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「……ト、トンスキオーネさん大丈夫ですか?」


「……だ、だめだ息してない、医務室に運んだ方がいいのでは?」


「そ、そうしましょうシエテさん脚を持って……重っ」


 さて、折檻はこの辺にしておいて。

 ボコボコになったトンスキオーネを尻目に爆発の煙が晴れるのを待つ。

 かなりの爆発物の直撃を受けたマナズマ。

 衝撃によって身にまとっていた土砂は大きく飛散していた。

 ところどころ船の甲板に穴を開けるレベルでもあったことだし、その威力は計り知れない。


「おい、大丈夫か? 上ですげぇ爆発があったけど」


 ガツント含め水中で戦っていたプレイヤーが続々と船上へと登ってくる。

 HPは爆発の煙で隠れている。


 みんなが煙の中でボロボロになっているであろうマナズマの姿を想像しているだろうが、俺は微かに空気が震えるのを感じた。


「まだだ、まだ仕留めきれていない」


 何が、トンスキオーネスペシャルだ。

 爆煙が晴れた。

 そして、五体満足、いやただ身にまとっていた土砂が剥がれただけのマナズマがそこにいた。

 HPはやや削れているのか?

 いやそんなことはないな、半分以上残っている。


 あれだけみんなで叩き込んで、そして体内にもダメージを与えたのに。

 正真正銘のレイドボスはこれほどまでに、強いのか。


「くそったれめ」


 ガツントがそう吐き捨てた時、マナズマの強烈な咆哮が湿地たちに響き渡る。

 ──グオオオオオオオオオオオ!!!!!!


 憤怒を孕むその咆吼に空気が震えた。

 碌に耐性のないものは、強烈な恐慌のバッドステータスを受けてしまい慄き転げ回っていた。


「う、うわあああああ!!」


「ど、どうしようもないじゃないか!!」


「なんでこれだけやってピンピンしてるんだよ!!」


「落ち着け!」


「船の上だから逃げ場はないぞ!」


 徐々に、デリンジャーの部下たちが取りまとめていたパーティが崩れだした。

 憤怒の咆哮を上げたマナズマは、エンゴウと同じように身体に再び何かを待とう。

 それはもちろん炎ではない。

 かと言って、がっちり包んでいた土砂でもない。


 身体から分泌された粘液が湖の水を掴み、そして土砂を混ぜ濁流とさせ回転。

 まるで一つの竜巻のようになっていた。

 だが水でできているから渦潮みたいなものか。


 濁流の渦を見にまとったマナズマはそのまま一番正面にいた船に突っ込み──、


『うわああああああああああ!!!!』


 簡単に木っ端微塵にして見せた。


「おい、助けるぞてめぇら!」


 ガツントが甲板で惨状を黙って見ていたバンドーレファミリーにそう叫ぶ。

 ハッと気づいたバンドーレ達は動こうとするが、復活したトンスキオーネがそれを止める。


「やめとけ全滅だ」


「ァあんッ!? デブこらおい! まだ助かる命もあるかもしんねぇだろーがよ!」


「無駄な動きはするな、このままあの馬鹿げたデカブツを狙う」


「おい! ローレント!」


 話が通じないと悟ったガツントは俺の方を向く。


「指揮は村議会とトンがやってるからな、指示に従おう」


 俺としては救出に向かっても向かわなくてもどっちでもいい。

 まあ、ややトンスキオーネの意見が優勢だ。

 少しばかり様子見したいこともあるかなら。


「おら村議会! どうすんだよ! 早くしねぇとまたあのデカブツ浮き上がってきちまうぜ!」


 マナズマは再びあの一撃を繰り出すために力を溜めていると言ったところだ。


「……セイスさん、どうしますか?」


「……もとよりレイドボス。このくらいの被害は出ると予想は出ていました。救出しても一撃必殺を食らえばひとたまりもないでしょう、今力を溜めている時が勝負なのでは? どちらにせよ会議を開いて……」


「んな暇ねぇってんだよ! どいつもこいつも血も涙もねぇ野郎どもだな! おい、そこのずっと戦いから外れてたいっぱし野郎はなんだ!? おい、てめぇの部下もいるんだろうがよ? 知ってんだぞ、てめぇ兄貴と時々やりとりしてた怪しい情報屋の──」


 ガツントの怒りが村議員達からデリンジャーに向かったその時、彼の首元にナイフが突きつけられていた。

 ……速いな。


「ぅ……ぐっ、……」


「余計な口は慎め」


 一瞬の早業でガツントの後ろに回り込んだデリンジャーは、今にも首元にナイフを押し込みそうな低い声色でそう脅しをかける。


「パーティ鼓舞してた連中……ありゃてめぇのさくらだろ……見てりゃわかるぜ、そこいらの雑魚とは仕込みがちげぇからな……だが、──なんで見殺しにしやがった!!」


 首筋が薄皮一枚斬れるのも気にせず、ガツントは背中に密着するデリンジャーに肘打ちをかます。

 うむ、腰をもう少し落として、両腕が滑車につながったようにしていれば、威力がそのまま後ろに伝わっただろうに、実に惜しい。

 だが、意表をつける上手い手だ。


「口を慎めと言っただろう」


 それでもデリンジャーの方が数枚上手。

 すっと後ろに動いて、再びナイフを構えて同じ位置どり。

 完全に遊ばれているガツントだった。


 しかし……後ろを取る瞬間の動きが異常なほど速い。

 これは何かスキルを使っている臭いな。

 俺の未取は正直速さではない、そんな次元ではない技術なのだ。


「チッ……とりあえず一つ教えてやる。俺がそう言う命令を出していた。それだけだ」


 俺に一瞬目配せして、一つ舌打ちをしたデリンジャーは言葉を続ける。


「それに、援軍を呼んでいる」


「……援軍だと?」


 ガツントがそう聞き返したその時、はるか後方で船が水を切る音と共になんだかよくわからないパッパラパーとした管楽器の音が響いてきた。


 な、なんだ……?


「ハッハッハー! みなさんよくお揃いで! 僕がきたからにはもう安心だよ! ノークタウンからレイドボスを討伐しに僕たちの登場だ! フハハッ! もっと荘厳な音楽を奏でたまえ! 僕の登場シーンなんだからさっ!」


 こ、この声はー!!!




い、いったい誰が来たんだー!?

まあ、わかると思いますが……。


感想、メッセージ等は全て目を通させていただいてます!

ありがとうございます!

作者は土日、御殿場の温泉へと仕事で足を運び英気を養ってまいります。

それでも予約投稿していきますので、悪しからずお楽しみください。

書籍版の方も、ちょくちょくツイッターで感想もらえて嬉しいです。

キャラの性格とか、展開が本筋はそれていないまでも絶妙に変わって来ます。

違いを見ながら該当部分を読み返していただけてるらしく、嬉しい限りです。

大事なのは応援してくださったWeb版連載の読者様に楽しくお読みいただけることなので、本当に感涙の極みでしたね。

いやもう、この歳になると涙腺もろくなっちゃって。

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