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おはようございます!


「うーん……」


 ソファに座って唸る俺に、十八豪が声をかけてくれた。


「何を唸ってるのさ」


「いやそれが……なんだろうな、張りがないと言うか」


 今までこう言う初見のプレイヤーが大勢いる絡みではやっかみを持たれていたことが多かった気がする。

 なんと言うか、バカなキッズはどこにでもいるもんで、わざわざ絡んで来てくれるから処理が簡単だった。


「さみしい気持ちも少しある」


「バーカ、自然淘汰されただけだよ」


「やはりそうか」


「有名税として絡んでくるやつもいるかもしれないけど、いろいろ返り討ちにした結果、絡んでくるやつがいなくなったんじゃないの?」


 十八豪が言うには、それでも掲示板でランカー叩きは流行っているらしい。

 こんなゲームクソだ、とか。

 楽しくねー、とか。

 あいつはチートだ、とか。

 一部が強すぎる、とか。


 掲示板を見るかと聞かれて、丁重にお断りした。

 なんだろう、育ちが悪いんだろうな。


「直接来たら相手するよ」


「それが一番じゃないかい? どうせ来ないし?」


 そんなことを話しているとガツントが会話に混ざる。


「まあ、こじらせると兄貴みたいになっちまうから、来ない方がマシだ」


「ああー、その節はすまん」


「いいってことよっ! ただ飯食らいのクソデブだから、親もそろそろ追い出すとか言ってたし、俺が親抑えてるのも時間の問題だったんだ」


「そうなのか、俗に言う引きこもりってやつ?」


 ……大概、俺も同じようなもんだけどな。

 ここ最近鍛錬以外はゲームしてる。

 たまにトモガラが遊びに来て、どこかへ行く。

 そして面倒なのに絡まれて、てんやわんやする。


「そうだな、まあ現実の喧嘩が兄貴は俺に絶対勝てないから腕っぷしに物を言わせて外には連れ出してたぞ」


「あんた、めっちゃいい弟じゃないか」


「おっと金髪の姉ちゃん、惚れちゃダメだぜ? 俺には彼女がいるからな! ワハハ!」


 そう言うガツントの顔面に水弾が飛んだ。


「──ぶはっ!?!?」


「ガキは興味ないんだよ」


「いってぇー! 戦いのために感覚設定マックスにしてんだから、いきなりはやめろっつーの!」


「お前らそろそろやめとけ」


 お互いの頭の上に黄色いマークが浮かび上がったところで、船が止まった。

 どうやら川の向こうの湿地帯にある村へとたどり着いたようだ。

 あの時、俺とガストンを殺そうとしたNPCはいるのかな?

 まあいたとしても覚えていないだろう、だいぶ前だし。


「一度船から降りるのか?」


 船の中からぞろぞろ出て来た村議員の連中。

 セイスに尋ねてみた。


「いいえ、沼地は支流を通して奥へを進むことができますから、このまま行きますよ」


 とのことだった。

 なんと便利な世の中になったもんか。

 デリンジャーたちは基本的に湿地帯の川沿いを走ってレイドボスの居場所を探し当てたらしい。

 探し当てたと言うよりも、この湿地帯の唯一のアクセスポイントである村。

 そこに伝わる言い伝えだそうだ。


「村とは言うが……ほぼ沼地だな」


「かねて、この村はレイドボス・マナズマの力によって徐々に沼に覆われていくと言う厄介ごとを抱え込んでいました。いけにえを差し出すことで遅らせることは可能ですが、根本的な解決にはなってないようです」


「へぇ」


 割としっかりとしたストーリーだった。

 だがその辺のシナリオはすでにデリンジャーたちが進めているので割愛。


 ちなみに生贄は美人か?

 美人の女か?

 それによって頑張り方が変わってくるぞ。


 徐々に沼地に飲まれていく沼はゲーム時間が進むにつれてどんどん縮小していく。

 そして誰も着手しなければ勝手に消滅してしまうとのことだった。

 ……シナリオ一つ逃すところだったってことか?

 でもまあ、村議会の連中の欲しいものといえばそこの土地だろう。

 だから村なんか消えてくれて構わないって思ってそうだよな。

 その辺しっかり考えているのかわからんが、とにかく間に合ってよかった。

 そう思っておくことにしよう。


「皆様方、ぜひお気をつけください……マナズマは古くから伝わるおそるべき魔物。私どもは怒責龍と呼んでその怒りを沈めるためにいけにえを差し出しとりました」


 村長さんらしき老人から、同じような話を聞く。

 怒責龍。

 なんだから怖そうな名前だ。

 エンゴウは確か感じで炎剛だったよな。

 炎猴ではない。


 レイドクラス、しかも今回は弱体化なんかされてないんだよな。

 果たして、勝てるだろうか。

 怪獣大戦争していたエンゴウの強さは一線を画す。

 絶大な炎攻撃は避けるのは難しいだろう。


 そう言う攻撃が来たらマナバーストで弾くように調節しないとな。

 こうして考えていくと、どんどんゴテゴテに回っていき、使える手札が少なくなっていく。

 何がくるかはわからないが、レイドボスを侮ることはしてはいけない。

 それも、弱体化されていないそのままのレイドボスだ。


 切り札はとっておこう。

 うむ、それがいいだろう。


 俺は心に決めると空を見上げた。


「……切り札、ね」


 湿地帯といえども空は青い。

 戦いの前ではなく観光だったらかなり不思議な景色が拝めるよな。

 レイドボスをクリアしたらジャングル。

 密林か、なんだか楽しみになって来たぞ。










そろそろレイドボスですよー。

書籍版のみリアルの話あります。

こっちでは基本異世界ちっくなセカンドライフです。





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