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「とにかく、レイドボスが終わったバンドーレには街の自警団の役目を負ってもらっておけばいい」
ただでさえテージシティ産のレベルが高いNPCたちである。
初心者狩りを今でもやろうとしているPKたちには良い薬になるだろう。
NPCは決闘以外でプレイヤーに手を出してもいいしな。
だがしかし、マフィアである彼らはやり返されても文句を言えないというものがシステム的にあるんだが、そこを枷としてもらいましょう。
「いいのかしら、頼めるの? 本当に?」
「嫌がるなら俺が来ると言っておけ」
バンドーレなら震え上がっていうことを聞くと思う。
聞かなくてもきっちりお仕置きをするから。
そもそもレイドボスでNPCが何人生き残れるんだろうな。
戦闘員として派遣されてきているが、そこまで情はないぞ。
活躍したら今後拠点の警備などにあたってもらうっていう宣伝もできるよね。
「そう、なの……わかったわよ。もうあんまり心配かけさせないでよね」
そう言いながらレイラはなんとか納得した表情を作った。
「それにしてもローレント。あんたよくやるじゃないの、まさか政治的団体にヤー公を絡ませるなんて、これが明るみに出たらおしまいじゃないの」
隣に座った十八豪がいつのまにかボトルのままワインを飲みながら笑っていた。
そうだ、こいつ酒豪だった。
氷結女帝のあだ名も、ある意味酒豪という意味をなぞらえてあるんだった。
「お、おい」
「うわぁ、ちょっとボトルごと?」
俺とレイラの視線なんか気にしないとばかりに十八豪は言葉を続ける。
「とにかく、その村議会をぶっ潰せばいいんでしょ? あたしに任せときな、前よりはるかにパワーアップしたスキルでギッタンギッタンにしてあげるからさ」
ギッタンギッタンにしても、また復活しそうな雰囲気があるから村議会には政の中で失脚してもらう予定だったのだがな……。
直接叩き潰してもダメージは少ないだろう、だからある意味専門家でもあるトンスキオーネとその後ろ盾にこっそりいるニシトモの力を借りている訳だ。
ちなみにニシトモにはトンスキオーネからすでに情報が送られていた。
俺もなぜか村議会が目の敵にしていたぞ、という言葉を投げかけてみたら。
ニシトモは私利私欲があると村議会を早々に見限ったらしい。
そして、村議会を全く通さずに第一拠点で諸々の利益を上げ、さらにブラウ達のクランに第一生産組の職人グループの作った装備補助や、それを通した初心者補助など、なんだか慈善事業やら助成事業っぽいことを一人で勝手に進めていたとのこと。
なんともまあ、掲示板で村議会とかいらないよね。
みたいなスレが乱立したんだとか、してないんだとか。
村議会は面白く思わず強制執行をしようとしたのだが、当然力の差は歴然だ。
村議会と関わるプレイヤーには品物制限と自分に直接取引きしに来れば当然マージン抜きにして安く売ったりなど、プレイヤー外しを行い、縁や脈を根こそぎぶち抜いていった。
と、本人は俺にメッセージを送ってきた。
かなりの長文で読むのが面倒だった。
ニシトモ的には、残りカス程度の力しか持ってないはず。
トンスキオーネの言っていたようなお金を払って支援を望める環境ではないとのこと。
だが、俺が直接みにいった村議会の建物はそこそこの大きさを持っていたし、中の調度品もそれなりのものをおいていた。
建物は第一拠点が作られる頃から、まだクリーンなレイラファンだった時からそれなりの物が建てられたのだが、それ以外はニシトモ制裁の後とは矛盾している。
なくなった毒腺のこともあるが、やはり確実に、どこかまずい場所と繋がっている。
ニシトモは俺にそう伝えてきた。
『私が制裁した後、村議会の人員は大きく入れ替わっていたようです。盗賊ギルド出身のプレイヤーも絡んでいるようですし、様々な思惑がありそうですね。私の方でも思い当たる節を調べておきます。多分すぐに答えは出るでしょう。おそらく、あなたとも因縁ある相手です。レイドボス討伐が終わったあたりで、一度伺いますね』
メッセージの最後には、そんな思わせぶりの文章が記載されていた。
「うーん……どういうことかしらね」
俺の話を聞いたレイラは首をひねって考え込む。
「面倒なのは好きじゃないから、正面からぶっ潰せばいいんだバーカ! なあローレントぉ」
「お、おう」
ナチュラルに肩を抱いて来るな酔っ払いめが。
適当にあやしながらレイラと話す。
「レイドボスの支援をしたことでひとつ見えたものがある」
「なにかしら?」
「ニシトモの制裁でお金を持っていないとわかった今、誰かが資金の融通をしている」
「……だとすれば、村議会はあんたのアイテムを高く売ったのかしら?」
「ひとつ言えることは、レイドボスの切り札として、奴らは毒腺を使わないってことだ」
あったら支払いをケチるだろうな、絶対。
そんな根性をしている奴らだ。
「……盗賊ギルドが来ていたのよね? だったら盗賊ギルドに売っぱらって協力してもらってるんじゃないの?」
「なるほど」
中立の位置を貫いている盗賊ギルドが支援をしているのか。
いや、どうだろうな、わからん。
確かにデリンジャーは去り際に妙な言葉を残していた。
あれは敵対する意思を表示していたのだろうか。
「うむむ、うーむ……うーーーーーーーむ」
「珍しいわね、あんたがそんなに悩むなんて」
「……人をなんだと思っている」
「戦いしか頭にない戦闘狂?」
んなわけあるか。
ちゃんと考えるぞ、俺だってな。
「おら、ローレントあんたものみな! これから戦いがあるから景気付けだよ!」
「ちょ、いま考え事してるからやめてくれ」
こうなれば盗賊ギルドの内情を探る必要も出て来るのだが……いかんせんプレイヤーキラー側についてるわけではない。あくまで村議会は一般プレイヤーだから、どうしたものだろうか。
カイトー、いたら俺に情報をくれー。
バトルまでいけませんでした。
すいませんでした。
この小説でなかなかないシリアス?回です。
酔っ払った十八豪はローレントの肩を出してワインを飲んで上機嫌。
つまり、横乳が彼の肩に当たり判定。
いよいよ明日ですね!
フライング店頭配置の情報も出回っていますよ!
ウキウキして眠れねぇ。