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2000万PVをついに達成しました!
「こっちで調べるって言ってたのに、村議会に顔を出していきなりレイドボスの支援をしてるってどう言うこと!」
何やら書類の束を持ったレイラが、ソファに座る俺の鼻先数センチにまで詰め寄ってそう叫ぶ。
「あいつらから書類を渡されてびっくりしたわよ! あんたの名前がスポンサーのところに記載されてるから! 掲示板と公式に連絡してある程度人を集めるってあいつら申請出してきてるんだけど! ローレントが個別支援してくれてるから申請は通せって!」
「ああ、そのことなんだが……」
「もうなんでいつも勝手なことばかりして! 今あんたの倉庫のことで色々と調べるために動き回ってるんだから、こうやって余計なことするのは──」
そこで十八豪がレイラの肩を掴む。
すっかりボルテージが上がっていたレイラが、十八豪を睨みながら言う。
「何よ!?」
「とりあえず飲みな。そうカッカしてちゃ何も話は進まないよ?」
睨むレイラの瞳にじっと視線を合わせる十八豪は、レイラの手を掴むと暖かそうなマグカップを握りしめさせる。
「……何よこれ」
やや、ボルテージが下がったレイラが口を尖らせながらカップの中身を訪ねた。
「あんたの好きなホットミルクだよ。それもかなり甘くしたやつ」
十八豪はそれだけ言って再びソファに座る。
今度は肘が当たらなかった、少し間を空けてくれたみたいだ。
なんだこのイケメン、素晴らしい対応力じゃないか。
絶対男だったらモテていた、そんなオーラ持ってる。
「もう……気が抜けちゃったわよ……」
改めて、俺にまくし立てていた状況を思い返したレイラは、引っ込みがつかなくなっていた状況を恥じているのか、少し顔を赤くしながら一人がけのソファに座って小さくなる。
そしてチビチビと甘々ホットミルクに口をつけるレイラに、十八豪が言った。
「こいつが私利私欲で動くとでも思ってんのかい? 倉庫で何かが起きたことは聞いちゃいるよ、おおかた裏で何かを察知して動いてたんだろうに、少しはこいつを信用してやったほうがいいよレイラ」
すいません氷結女帝。
思いっきり私利私欲で動いてました。
まあ、レイラを助けるためでもあるんだけどね。
「……私利私欲の塊でもあると思うだけど……?」
「……それでもあれだよ、誰かのためとか、仲間のためには力の限りを尽くす男だよ、自分に力がなくっても必死で考えてね。前のゲームでもそう言うことあったけど……えっと、確かに私利私欲の塊ではあるけどそれはあくまで武術というかなんというかだね……」
もういいよ、自分でもわかってるから、無理やりフォローしようとしなくていい。
尻すぼみになっていく十八豪のセリフを聞き流して、俺はレイラの目を改めて見据えると理由を話す。
「今回の件、利用させてもらった。話すのが遅れたのはすまない」
「いいのよ。私のカッカしちゃってごめんなさい。頭に血がのぼるとすぐこうなのよね」
正真正銘の姉御肌は、すぐカッとしてすぐシュンとする。
江戸っ子気質なのだろうか、江戸っ子気質知らないけど、近いんじゃないの?
「村議会の連中が俺を嗅ぎ回っていたから、こっちから出向いたんだ」
そんな言葉を皮切りに、俺はレイラと隣に座る十八豪に向かって村議会になぜ支援したのかを話す。
うむ、ニシトモや第一生産組のメンバーを通すと余計な警戒心を抱くから、テージシティという遠くの街の貴族お抱え商人役をトンスキオーネにやってもらい、ニシトモを少し悪人に仕立てあげることで上手く村議会の中でも発言権が強そうなやつに取り入った話だな。
発言権が強そうな、というか。
馬鹿二人、と言ったほうがピッタリだ。
「まんまと信じてくれたぞ。みんなの資材が入った俺の倉庫に手出しはされない。トンスキオーネを使ってテージシティから物資を運ぶが、その裏で取りまとめてるのはニシトモだから安心していい」
「……諸悪の根源って言葉がピッタリね」
俺の話を聞いたレイラは顔をしかめてそう言っていた。
予想よりもひどかったのだろうか……そうかなあ。
隣の氷結女帝は笑っているんだが?
「くくく……いや、あんた最高だよまったく……」
「ふむ」
「ふむじゃないが!」
「落ち着けレイラ」
レイラにホットミルクを飲むように進めると、彼女は一口飲んだ後ため息をつく。
「あんたとニシトモたちがマフィア潰しのクエストをやっていたのは知ってるけど、そのマフィアをここに連れてきてどうするのよ……」
「それについては問題ない」
トンスキオーネは基本的にテージシティの裏対策に常駐しなきゃいけないからな。
まあしょっちゅう船使って焼肉屋に来ているみたいだが、居座ることはないだろう。
そういえばトンスキオーネが船でテージシティへと戻る際、専用の船を寄越せとか言っていたな。
考えてやらんでもないが、船を作るにはお金がいっぱい必要になる。
もっとその贅肉を絞るくらい働けトンスキオーネ。
「でもバンドーレファミリーっていうのはこの街にいるんでしょう? 大丈夫なNPCなの?」
「大きな借りができるから大丈夫だ」
独裁女ファシミから逃した恩はでかいだろう。
先手を打ってこの街に読んでいたトンスキオーネはいい仕事をしている。
ファシミストロファミリーを切ってこちらにつくということは、テージシティでは活動できなることに等しいとバンドーレは言っていた。
だから、この第一拠点にファミリーを移住させるのがバンドーレの第一条件でもある。
「レイラは、テンバータウンに接収させるつもりもあったんだろう?」
「……そうね」
師匠であるエドワルドが管理するテンバータウンの拡大を手伝ってるくらいだからな、ゆくゆくは面倒な第一拠点の責任はエドワルドに移してあとは気ままにプレイするつもりなんだろうなと、なんとなくそんな予感がしていた。
「村議会とかあってもいいけど、実際統括するのとかさせるのは嫌だから、ある程度の自由をもらってあとは師匠と私の弟子についてるNPCに譲ろうと思ってたのよね」
せっかくのプレイヤーズ拠点なわけだが、過程としてプレイヤーが作り上げたという歴史は残り続けるから、この第一拠点のプレイヤーの自由度は失われないものだとレイラは考えている。
「お遊びロールプレイを押し付けられるのは勘弁ね。そして責任も」
「同意だ」
最近、ここまでこれたのはみなさんのおかげですとしかあとがきしてない気がします。
いや、本当にそうなんですよ……おかげですよ。
あとがき小話ですが、
奄美大島完熟マンゴーをもらって食べてみたんですが、
マンゴーってなんかシップみたいな風味があるっていうか。
そんな感じでした。