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 アスポートによって新たに持っているものを倉庫に転移できると言うことを話すと、なんだかんだレイラは納得していた。そのために謎のスペースができていたのね。と。

 だが果たしてそれによってなのかどうかはわからないが、あの時アスポートした大きなガラスケース用のスペースが確保されていることは確かだった。


「ガラスケース?」


 俺の言葉に首をひねるレイラ。


「ケイブセンチピードマザーからドロップした溶解液の毒腺を大きなガラスケースに保管して送ったはずなのだが?」


「……何よそれ。また、恐ろしいものを手に入れたのねあんた」


 恐ろしいどころか、錬金で作られたケースじゃないと溶ける。

 そんな代物だ。


「そんなもん見てないぜ?」


 スペースが空いてるとしたら、そのガラスケースが置く場所が作られたのではないかと言うことで、一応イシマルたちに尋ねてみたのだが、誰も見ていないらしい。


「本当に送ったのか?」


「俺のスキルで送り届けたことは確かだ」


 だったらどこへ消えてしまったのかと言う話になる。

 別の場所に保管されていれば、ただ空きスペースが勝手に作られただけで済むのだが……そんなことはあり得るのだろうか?

 空いてる場所に転移するのはわかるけど、資材が勝手に動きだすだなんて、この倉庫やばいだろ。

 なんだ感がきな臭い、嫌な雰囲気がする。

 こう言う時っておおごとになることが多い、そんな人生を多く生きてきたしな。


「とりあえず見に行ってみるか」


 ミツバシの提案で管理を請け負っているイシマル、ミツバシ、ニシトモ、レイラと共に一度一階の倉庫へと向かうことになった。


「改めて、俺はこの倉庫を見るのが初めてと言うかなんと言うか」


「え? そうだったのか?」


 この規模の大きさになってからは一度も来てないし、中身は勝手に補充してくれるので来る必要がなかった。

 とりあえずアポート、アスポートのストレージから色々と置かれているものを確認して行く。


「……俺らで棚卸しもやったほうがいいか?」


「いや、戦闘での消費だから必要ない。なかったら足すだけじゃないとな」


 流石にそこまでしてもらうと手間がかかる。

 多めにお金と素材を支払ってはいるが、現状でも十分面倒だろうからな。


「で、どうですか?」


「……ないな」


 ストレージの表示から忽然とムカデの毒が消えていた。

 いったいどういうことなのだろうか……。

 レイラの盗難説が一気に濃厚になって来た。


「ってか、盗まれるもんなのか?」


 ミツバシが倉庫の戸締りを確認しながら俺に聞いて来た。

 詳しいことはわからないが、この倉庫に入るには権限がいる関係上不可能だ。

 ホワイトリスト制の倉庫だからな。

 そう言う意味では本当に会員サロンだ。


「ってことは……」


 嫌な予感がみんなの脳裏によぎる中、少し重っ苦しい声でミツバシが言った。


「この中の誰かがとったのか?」


「ちょっと、やめなさいよ」


「そうだぜ、仲間を疑うのはよくねぇぞミツバシ」


「でもなぁ……」


 ミツバシだって疑いたくはないのだろう。

 だがホワイトリストに設定しているのは、俺と関わりの深い第一生産組くらいだ。

 その連中が取るとは思えん。


「……あ」


 全員が沈黙し、気まずい空気が流れる中。

 レイラが何かに気づいたような声をあげた。


「どうした?」


「権限持ちに心当たりがあるわ」


「おお、さすが姉御だぜ! ガハハ!」


「これでみんなを疑わずに済むな」


 イシマルとミツバシが安堵の声を漏らす中、レイラはホワイトリスト以外に権限を持つ者の名前を挙げた。


「村議会よ」


「ああ、なるほど」


「ん? 村議会がなんだってんだ?」


 あいつらか。と額に手を当てて天井を見上げるミツバシと、なんのことかまったくわかってないイシマル。

 話がわかってないイシマルはレイラにどつかれていた。


「いてっ、おい、ローレントもわかってないだろ!」


「あんたは石工屋としてたまに村議会の連中と絡んでるじゃないの!」


「ん……? ああ、あのうるさいやつらか」


 口ぶりから言って、どうやら面倒臭い奴ららしい。


「っていうか俺だってある程度は知っているぞ、レイラのファンだろ?」


「ファンじゃないし!」


 何も怒鳴ることないと思うが、確か最初からレイラとの折り合いは悪かったはず。

 村の名前を決めることでもめにもめていたような。

 それがどうかしたのだろうか。


「まあ、面倒だから好きにさせてたんだけど、最近村にあるプレイヤー私物を村の物にしろってうるさいのよね」


「……私物?」


「そう、特にローレントなんか、いっぱいあるでしょ?」


「……そうか? あるかな?」


 首をひねるとため息をつかれてしまった。

 どうやら、船の一部と放置している生け簀を村の財産として接収する気のようだ。

 そして第一拠点に全く顔を出さない俺を適当に名誉にして放逐するという計画が一部で上がっているらしい。


「そんなことできるのか?」


「できるわけないじゃないの」


 人に自分の私物を奪われるのが何より嫌いなので、奪われないとわかり安心した。

 表向きは運営比に当てるらしいのだが……それはこの拠点を利用するプレイヤーによってまかなえてるんじゃないのだろうか?


「自分らが給金と称してお金を欲しいらしいわよ」


「ええ、レイラはもらってんの?」


 レイラの言葉に呆れた表情でミツバシが質問する。


「上級薬師にその質問は無粋ね。余計な責任は負いたくないからお金はもらってないわよ。自分の本職で日々の活動は可能だし」


 どうやら無給でやってくれているようだった。

 だが、村議会してる物好きなプレイヤーたちは違うようだった。

 薬師の片手間で村長やってるレイラと違って、政の真似事がやりたい物好きプレイヤーたちだ。

 そんな奴らを相手にするなんて面倒だろうな、レイラも。


「で、その村議会の奴らはなんで倉庫に入れるんだ?」


 まだわかってないイシマルにミツバシがもうどうしようもねぇなとばかりに首を横に振りながら簡潔に説明する。


「議会権限だな、なんだかんだレベルが上がったホームモニュメントにはそんな機能がつけられてやがったのさ」







誤字指摘どうもです、あとで修正します。

感想の返事もあとで書きます。




お腹痛い。

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