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「お帰りなさいお二人とも、おつかれさまです」
ツクヨイとともに元の場所へ戻る。
戻り先の指定はここに来る前、フレンドリストに追加したばかりのモナカの場所だった。
視認範囲はそのまま遭難しかねないので待機しているであろうモナカの元まで戻ると、いつも通りのニコニコとした笑顔でお出迎えされた。
「……ど、どういう状況ですか?」
出迎えてくれたモナカを見たツクヨイがそう言葉を漏らす。
それも当然。
ハモンに横四方固めした状態で笑顔で出迎えられてもな?
俺だって困惑してなんと返したらいいかわからなかった。
「ぐぬぉおおおお!!」
「あらあら、その程度じゃ外せませんよ」
「畜生関節が一つもうごかねぇ!」
威勢の良かったハモンがまるで形無し。
スティーブンとの戦いを行なっている最中、二人で仲良く組手を行なったらしい。
そして、ハモンはまんまとモナカに組み伏せられていた。
寝技とか投げ技がどうにも苦手らしいしな。
だがまあ、魔物相手にしてたら投げ技とか普通しないか。
「その様子だと、どうやら無事スキルをゲットできたみたいだな」
「ああ」
寝技で言われても格好がつかない。締まりが悪い。
だがとりあえずそこは触れずに返事をしておく。
そこそこ制限がきついが、街への移動は一時間に一回、行ったことのある場所へ迎える。
同じように一時間に一回は相手の裏をついた攻撃ができる。
なかなか凶悪なスキルだと思わないか?
スティーブンみたいにスパスパ自由に転移できるわけではないが、いつかそれも可能になるのだろうか。
非常に楽しみだ。
だがしかし、エリア自体はテレポートを取得してから赴いた場所でないと反映されていない。
テンバータウンは転移可能だが、ノーク、テージ、第一拠点は転移不可能だった。
当然ながらアラドもそう。
そういえば王都もなんだかんだ行ってなかったなぁ。
──ブルッ。
確か王都へ逃げようとしたら厄介な女に捕まったんだよな。
思わず記憶が脳裏に浮かび身震いしてしまった。
「どうしました?」
「いや、なんでもない」
さり気無く手を握ろうとして来るツクヨイを振り払う。
「兄妹弟子なんですから、当たり前ですよ?」
「……嘘だろおい」
真顔でそう言われてしまうと、果たしてそんなものなのかと信じてしまいそうだ。
うちの門下生はトモガラのほかに男ばっかりだからな。
妹弟子の面倒とはこんなところまで見なきゃならんのは、少し面倒だと感じる。
まあ、それも兄弟子の責務なのか?
「……くくく、これで街に戻るや否や、待ち構えているフレンドのみなさんの反応はどうなることでしょかね? くくく、我ながらぶらぁっく。さすがぶらっくぷれいやぁの名を冠する者でしょう、ぐへへへ」
こ、怖い。
最近この子怖いよ。
「モナカ! 頼むからそろそろ離してくれ! 俺が悪かった!」
「まあまあ、ローレントさんが引き分けた御仁に勝ちました。これで私が最強ですかね?」
「……ちくしょう、そういやこいつ闘志持ってるから魔核を最初から使っときゃよかったぜ!」
嘆くハモン。
そしてモナカから何やら聞き捨てならない言葉が聞こえたのだが……。
「誰が最強だって──」
「うわぁ……痛そう……」
次から次になんなんだ、後ろを振り返れば転移してきたスティーブンが杖を持っていた。
だから、ノーモーションで後ろから殴るな。
師匠の杖には殺気がないから気づきにくい。
俺を殺す気で来ていれば、コンマ一秒でもビンビン気配を感じるのになあ。
っていうかツクヨイ、有事の際に咄嗟に動けないから離してほしい。
「何をしておる、もどるぞ」
その言葉とともに、俺たちは全員でテンバータウンへと戻された。
スティーブンとハモンは、それから何やら色々やるべきことがあると言って、すぐにまたどこかへ転移してしまうそうだった。
「ローレント、くれくれも気を抜くでないぞ」
「心得てます」
「そういえば、いつぞやアラドでちとやりすぎたことがあったじゃろ? パトリシアとその弟子ラパトーラがお主に会いたがっとるようじゃから、是非とも王都へ行った際、出向いてみると良い」
「……それはさすがに……」
散々ボコボコにした相手だぞ?
会ってなんになるんだ?
「っていうかアラドじゃないんですか?」
「お主が家をぶんどり売っぱらってからは王都にいる二極の魔法使いの元へ身を寄せておる」
農耕都市アラドで戦った記憶は鮮明だ。
めちゃくちゃバカにされた記憶があるからな。
「とにかく会ってからのお楽しみじゃ、悪いことにはならんじゃろう」
「はあ……」
「それではさらば」
スティーブンはそれだけ言うと、俺たちに行き先も告げずにハモンとともに目の前から転移して消えた。
そこはかとなく何かの思惑を感じるが、まあアラドへ出向いた際は会ってやろう。
「……誰ですか、パトリシアにラパトーラって。女の子の名前ですか?」
「それは私も気になりますね」
「モナカはさすがに掴まないでくれ、投げられたらたまらん」
ツクヨイが俺の右腕を抱いている以上、左腕を持つモナカに小手返しされたらさすがに返し技できない。
テンバータウンの公園で無様な姿を晒すだけだ。
ちなみに魔人がいない状況の街は安全。
武器による攻撃などは不可能なのだが、ダメージが入らないだけで小突いたり投げ飛ばしたりは可能。
「ぴっ? さすがにそんなに節操なしじゃないですが……☆」
さりとて武人、いつ血が滾るかわからんもんだ。
「俺とツクヨイの弟子仲間に当たるNPCだ。そこまで強くないが、ツクヨイよりは強いんじゃないかな?」
「むむむ、そんな人がなぜローレントさんに会いたがってるんですか!」
し、知らんよそんなもの……。
なんでそんなに怒ってるのかわからないが、とにかく騒いでもあれだろう。
人目につくからちょっと移動したい。
できればスティーブンの家で飯でも食べたいんだが……。
「おいこらてめぇローレントだろぉっ!!! ちょっと面貸せやぁ!!! あんまり調子こいてっとやっちまうぞ!?」
……タイミング最悪だ。
知らん男が喋りかけて来た。
雪山編終わりました。
掲示板回やろうとしてるんですが、ベタがき故、次への引きで適当に話をきっているためなかなか掲示板回できませんでした。
なので次掲示板回です。
無理やりやります。
掲示板回諸々放置してたりしたんで、結構前の部分からになります。
なので二回連続掲示板回になりそうです。
ひえええ。
ガンストとかこの掲示板回くらいでしか出せませんしね。
っていうか満を辞して掲示板から本編に出て来たキャラでもありますなあ。
ドラ○エ楽し〜!