブ】

【軽兎フロッギーブーツ】

【黒帯(二段)】


◇称号

【とある魔法使いの弟子】

【道場二段】


◇ストレージ

[貸し倉庫]

セットアイテム↓

※残りスロット数:10


◇テイムモンスター

テイムネーム:ローヴォ

【グレイウルフ】灰色狼:Lv2

人なつこい犬種の狼。

魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。

群れというより社会に溶け込む能力を持っている。狩りが得意。

[噛みつき][引っ掻き][追跡]

[誘導][夜目][嗅覚][索敵]

[持久力][強襲]

※躾けるには【調教】スキルが必要。

ーーー




毎日更新はまだまだ続く。

おはようございました。

皆様、今日もお仕事頑張ってください。

ウザいプレイヤーは割と誇張表現しています。

ねとっとした感じはこの話にはあまり出さないように心掛けています。




※そろそろというか大分前から、この後書き宣伝ウザかったと思うので、次回から表示させないようにしたいと思います。プレイヤーのスキルツリーや装備、称号などと、私の小言のみです。ウザくてすいませんでした。小言もいずれやめます。


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