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 村議会と呼ばれる建物は、二階建ての木造建築である。

 石で基礎を作られて、一段高くなっているので三回建てに見えなくもない。

 レイラの個人所有する村長宅兼ポーション工房とどっこいどっこいの規模だ。

 ノーチェから降りてテイムクリスタルに戻すと、そのままローヴォを連れて石階段を上がった。


 玄関を通ると静かでシックな内装が広がる。

 どこから買ったのだろうか調度品がちょこちょこ置かれて小間使いのNPCみたいなのがせかせか動いていた。


 NPCを雇うほどの余裕はあるみたいだな。

 一人執事服を身につけた白髪の男が俺に気付いて近寄ってきた。


「何用ですかな?」


 訝しむような視線を感じる。

 どこぞの馬の骨とも思えないプレイヤーがきたらそうなるのか?

 それとも村議会に雇われている執事の俺すげぇってか?


 まあどっちでもいいが、執事NPCは白髪オールバックがデフォルトなのか。

 それが一番気になるところ。


「誰でもいい、ローレントが来たと伝えてくれ」


 こういう手合いには敬語も必要ないな。

 なんだかムカつく顔してるし。


 格式的に言えばテージシティのセバスなんかとは大きく違うだろう。

 なんかこう、身にまとうオーラというか。

 それが段違いだ。


 ちなみにセバスの両腕はエリック神父が復活させました。

 ごめんよセバス、両腕一刀両断しちゃったりして。

 まあでも、ちょくちょく失礼なこと言われてたしいいよね。


「ふむ、聞いたことありませんが、一応言付けだけはしておきますのでお引き取りください」


 あれ?

 なぜか追い返される方向性で話を進められたぞ?


「今すぐ呼んでこい」


「主様方は大事な会議の真っ最中でおられます故、追ってご連絡を差し上げたいと思います」


 それでは、と執事は片腕を広げて玄関を指し示す。

 調度品壊して帰ろうかなと思ったら、タイミングよく一人の男性プレイヤーが部屋から出て来た。


「何をしているロシウス、茶菓子の手配を言付けていただろう? 私たちは今、大事な話をしてるんだから」


 偉そうに執事に命令しているところを見ると、村議会プレイヤーか?

 村議員か?


「申し訳御座いません。客人の相手をしていたものですから、すぐに手配します」


「客人?」


 ようやく男の視線がこちらに向いた。

 鑑定でもしているのだろうか、俺をみた男の顔色が変わる。


「ロ、ローレント……ッッ!? ……さん」


 いきなり呼び捨てか、まあ特に気にしてはいないんだけど。

 時間差で敬語つかってさん付けするなら、最初から呼び捨てにしとけよ。


「レイドボス、倒したいらしいな」


「ッ! ……私共が声をかけた方々から聞いたのですな?」


 なんだか言葉遣いがこの世界ゲームのNPCそっくりだ。


「そう」


「グッドタイミングですな。今しがた川の向こうの湿地帯に潜むレイドボス討伐への会議を開いて降りました故、是非ともローレントさんもご参加いただきたい」


 そういう訳で、アレヨアレヨというまに、一つ椅子が追加された会議室へと案内された。

 自分が使える主がかなり謙って俺の相手をしていたからか、ロシウスをいう名の執事NPCは少し真っ青な顔つきをした後、すぐに顔色を平素に戻した。

 そこからはちゃんとしたお客様待遇。

 なかなか良い教育を受けていると思うが、俺の目は誤魔化せない。

 真っ青な顔つきから戻る時、少し恨みが混じった視線を感じた。


 はてさて、単純に恥をかかされたと思って逆恨みでもしているのかな?

 定かではないが、セバスに魔人が乗り移っていた時のことを考慮して、気をつけておこう。


「いやいや、私共の声を聞きつけて、来てくださったローレントさんです。第一拠点を作り上げた最古参の一人でありながら、闘技大会優勝、そして前回のレイドイベントにて最前線でレイドボスエンゴウを討伐した人ですな。お目にかかれて光栄です」


 まばらな拍手が巻き起こる。

 村議会の人数は全部で6人、そのうち二人がログインしておらず四人での会議を行っていたらしい。

 議員以外の物は議員席には座れないルールになっているところがなんとも言い難いところ。


 俺が座るのは来賓席だ。

 六角形の卓の外周を議員席だとしたら、さらにその外周壁際の椅子に座らせられた。


 本当に来賓か?

 押しかけ来賓であることは確かだが、倉庫二階の個室サロンにある物の方が上質に思えた。

 まあ職人が本気で遊んじゃいましたって設備だし、さもありなん。

 この会議室もなかなか頑張ってると思うよ。


「もう一人は斥候役としてレイドボスの発見を手伝っていただきました、盗賊ギルド所属のデリンジャーさんです。ローレントさん程に轟いた名声はありませんが、盗賊ギルド長の直弟子であります故、その信用度と腕は保証します。本日は出席いただきまして誠にお礼申し上げます」


 向かいの来賓席には一人、顔をフードで覆った男がいる。

 顔を伏せているので表情は読めないが、なんとなくただならぬ雰囲気を感じた。

 盗賊ギルドの長から技術を学んだという紹介を預かっていた所を見ると、腕は立つらしい。


「お二方から何かありますか?」


「ない」


「…………」


 議員からの質問に、向かいの男は首を横に振るだけだった。

 顔くらい見せれば良いものの、かなり警戒心が強いやつだな。

 っていうか、一応公の場ってことで来てんだから、フードくらい取れよ。


「では、早速レイドボス討伐の話を進めますか……」


 仕切りたがりの村議員が建前や無駄な言葉が入った口上をベラベラと並べる中、ローヴォの毛並みを撫でながら黙って話を聞く。

 その間向かいのフードは微動だにしない。寝てるんかな。









村議会編です。




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