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「百年早いのう」


「なら百年たちました」


 奪ったスキルブックを転移魔法で奪い返されたので、お返しのアポートで奪い取る。


「……なんじゃその屁理屈……」


 本来人のアイテムは奪うことができない。

 生産解体でもない相手に優先権があるドロップアイテムも奪えない。

 そんな性質を持つ転移魔法スキルだが、スキルブックは譲渡可能の浮きポジアイテムと化したようでアポート合戦になった。


「しつこいのう」


 そんな問答をしながら滑空をやめて垂直落下しながらスキルブックを奪い合う。

 先に始めたのはどっちか!

 これが転移系スキルを持つ魔法職の戦いである。

 テレポートがあるぶん一歩スティーブンが有利だ。


「くっ!」


「ノータイムテレポで杖撃しとるんじゃが、よく避けれるのう」


 本来ならば迎撃まで可能だが、空中にいる分動きが制限されてしまう。

 ツクヨイもいるのでなかなか厳しい。

 防戦一方か。


「ならば──」


「ふぇ!?」


 ツクヨイ抱っこ状態で一度石柱をストレージから転移させて着地する。

 そして飛び蹴り。


「ちょちょっ!」


 慌てるツクヨイなんか関係ない。

 とにかく師匠相手に手加減するのも弟子としてはおこがましい話だ。


「本気で取りに行かせていただく」


「容赦ないのう」


 俺が背中に差していた六尺棒を手に構えたのを見て、スティーブンも本気で杖を構え始める。

 空蹴からの殴打撃。


「空中で力が乗ると思っとるんか?」


「乗りますとも」


 右手に持ち背中に回す、そして左肘で抑え溜めを作りながら解放。

 自分の身体を起点に取り回しができなければ、懐に入ってきた手合いに対処できないだろう。

 俺が悪鬼ノ刀をチョイスしなかった理由がそこだ。

 溜め攻撃ができないからな。

 しなる六尺棒が弧を描いて俺を支点反時計回り。

 スラィーブンに飛来する。


「ほっ」


 テレポで躱すのはずるい。

 後ろを取られ、杖で後頭部を殴りにかかってきたので、そのまま六尺棒と一緒に周り胴回し蹴り。

 空中胴回し蹴りだ。


「その格闘センス、やはり恐ろしい奴じゃな。猫かぶりめ」


「あ、やっぱりそう思います? 猫かぶってましたよね? ローレントさん」


「……」


「いたっ!?」


 ごめん、手が滑って六尺棒が当たっちゃった。


「じゃが──」


 スキルブックを懐に入れてスティーブンは俺の目の前から姿を消した。

 そしてどうしようもない上方に位置をとって俺を蹴る。


「うっ」


 このジジイ元気だな……。

 一緒に落ちていた石柱を呼び戻し着地。

 改めて上を向くと、すでにスティーブンはいなかった。


 そして、


「ふむ、まだまだじゃ」


 後ろから首根っこを掴まれた。

 190を超える体躯、手も相応にでかい。

 その辺の戦士ならば素手で倒してしまうほどの圧力。

 やはり魔術師、俺の今まで感じたことのない、計り知れない強さを感じる。


「こっちのセリフです」


「ほ?」


 掴んだら、こっちのものだ。

 俺が魔物相手に何度接近戦で組み打ちを使ってきたと思っている。


「一緒に地上へ落ちましょうか? 師匠」


「ほう……まさか相打ち狙いと?」


 相打ち狙いではない、この状況の安全圏がそこにあるからだ。

 テレポ=トで安全に窮地を逃れられるスティーブンの側が唯一の安全地帯。

 素早く腕を返し首を掴んでいた彼の手から逃れると、そのまま後ろに回り込む。


「あ、あの……私も地味に自爆の巻き添え食らってるんですが……むぎゅっ」


 ツクヨイを押しつぶす形になるが、スティーブンに身体を密着させて、後ろから手を回し襟と一緒にヒゲを掴む。

 どうだ、これで逃れられない。

 服だけだと変わり身の術とかそんな感じの手を使われたらかなわん。

 だから念のためその大事そうなヒゲをしっかり握っておくのだ。


 大事に育てた髭を掴まれたらたまらんか? 師匠。


「……甘いのう。じゃがテレポートの有用性を今回でよく知ることができたじゃろう。ま、わしのテレポは一味違うがな──」


「むっ!?」


 スティーブンは懐からナイフを取り出すと、自慢の白髭を躊躇せずに断ち切った。

 そして驚く俺を放置して姿をパッと転移させた。


「え!? 師匠! 私も連れて行ってくださいよ!」


「ならん、弟子同士仲良く窮地を乗り越えてみせろ」


 スティーブンはツクヨイの叫びを聞き流しながら遠くへと転移して、今度は傍観を決め込むつもりらしい。


「いやああああ!! 絶対痛いですよね!? 下は絶対痛いですよね!?」


 今度こそ手立てはないと錯覚して、再び地面に激突する想像をしたツクヨイは俺の胸を小さな拳でポコポコ叩き、頭を打ちつけながら錯乱している。


 ……うるさいな。


「落ち着かれよツクヨイ。お主の兄弟子は、まだ諦めておらんようじゃぞ」


「へ?」


 その通り、俺の手元にはスティーブンが持っていたスキルブックが掠め取られている。

 スティーブンの側が安全地帯であるのは、手立てが無い状況時のみ。

 だが、テレポートのスキルを一度奪い取って覚えてしまえば、どうとでもなるんだ。


「可愛げのない弟子じゃな」


 そう言いながらニヤリと笑うスティーブン。

 奪い返しにこないあたり合格らしい。

 さっさとスキルブックを使う。




【テレポート(制限版)】Lv-

視認した範囲に転移する(連続使用不可、再使用待機時間1時間)

指定された街への転移(詠唱時間5分、再使用待機時間1時間)

フレンドリストから任意の人物の場所へ転移(詠唱時間5分、再使用待機時間24時間)




 ………………どうすっかなぁ……これ。


「どうしました?」


「詠唱五分」


「はぇっ!?」


 五分詠唱してる間で地面に激突してしまうこと必至。


「ど、どうするんですか〜! どうするんですか〜!!」


 俺の胸板を再び叩き、叩きつけるツクヨイ。

 そして静かになったと思ったら、アイテムボックスから一つのスクロールを取り出した。


「……これは貸しですよ! コスト高いんですからね!」


「ん? なんだ?」


 渡されたのは、後転詠唱のスクロールだった。

 まさに虎の子のスクロール。


「いいのか?」


「師匠は二人で協力しろと言ってましたしね」


「……いい子だ、ツクヨイ」


 初めていい女だと思ってしまったぜ。

 テレポートの際、ツクヨイを万が一にでも置いてけぼりにしないように強く抱きしめると、スクロールを起動しスキルを使用する。


「──テレポート」






ついに、テレポートゲットです。

制限付きですが、素晴らしい効果です。

スティーブンが使ってるのはテレポートですが、テレポートのさらに上位。




テレポートの表記を一部変更。

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