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野獣の日終わりました。


「ッカー! 全くやられちまったぜ完膚なきまでにな!」


 河を征く船の上でガツントがエールとかいう極めてビールに近い物を飲みながら首を降っていた。

 表情はかなりスッキリしている。


「認めるしかねぇが、てめぇは強え、俺が戦ってきた中では誰よりもな」


 誰を比べられているのかわからないが、とにかくそれは良かった。

 とりあえず人を指差して勝手にサムズアップするのをやめろ。


 俺たちがいる場所は、村議会、トンスキオーネ、バンドーレたちが乗り込んでいる拠点船である。

 マナズマと呼ばれるレイドボスがいる場所へは、向こう岸へ渡り、マングローブの密林とその奥の湿地帯を突き進むのではなく。

 一度密林の中にある集落を経由するとのことだった。


 手間が省けるもんだねえ。

 エリアボス、クラリアスがいた場所の奥地からいけるらしい。


 ちなみにクラリアス、久しぶりに会いました。

 今回倒していないものもみんなで一斉に攻撃して、レイドボスのデモンストレーションにされていた。


「でかいナマズそっちに行ったぞ!」


「吸い込みきた! 盾を準備しろ!」


「船上巨槍一回だけ使ってもいいってよ!」


「あっちの船のキャノン砲はーーー!?」


「あれは私物だからダメだってさー!」


 哀れクラリアス、最初はかなり強いイメージだったのにな。

 そして討伐するのにも船を準備するところからのスタートだったから、かなりの時間がかかっていた。

 

 それが、今じゃ直通だ。

 やはり数的不利は覆せないか、所詮魔物。

 五十人前後相手に、俺ならばどうやって戦おう。


 相手の質にもよる雑踏程度ならリーダー格を一人殺せばそれで済むな。

 訓練された手合いだと少し厳しくなるが常に先手を打たなければならない。

 これが緑の帽子とか北方の特殊部隊になると、ゲリラ戦を覚悟しなければいけなくなる。


 最初頃にオーク相手によくやっていた。

 身を隠し、奇襲する。

 このゲームを色々と理解するまでに、様々な試行錯誤があったのは確かだ。


「ってか、キャノン砲ってなんだ……?」


「この船は俺が特注で作らせたもんだから、船首に三連射が可能なキャノン砲がついてんだ」


「……まじか」


 トンスキオーネが言うには玉は土属性の魔法スキル。

 発射は風属性ではなく火属性。

 あの筒の中で、おそらく何かがドカンと爆発して玉が飛び出す仕組みだな。


「この船もすげぇけど、戦ってる奴らも気合入ってらぁ!」


 さて、甲板から階段を上がった位置に作られた俺たちの特設ブース。

 そこに並べられたソファに寝っ転がりながら別の二隻の船に乗り戦うプレイヤーを見ていたガツントに話を戻す。


「ところでお前は誰だ」


「あん? それは俺のことか?」


 お前以外に誰がいるんだ。と首をへし折ってやりたい。

 君の首をへし折ってやりたい。

 漢気溢れているのはよくわかったが、そろそろくどすぎるぞ。


「ま、てめぇが俺を知らないのは理解できるぜ、でもなんで俺がてめぇを知ってるかってことだよな?」


 それを側から見ていたバンドーレがトンスキオーネに聞いた。


「……トンスキオーネ……てめーのコンシリエーレってそこそこ有名なんじゃないのか……?」


「とんでもねぇくらい有名じゃねぇの? まあニシトモからの受け売りだけどな」


 そう、割と目立ちたくなかったのだが今日でよく理解できた。

 俺、なんかめっちゃ名前広まってない?

 もともと変なスキル、テイムモンスター、そして契約モンスターとかのくだりで質問ぜめにあったり、掲示板で叩かれていたりしたしな。


「てめぇがアカバンに追い込んだ、ガンストって男の弟だぜ!」


「……ん?」


 誰だ、それは。

 名前を言われても思い出せなかった。


「プレイヤーキラーか?」


「ちげぇよ! まあ、プレイヤーキラーじゃないけどそれに近い男だった!」


 かばっと身体を起こし、そして腕を組んでウンウン唸るガツントは何やら勝手に話し始めた。


「ま、俺からすればどうでもいいんだがな? 色々と聞かされてたんだよ──────」





 ──久しぶりに会った兄貴の様子が少しおかしかった。


 まあ、就職に失敗して引きこもりニートになるくらいの、そんな人間だったのだが、それでも家族だから定期的に愚痴を聞くくらい仲は良かった。


 そのガンストはいつの日かを境に、いきなり発狂したように暴れていた。


 ずっとゆるさねぇゆるさねぇと言いながら毎日そう言う兄貴は、とうとう病院に運ばれるほどになった。


 もっとも、いつかは親が病院に連れていくと言っていたのでそれが早まっただけに過ぎなかったのだが、ガンストは断片的にローレント、ローレントとひどく怯えながら名前を口ずさんでいたらしい。


 そういえばせこいプレイヤーローレントとか言うやつに仕返ししてやる、嵌めて追い込んでやるとかまたこすいことを考えていたみたいだったのだが、失敗したのだろうか。


 なんとなく狡いのは許せなかったので、調べてみるとめちゃくちゃ強く、かつやばい動画が出てきたらしい──。





「──それで、会って戦って見たいと思ったんだぜ!」


「ごめん、最後がどうして会って戦って見たくなるのかよくわからんけど、ガンストの弟ってことでいいの?」


「おうよ!」


 ガンスト……ガンスト……。

 ガストン……ガンスト……。


 おぼろげな記憶をたどっていくと、確か掲示板でそんな奴を見たな。


 ……ん、嫌な記憶が蘇るぞ?

 あいつだ、俺をしこたま叩いた挙句。

 ケンドリック陣営について買収試合をして袋叩きにようとしたプレイヤーだったんじゃないっけ。


「思い出してきた、コスい奴だ」


「そう、生まれた時から兄貴はコスいんだよ! 挫折から逃げて向き合わないから苦労をしらねぇ! 苦労しそうになったら人に押し付けて知らんぷり、なんか言ってきたら関係切って言い逃れてたからな!」


 ウハウハ笑うガツントとは全くもって大違いじゃないか。

 本当に、兄弟なのだろうか。


「ま、俺にも劣等感抱えてたんじゃね? ウワハハハ! とりあえず戦って見て楽しかったぜ! やっぱすげぇやつはいるもんだな! ウワハハハハハ!」


 ガンスト、とんでもない弟を持ったもんだ。

 兄は小物だが、その弟は大物だったか。


 ちなみに、決闘で死亡した場合のデスペナルティはない。

 賭けたものを取られるのがすでにペナルティだとガツントは言った。

 俺は負けたことがないからわからなかったんだ。









なんと弟でした!

兄弟ですっごい格差があるのって、よくありますよね。

いいやつタイプのガツント君です。


容姿に関しては、ス○ップの香○慎吾みたいな感じです。

天パチュルチュルの斧持った恵体戦士。

それこそ、正道のバトルマスター職がよく似合う。





あとがき小話。

新作書きたい。


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