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野獣の日です。書籍版の発売日です。記念すべき日です笑



 決闘のゴングが鳴る。

 いつのまにかシステムメッセージでカンッと音が鳴るようになっていたみたいだ。

 初手は、六尺棒で転ばせて首をへし折るか。

 そう考えていた時だった。


「──うおおおおおおオォォォッッ!!」


 俺が動く前に大きく息を吸って雄叫びをあげたガツント。

 その雄叫びによって、ワンテンポ動きが遅れてしまった。


「へっ、斧持ち専用スキルの雄叫びは回避不可だぜ?」


 そう言いながらガツントは、斧を振り下ろした。

 回避不可、なるほど。

 そんなスキルもあるのか、厄介だな。


 お互い近づいた状態から決闘スタートした分、その一瞬が命取り。

 振り上げた斧を下ろすガツントの一撃を浴びてしまう。

 インパクトの瞬間、なんとか身体を引いて威力を逃そうとするが、それでも大きなダメージになる。


「ッカー! 雄叫び使って怯ませてもギリギリで躱されるのか! とんでもねぇな、相変わらず!」


 避けきれてない、ちゃんとダメージ入っているのだが、ガツント的にはノーダメ扱いらしい。


「HP減ってるぞ」


「それでもてめぇの装備のおかげでHPは減っても傷を受けてねぇだろッ──」


 振り下ろしたままの肩でタックルを受ける。

 胸に衝撃。

 そのまま後ろに弾き飛ばされた。


「む」


「へっ! おらああああああ────ッッ!!!」


 体の硬直もなくなり、後ろに自ら飛んで衝撃を殺し、そのままバク転して顔面を蹴ろうとしたのだが、ローブを掴まれて叩きつけられた。

 ……こいつ、戦い慣れしている。


「ロ、ローレントさまぁああああ!!」


「おいおい、あの斧の男強くねぇ? ローレントがやられてんぞ」


「やっべぇ、なんだあいつ!」


「ロ、ローレント様ァ……」


「涙を流すのは後にしな」


「な、なんですかあなた、いったい誰ですか?」


「そんなことをどうだって良いんだよバカ。あれくらいであいつがやられるタマな訳ないじゃないのさ、見てな、逆にスイッチ入ってさらに強くなるんだからさ」


「金髪の切れ目美人様……あの、お名前は……」


「好きに呼びな」


「お、お姉さまと呼ばせてください!!!!!」


 ──とかなんとか十八豪が向こうで茶番をやっとるわけだが、普通にガツントは強いぞ。

 後頭部を地面に打ち付ける前に、引っ張られるローブを抜いて空転受け身。


「ッカー! それも避けるのか!」


 ガツントはニカッと歯を見せ豪快に笑いながら俺にローブを投げ渡した。

 いったいどう言うつもりだ?

 そう思いながら訝しげな視線を食っていると、彼は斧を肩に置いて言った。


「次はてめぇの番だ。──いいよ、来いよ」


 ────ほう。


 挑発しているのがわかる。

 俺も良くする手だからな、だが自分がされる側に回るとこうもムカつくのか。


 いいだろう、六尺棒から得物を持ち替える。

 アポートで鞘ごと手元に転移させるとそのままゆっくりと刀身を抜きはなった。


 今宵の悪鬼は血に飢えている。昼間だけど。現実では夜だ。

 その生贄になってもらおうじゃないか、どうやら魔物よりも人の血が恋しいみたいだからな。

 特に、なんとなくだが、俺の血が好きみたい。

 どこで覚えたんだかしらんが、主人に楯突くとは何事か。


「……全力で相手してやる」


「望むところだ、ここに当ててみろや」


 ここ、というイントネーションがやや聞きなれないものだったが、ガツントはそう言って自分の胸をトントン叩いた。

 喧嘩なれしてるやつがここにやってみろと言った時、従わないほうがいい。

 何かしらの秘策があるんだろうからな。


 だが俺は、指定した場所を攻撃してやろう。

 あえて相手の口車に乗る、それが戦いの常である。

 駆け引きである。

 どっちにしろ、こいつごときが避けれるわけでもない。


「未取」


「──────ん────?────」


 ほおけた声が聞こえるんだろうな。

 あれ? とガツントが下を向いた時にはすでに刀が心臓に不覚突き刺さっていた。


「死ね」


 そのまま捻ってやる。

 胸骨の擦れる音と突き刺した心臓に穴が空いたことで血しぶきのエフェクト。

 感覚設定をフルに設定しているととことんリアルな手触りだな。


「み、見えなかった……なんでだ……」


「お前がみてなかっただけだろ」


 瞬きや意識には常に死角が存在する。

 そこに頼っているようじゃ、まーだ甘い。

 見なくても相手の攻撃を感じ取れるようになって出直してくれば良いさ。

 アポートで突き刺した剣を抜いて、そのまま血糊を払うと納刀。


 ──チンッ。

 そんな音ともに、ガツントは倒れ、俺の勝利を告げる音が聞こえた。


「……あれ、動画だともっとえげつない攻撃力じゃなかったけ?」


「そうだよな、上がってる動画とか、グロ注意だし」


「でもカッケェよ、男と男の戦いって感じがすげええええ!」


「あの斧野郎もいいところまで行ったし、すっげぇ男気あったよな!」


「動きがゆっくりに見えたー!」


「これもうわかんねぇなぁ」


「ってかあの剣なんだよ、魔剣か? なんなんだ?」


「すっごく怖いあの剣……ぞくぞく来ちゃった」


 あれ?

 なんか思ったよりみんな引いてないな。


 どう言うことだろう。

 心臓に突き刺して思いっきりえぐってやったんだけどな。


「これがスペシャルプレイヤーの強さ! 第一回闘技大会優勝者ローレントさんの絶対的強さです! レイドボスなんか、目じゃないほどの強さを兼ね備えた者と、それに戦いを挑む男気溢れる者がいれば必ず今回のイベントは成功するでしょう! みなさん、頑張りましょう!」


「おおおおおおおおおお!!!」


 今までオロオロしていたセイスが、手のひらを返したようにそうプレイヤーたちを扇動する。

 再び、俺はいろんなプレイヤーたちから質問ぜめとフレンドリスト入れろ攻撃を食らうことになる。

 た、助けてくれ。

 ガツント、恐ろしい男だ。







次回、ガツントの正体がわかります。

さて、ガツントをガンストだと思った人ーー! プププ!




さて8/10、野獣の日が書籍版の発売日でした。

ちょろっと近場のアニメイトみたらありました。

感動しました。


そして発売日までの一日二回更新頑張りました!

ぬああああん疲れたもおおおおおおん!!!


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