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おはようございます。8月に入りました。後10日で書籍版でます。

カウントダウンコウシン!


 とりあえず、検証その1。

 どこまで強くなるんだろうか。


 確かに威力は鋭くなって行く。

 早さも、そしてこちらが斬りつけても意に介さない。

 どうやら痛みを感じなくなってきているようだ。

 痛覚を遮断するとなると、さらに狂気に満ちてきたな。


「ウガアアアアア!!!!」


「ふむ」


 踏み込んで、片手剣を振るう。

 コーサーなら倒せているだろうが、俺は無理だ。


 早く鋭くなって行く動きではあるが、線で読める。

 突風と同化するハモンのような早さならば。

 動きを読むのは非常に難しいだろう。

 一度あれを体感すると目の前の男なんぞただのそよ風、微風としか思えん。


「や、やっぱりローレントすげぇ!」


「全部あっさり躱してるぞ!」


「っていうかあの男いったいどうしちまったんだ!?」


「やるねぇあのローブの男」


 そりゃ、相手は片手しかないからな。

 先に斬り落としておいたのだ。


 ってか、ギャラリーが増えてきたな。

 やっぱり少しこの場所は目立つ。

 ええい、早く死ね。


「ガアアアア!」


 突き込んできたところへ、しゃがみ避け。

 転身しながらの後掃腿。


 足元を掬われ、バランスを崩した男の鎧に手をかける。

 そのまま変則的背負い落としに入るのだが、引き込むか?

 いや、投げっぱなしにしてやれ。


「あらま、ちょっと投げが雑になりましたね」


「どういうことですか?」


「柔道では投げ技で頭を怪我しないように、投げ側に持ち手を引くんです。すると──」


「──ふぎゃっ!」


 ぽんっとツクヨイがインナー丸見えになりながら石畳の街道の上に投げられた。

 素人がいきなりやられるとびっくりして目が回るだろう。

 案の定、受け身すら取れてないが、ダメージは街中なので入らないからよしとした。


「このように、後頭部を打たずに済むでしょう?」


「……モナカさん、二度とやらないでください」


 しれっとした笑顔で「はいはい」と頷いたモナカは、それを踏まえた上で俺の投げ技が雑だと言う。


「あれでは怪我をしてしまいますよ」


 片腕でまともに受身が取れず、顔面から地面に激突した男は、顔面崩壊並みの欠損ペナルティを受けながらも、必死に俺に食らいつこうとする男に対してモナカは人差し指を立てながら教授しようとしているのだが……。


「でも試合じゃなくて決闘なので、ダメージ大きい方がいいですよね?」


「……そうでした☆」


 ツクヨイに真顔でそう言われて一人で納得していた。

 そう、これは試合ではなく殺し合い。

 そっちの方の死合いなのだよ。


 ツクヨイにもデフォルトで決闘の本来の意味が伝わっているようで安心だ。

 さすがは妹弟子、俺も鼻が高い。


 いかに効率よく相手にダメージを与えるか。

 それが戦いの常である。


「投げられ損じゃないですかぁっ!」


「ま、まあまあ、落ち着いてくださいツクヨイさんってば」


 さてそんな問答を繰り広げているうちに。

 目の前の男に変化が現れた。

 小さなダメージを蓄積させていたのだが各部に異常が出始めている。


「グ、グガッ……」


 まるで生まれたての子鹿だな。

 全力疾走のキリンが急死するように、急激な負荷を身体に与えたらこうなるに決まってるだろうに。

 血が止まらなくなり、そして軋んでいた骨が徐々に崩壊すると言うか。バキバキだ。


「けっけひひひぃぃい!! い、いてぇっ、いてぇよっ」


 痛覚が元に戻ったのか、崩れ落ちた男が狂いそうな目で俺を見ていた。


「……痛覚切れば痛くないんじゃない?」


 特にかける言葉が見つからなかった俺はそんなことを言うしかなかった。

 いや、無様すぎる。

 勝手に挑んで、勝手に自滅して。


「その手があった! ……へ? せ、設定できない、い、いったい──」


 間抜けな顔をしてなんとか視線で仮装ウィンドウを操作して行く男。

 便利だよな、指使わなくても意思でできるって。


 だが、どう言うわけか痛覚設定が全部マックスになってしまっているようだった。

 恐ろしいな、まさか書いてないけど強制的に痛覚マックスになるの?


 さらに不幸は続く。

 痛みも忘れて慌てふためく男にタイムリミットが訪れる。

 そう、デスタイムです。


「お、おい……な、なんだよこれ……!?」


 インプクリスタルから出てきたインプが男の周りを飛び回る。

 小さな表情に凶悪な笑みを浮かべて、さも楽しそうに男の周りを飛び回るインプは「ブーッ」と罰ゲームのような音を響かせながら男の口に入って行く。


「もが……ッッ!? ……ッッ!? ッ!?!?」


 ──そして爆発した。


「うおっ」


 最近多いな!

 爆発オチ!

 ケイブスタブの時もそうだったような気がする。

 木っ端微塵になった後、決闘での勝利を伝えるインフォメーションが届く。


「は?」


「ば、爆発したんだけど……」


「ど、どういうこと?」


「…………」


 わけのわからん展開に静まり返ったギャラリーのうち一人が、ぽつりと呟いた。


「ま、魔王だ……あのスレは間違ってなかったんだ……」


 え?

 魔王?

 魔人の上位種か何かか!?

 どこだ、どこにいる!?


「やばい、逆らったら爆破される……」


「相手を不幸にするんだよな……?」


「黒い魔物を従えてるって、マジかよ……」


 なんだそれ?

 異様なほど俺に似ている敵だな。


 キョロキョロとしているとツクヨイが歩いて来て俺のローブを引っ張った。


「……気づいてないんですか? マジですか?」


「なにがだ」


 そう答えるとツクヨイは大きくため息をついて俺の腕を引っ張って歩いて行く。


「お、おい」


「……魔王って、ローレントさんのことですよ?」


「え?」


 初耳なんだけど。


「おやおや、美男子さんは素晴らしい二つ名をお持ちのようですね」


 二つ名?

 二人してわけのわからんことを言わないでほしい。


 だが、言われてみれば……。

 周りの俺を見る視線がすごくおかしい。


 なんかこう、畏怖というか。

 あんまり人を怖がらせるのは趣味じゃないんだが、周りが勝手に怖がっているようなそんな気がする。


「お、おい見るな」


「なんでだよ、スクショ撮るチャンスだろ?」


「ばか、パパラッチしようとした二人が……金髪の闇に……」


「……あ、あの……伝説スレになった……」


「そうだ……変な対応すると、おまえも爆発しちまう」


「わ、わかったぜ……ゴクリ……な、ならさっさとズラがろうぜ……」


 そんなことを口々に、決闘前までの熱量とは打って変わって急激に冷めて引いて行く人々。


「はは、なんだこれ」


 俺は少しばかりのショックを受けながら、ツクヨイとモナカに引っ張られて第一生産拠点まで戻ることになった。







とらのあなから特典SSいただけるそうで。

活動報告でその旨を綴ってます。

ちょっぴりえっちなレイラの絵あります。

だから次の更新でレイラでます。






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