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 幾重にも別れた支流、それが湿地帯をつなぐ。

 レイドボスの影響によって、小型船舶で行くような水路も、大型船で進むことができるようだ。


 故に、クラリアスが陣取っていた場所からここに来るまでと同じような工程の繰り返しだ。

 たまに出て来る強い魔物は戦いに慣れたプレイヤーが少しづつ頭角を表して来たことによってなんとかなっている。

 士気を上げることは、こういうことにも繋がるのだな。

 ガツントと十八豪も大いにその力を振るっていた。


 彼の斧技なんか、斬るではなく断つだ。

 断つ、破る、割く。

 生半可な防御なんか意味なさそうだ。

 トモガラの戦斧ブンブン丸とは違って、しっかり斧スキルを織り交ぜての戦闘。

 なかなかやるじゃん。


「……広いな」


 呟くと、トンスキオーネが煙をこちらに吹きかけて来た。


「秘策があるぜ。まあ、何が起ころうと対策が取れねぇことはないはずだ」


「……俺が煙なれしててよかったな」


「ふん、ならとっとと俺の腹を抓る手を離しやがれ」


 それとこれとは話が別だ。

 やけに自信満々なこの男ではあるが、村議会とも綿密な話し合いを重ねているようだし。

 どうだろうか……もしかして、毒腺か?

 毒腺筋、濃厚か?


「さて皆さん、ここが今回の戦さ場となりましょう」


 セイスの声が響く。

 拡声器。


「ここって、ただの泉……?」


「でも、すごく濁ってるわね?」


「ってか生き物すら見えないんだが……本当にいるのか?」


 困惑した声があがる。

 そう、たくさん出現していた湿地帯のモンスターが見えなくなっていた。

 魚オンリーではなく、鳥もちょくちょく出ていた。

 紫色の毒を吐いて来る【ドクイナ】という水面を走る鳥とかね。


「あちらをご覧ください」


 セイスの手が指し示す方向を見ると、ひらけた泉の真ん中に離れ小島のような場所が存在し。

 そこに煉瓦造りの小さな祠が立ててあった。

 誰の手入れもされていないのだろう、見るからに朽ち果てかけている。


 それがいったいなんだ。

 まあ、明らかに何かありげだってのは理解できる。


「レイドボスのマナズマの影響を抑えるための祠ですが、見ての通り朽ち果てかけています。村長氏の話によると、あの祠を壊すことでマナズマが出現するそうです」


 壊す許可は頂いているとのこと。

 さて、ここで問題になるのが、レイドボス・マナズマの討伐は失敗できないということだ。

 リアルタイムで湿地帯に水が溢れ出て全てが底なし沼みたいになってしまう状況。


 負けて死に戻りしたらどうなる。

 マナズマ、解き放たれちゃうな。


「……どうやって壊すんだ?」


 そんな声がプレイヤー達から漏れていた。


「お、俺は嫌だぞ。なんかあの祠壊したらぐわぁーって出て来て俺やられるんだろ?」


「確かに、船に戻る前に食われそうだ……村議会、どうやっていくんだ!?」


 セイスは新たに指し示そうとしていた手を静かに下ろした。

 一応その方向に目を向けて見るが、小さなボートが固定してあって、それに乗せる予定だったみたいだな。

 ……生贄じゃねーか。


「いやいや流石にそれはねーよ!」


「イヤリング外したら死ぬとかどこぞのギルクエだよ!」


「あれあんまり面白くないしさ!」


「いや、それ関係なくね? 面白いって、12年近くやってたロングランじゃん!」


 ……一体なんの話をしているの変わらないが、流石に不満の声が上がるようだ。


「しゃーねーな」


 エナジーブラストでうち壊せるもんかと考えていると、ガツントが首の骨を鳴らしながら前に出た。


「ま、一回デスペナ食らってっからよ、何かあったら頼むぜ」


 そう言いながら小舟に飛び乗るガツントは、固く結ばれたロープを解いて行く。


『兄貴!!!!!』


 すでに雑踏プレイヤーの何人かはガツントのことを慕っていそうだ。

 金で従えていた兄貴とは大違いだな。


「その必要はねぇぞ」


 トンスキオーネが前に出た。


「なんでだデブ公?」


「……どタマ打ち抜くぞ」


「へっ、いいぜやってみろ」


 ちなみに俺は腹にバズーカ食らった。

 さて、話が進まないからいい加減始めてくれ。

 俺はトンスキオーネの顎の肉をつまみ、十八豪が水弾を見舞う。


「……頭が冷えたぜ……ありがとよ……」


「顎の肉を洋服感覚でつまむな! 俺は悪くないだろ!」


 喧嘩っ早いところを直さないといけないよな。

 そこだけはコーサーを見ならえ。

 でも、あいつも元はチンピラだったんだよな。

 気を取り直したトンスキオーネが言う。


「キャノン砲準備──」


 そしてニヤリと悪人ズラを歪めて持っていた葉巻の煙を大きく口に含んだ。

 鼻と口から煙を出し、そして葉巻を指で弾き、湖に捨てながら言う。


「──放て」


 ドンドンドン!!

 三連キャノンが火を吹く音が聞こえる。

 内部で火属性魔法が炸裂し、圧力で土属性魔法で作り出した鈍色の弾を飛ばしているのだ。

 デブ曰く、中途半端な風魔法よりこっちの方がコスパがいいらしい。


 バッチリ狙いを定められた弾が連なって祠を打ち壊した。

 ボロボロと崩壊して行く朽ちた祠。


「さあ、お出ましだぜ」


 その瞬間、大きく水面が揺れた。





【ドクタグ】→【ドクイナ】→【ドクジャク】→【ドクイドリ】


【ドクイナ】→【ヌマペン】→【カンムリペン】→【オウペン】→【テイペン】


【ドクイナ】→【レーア】→【エーミュ】→【ダチーウ】→【モーア】



【ドクイドリ】毒物を食う鳥。太く鋭い爪を持った足から繰り出される蹴りには注意。

【テイペン】頭に立派な鶏冠を持ったペンギンの中のペンギン。強い。

【モーア】乗れる。馬ではいけないところもいける。




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