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「うっとおしいぜ! このやろ!」


 HPの一番高いガツントが前線を維持する。

 いつのまにかどでかい斧から両刃片手斧と盾に切り替えていた。

 前哨戦とも言えるマナズマが召喚したナズマ達。

 物量でははるかにこっちのチームを上回っている結果になった。


「三十人近く水中に降りて、なんで2倍以上のナズマが召喚される!」


「お、多すぎる! それに最後はあのでかいのもいるんだろ!?」


「大丈夫か? お、俺らで勝てるのか?」


「中途半端に倒したら新しいのが増えてるじゃん!?」


「びびってんじゃねーよてめぇら!」


 慄く後ろに控えた雑踏プレイヤー達をたった一人で鼓舞するガツント。


「たった一人でうなぎ二体相手すりゃいいんだろうがっ!」


 そうだ、その通りだ。

 彼や俺らのような高いプレイヤースキルを持ったプレイヤーが二体以上相手にすれば、早い話解決する。

 あと、うなぎではなくギンポだが。


「──慄いてんじゃねぇ!」


 小魚の群れのようにまとまりを作って強襲するナズマをガツントは盾で弾き返す。

 ブロッキングの技術まで持ってんのか。

 やや荒々しいがかなりのものだ。


「てめぇら見ただろ沼地に取り込まれて行く村をよお! もう手遅れかもしれねぇ、でも戦いにきた俺らを喜んでくれただろうが! ちったぁケツの穴をひきしめろや! ここまで出張ではって来たなら筋通して全力で戦え!」


 盾が砕けた。

 まとまった塊を腕をくろすさせて受け切ったガツントは傷を負いながらも別の盾を構え直し再び下がったぶんだけ前進した。

 いや、少しづつ、気合を入れて前に出ている。


「うおおおおおおおおお!!! 舐めんじゃねぇぞ魚ごときがああああ!!!」


 出た、雄叫びだ。

 一瞬だけでも確定で動きを止める、そんなスキル。

 音による振動か、それとも気合的な何かか。


 俺が思うに、達人級の気当たりをスキル化したものではないかと。

 剣術系のスキルもレベルが上がるにつてれ剣筋はお手軽達人級へと駆け上がる。

 インスタントだな、まさに。

 長い武道の中で培って来たものは、それだけではないが、そう言う要素もオンラインゲームの面白さだろう。

 強いスキルとか。


「今だ! かかれ!」


 敵か味方かもわからない、そんな盗賊ギルドのさくらたちが鼓舞する。

 レイドボスを倒すまでは目的は一緒なのだろう。


 今、この瞬間のみ。

 ガツントの叫びによってプレイヤーは一丸となった。


『うおおおおおおおおおお!!!』


 あまりのレイドボスの規模に慄いていたプレイヤーが揃って武器を振るう。

 パーティ単位から、それぞれの役回り、持ち回りへのグループに切り替わり。

 一つの軍勢として機能していた。


 なんだ、あいつ、王の資格持ちか?

 兄貴から全てを奪った弟だとでも言うのだろうか。

 その状況に、俺は思わずにやけてしまった。


「ローレント!」


「ああ」


 精一杯やってくれている状況で、スペシャルプレイヤーと呼ばれていた俺らの動きはどうなる?

 召喚されるナズマ達はその他プレイヤーに任せて、さっさとこの前哨戦を終わりにしようじゃないか。


「強制的に次のバトルステージに突入させてやる」


 水の中、出現させた石柱を蹴り飛ぶ。

 そして空蹴で加速。


 ──グオオオオオオオオオオオ!!!!


 雄叫びをあげるマナズマへと一直線に接近し。

 悪鬼ノ刀を抜いた。

 加速の勢いとともに抜き居合。


 鱗に阻まれるが……切れないことはない。

 ガノイン質の硬い鱗ではなく、体表面が少し滑り気を帯びたもの。

 それでダメージを阻むようだが、無属性魔闘の前では意味ないだろう。

 地味にマジックエッジという斬撃属性のスキルが強みになる。


 そういえばエッジとインパクトは同時使用すると、威力半減するみたいだ。

 衝撃と斬撃は相性が悪いと言うことを新たに知った。


「グオオオオオオオオオオ!!!!」


「やるねぇローレント!」


 後ろから水属性の魔闘を纏った十八豪が追いつく。

 そこへ、少しだけダメージを負わされ狂ったマナズマが乱水流を起こし俺たちを襲う。


「おっと! なめてもらっちゃ困るよ! ──ウォータースティッキ!」


 十八豪が、水を掴んだ(・・・・)

 うぉーたーすてぃっく?

 水の杖?


 どうやら違うようで、掴んだ水を動かして乱水流と相殺していく。

 なんだかすごいな。


「すてぃっく? 武器?」


「違う! 粘性を持った水を掴んで扱うことができるんだよ!」


 速く切り裂くようなマナズマの水流攻撃に対して。

 非常にゆっくりだが広範囲の水を動かし、相殺。

 氷結女帝の本領発揮というところか。


「ほら、行きなよ!」


「うむ」


 ケツを蹴られるようにして俺はナマズマに切り込んでいく。

 粘性がある以上、斬る方向性であってると思うのだが、切り裂いたところから血ではなく白濁の粘膜が出ていて気持ち悪い。


 後ろを振り向くと、マナズマ単体に攻撃を仕掛けたことで対象のナズマは召喚されなくなっていた。

 よし、これで次撃の後、少し距離をとって援護を待つことにしようかな。


 グオオオオオ!!!


「おっと」


 振り返る、マナズマが水流攻撃は無効化されるとしってそのまま体当たり。


「うおぉっ!?」


「くっ、このデカブツ!」


 動くだけで水流の余波がすごい。

 乱水流攻撃はまるで小手先の技だったかもな。

 巨体から生み出される水流を制御できずに少し顔を歪める十八豪。

 水の中で自由に動くことに特化した魔物はそれだけで脅威だ。


「マナバースト!」


 ──バクンッ。


「あら?」


 嘘だろ。

 巨大な口に飲み込まれた。


 体当たり直前でのマナバーストを口を大きく開いて飲み込むことで、完全にタイミングを外された。


「ローレント!!!!!!!」







ブクマ、評価、感想、ありがとうございます!

誤字修正の感想は、時間が取れ次第順々にやっていきます!




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