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 約束の取り付けはすぐにでもしておくものだろう。

 俺はトンスキオーネを連れて村議会を訪ねた。

 呼び出されたセイスは笑顔を作りすぐに俺らを受け入れた。


「テージシティで商売やってるトンスキオーネだ」


「たまたま南方で商談を行なっていたバンドーレという、職業は魔物相手の用心棒だな」


 彼らの自己紹介を聞いたセイスはさらに笑顔を大きくするのであった。

 そりゃそうだろうな。

 支援してくれそうな商人とつないだばかりか、戦力になりそうな職種の人までついてきたのだから。


「なかなかやるじゃないですか」


 シエテはニンマリとした顔つきで、俺の肩を叩いた。

 何様だろうこいつ。

 とにかく、話は早かった。


「ある程度の注文ならば俺から融通できる、ここはローレントの紹介という事で少しお安くしておこう。見積もりを出すのにテージに戻ってからになると一週間ほど時間をいただきたいのだが、いいか?」


「テージシティから戦闘員を連れてくるとなると、そこそこの旅費がかかるんだが、そいつはトンスキオーネ商会の方に持ってもらうことにしてもいいか?」


 矢継ぎ早に条件を突きつけて行く二人。

 さすがマフィア、手が早い。

 戦うことにしか能が無いバンドーレと言っていたが、さすがにボスクラスになると交渉もお手の物。

 話を早く着けつつも、時間を確保するように言葉を紡ぐと。


「ちょっと待っていただきたい、いっぺんにおっしゃられては判断しかねますから」


 たまらずセイスが手を挙げて降参したように顔を振っていた。

 本当に嫌がっているのかと表情に注目していると、ニヤニヤは健在。

 ……この状況も含めて交渉というものを楽しんでいるようだった。

 ゲーム感覚は結構だが、こいつら相手にそんなことやってると骨の髄までしゃぶり尽くされるぞ。


「ふふっ、テージがどこか知らないですが、なかなか旺盛な商売意欲ですな、むふふ」


 シエテが調子に乗っている。


「おや、テージシティを知らないんですかな?」


「いやはや勉強不足で申し訳ないです。よかったらご教授いただけますかな?」


 トンスキオーネは一瞬俺に目配せすると、すぐにセイスに視線を戻した。

 こいつら、アホだ。って目で言ってる気がした。


「テージシティは、ノークとテンバーさらにいくつかの南方の街を統括する辺境伯が直接統括する都市。私は貴族の認可を受けて商売を行なっている者の一人であるということを教えておきましょう」


「……辺境伯? まさか、貴族公認の?」


 頷くトンスキオーネ、嘘は言っていない。

 認可を受けているのはニシトモの商会で、その下で裏方担当をしているにすぎないのだが……。

 その腹と顎の贅肉が妙に堂に入った雰囲気を醸し出しているのか、セイスとシエテはなんの疑いもなく信じていた。


「いやはや、テージシティにも南方からの品物が増え始めてな。これはいい機会だと思い、彼を訪ねて南方にちょくちょく足を運んでいたのだが、今日ここへに来てよかった、ぜひそう思いたい」


「いえいえ、きっとそう思っていただけるでしょう。私どもはこの村を治める評議員、もうすぐこの村も街へと変わりますから、ぜひそうなればもっとこの街で大きく商いをしていただきたい限りでございます」


「ほう……だがしかし、既にかなり発展しているのが見受けられるし、すでに商いも活発的なこの街で、私に参入できる販路があるかどうか」


「村議会の名を使えば、容易いことですよ」


 嘘をつけ!

 ちなみにこの発言はさすがにセイスも予想外だったのか、睨むような視線をシエテに送って黙らせていた。


「容易いかどうかは、トンスキオーネさん次第ですが……私どもも便宜は大いに計らせて頂きますので」


「それはありがたい提案だ。ついでに言うと……」


 トンスキオーネはわざとらしく左右を確認すると、セイスとシエテに近づきコソコソと耳打ちをしていた。


「テージで急激に商売の手を広げている男が、ここの出身だと聞いたんだが……強そうな商人はいるか?」


 セイスとシエテは顔を見合わせると頷きあいながら二人で一緒の名前を口に出した。


「おそらく、ニシトモという商人ではないでしょうか?」


「そう! そのニシトモとか言う奴について詳しく教えていただきたい!」


 共通の敵、と言う認識を村議会に植え付けたのか。

 ニシトモの愚痴になると急激に口が回り出す村議会。


「少々村議会の意向を無視して力をつけていまして、これだと利益の独占となりまして、あまりここに住む人々にいい影響はありませんので、ぜひとも大きく商いをしていただいて。私どもも力を尽くしますので」


「ふむ、実にありがたい提案で。ニシトモとか言う商人は、なかなかの手腕を持つ、どちらが上手か見せてやるにはお互いの協力が必要不可欠になる」


「わかっておりますとも、今回お互いのつながりを重視して助け合いましょう。つきましては……是非テージシティの辺境伯様とお会いしてみたいところで……」


「この取引が成立すれば、私から一つ縁を持とう。では、見積もりは一週間後でいいか?」


「いえ、今すぐにでも話を詰めるべきでしょう。これは村議会の利益にとってまたと無い機会でございますし、ぜひこちらの会議室を使ってご相談のほどを……」


「評議会は前向きですぞ!」


「シエテ、少し黙っていてください」


 トンスキオーネが何かしなくても、適当な商人を立てていれば同じ結果になったかもしれんな。

 もっとも、うまい具合に取り込むことができたのはトンスキオーネの手腕だとしておいてもいい。

 うむ、さすが悪党だ。

 本当に上手。

 俺は無理だぞこう言うの……。

 脅しと拷問なら得意だけどなあ。



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