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おはようございます。今日もお仕事がんばってください。!


 雪山の高所まで来ると、空気も薄く肌に刺すような寒さを持つ。

 いったいどれくらいの高さまで飛ばされたんだろうか。

 視線だけ動かして確認すると、ゆるいカーブを描いた層の分かれ目が見えた。

 それだけ高所にいるってことを察する。


 なんだろうこのゲーム、プレイヤーに宇宙にでも行かせる気か?

 どこまで作り込んでいるんだろうか。


「いやああああああああああああああ!!!!!!」


 真っ青な顔をしながらスカートを押さえて泣き叫ぶぶらっくぷれいやぁが五メートルほど先にいた。

 どうにかなるはずもないのに、自分の武器である杖にしがみついている。


「ツクヨイ!」


「ロ、ローレントさん!」


 目に大粒の涙をためながら、必死で俺に手を伸ばすツクヨイ。


「ツクヨイ!」


 空から落ちた場合の解決策その壱だ。

 ローブを使え。

 俺はストレージから予備のローブを出すとさっさと身につけて端を足首に結びつけた。

 この時、下手に身体を伸ばしているとローブが風を受けて錐揉みする可能性がある。

 できるだけ身体を丸めてさっさと足首にローブの端を結べ。


「両足に結んだらローブの左右を持って大きく身体をひらけ!」


 簡易番ウィングスーツだな。

 今の俺はモモンガ。


「──一瞬でもドラマチックな妄想した私が馬鹿でした!!!」


 な、なんのことをいっとるんだ?

 良いからさっさとローブをパラシュートがわりにでもなんでも使えよ。

 死ぬぞ?


「もういいです! もう死んでやります! ああああああーーー!!!」


「ったく……」


「ふぇっ!?」


 身体をひねって切り返すと、ツクヨイの空蹴を使いツクヨイの方に飛ぶ。

 そして離さないように抱きしめてやる。


「飛ぶから、離すなよ?」


「………………はぃ」


 胸に顔を押し付けると飛びづらい。

 とりあえず滑空体制になりながら、スティーブンを探す。


「ほっほ、なかなか面白いことを考えるのう。そして弟子二人が力を合わせて何よりじゃ」


 スティーブンは逆さまになりながらまっすぐ落ちて来た。

 テレポートで高度をコントロールしながら滑空する俺に距離を詰めて来ている。


「師匠、ツクヨイは関係ない」


「たとえ闇属性魔法使いだとしても、わしの弟子なのじゃからこういう場面に慣れてもらわんとな」


「また無茶苦茶な……」


 俺じゃなかったら相当な恐怖を感じるだろうな。

 いつかこういう時が来ると思って、対策を練っていた。

 スティーブンに勝つには、初手でこの超高所転移をどうにかしなければならない。

 ウィングスーツのパクリもあるが、そのほかにも他所への迷惑を配慮しなければ、石柱転移で飛び移りしながら徐々に高度を下げていく事も考えていた。


「……これって今は滑空できてますけど、着地どうするんですか?」


 俺にしがみつくツクヨイがそんな言葉を漏らした。

 …………。


「……受け身」


 ギリギリ擦り切り一杯で着地ができるはずだ。

 下は雪原、雪が深い場所を探してクッションにすれば。


「できるかー!!!!」


「多分できるって」


「一緒にするなー!!!」


 ……グズン。

 そんなに否定しなくても良いと思う。


「よし、では主らに一つずつスキルを伝授しよう」


「師匠こんな時に限ってですか!?」


 ツクヨイ必死の叫び。

 俺も同意せざるを得ないな、それには。


「そうじゃ、とりあえずツクヨイは闇属性の空間魔法じゃったのう……これじゃ」


 空中でのスキルブックによるスキル伝授。

 技術は盗め、もしくは誰にも知られぬところで継承されるというが……。

 まさかこんな超高所でやられるとは俺も想像してなかった。


「シャドーホール……?」


「そうじゃ」


 なんだそれは?

 シャドーホール?

 影穴?


「ツクヨイ、主には初めてスキルを渡すが、これは初歩の初歩であるスキル。主の兄弟子であるローレントも地道にスキルを成長させてきたのじゃ、お主も同じように道を辿れ。ダークサークルと組み合わせて使うが良い」


「は、はひ!」


 ツクヨイの説明を聞くと、どうやら直径50センチ程度の影と同じ色の穴を出現させるスキルらしい。

 空中には出すことができず、何かに貼り付けるようにしてじゃないと出せない。

 そしてレベルによって穴の大きさ、深さが一メートルにまで広がっていくとのこと。

 ダークサークルと組み合わせることのみ、自分の周囲を落とし穴にできるらしい。


「物足りぬかもしれぬが、今なら早く育てることも可能じゃろう。マックスボーナスは位置制限解除と無詠唱、それにシャドーホール内にアイテムをある程度放っておける」


 ……俺にはスキルを詳しく教えてくれないくせに。

 ツクヨイにはずいぶんと親切じゃないか。


「なんじゃ? 不満か?」


「いえ……」


「師弟クエストの賜物じゃ。良き弟子を持ってわしは最高にハッピーじゃよ」


 それは俺が不良弟子だと言ってるようなもんか?

 誰が不良か。

 俺ほどに師匠を尊敬している弟子はいないだろうに。

 なにをいうとるか。


「大丈夫です、ローレントさんの代わりに私が精一杯弟子します!」


「……なにが大丈夫なんだ?」


 意味不明は頑張る発言をしたツクヨイはさっそくスキルを試しているようで、地面認識された俺の胸にシャドーホールを貼り付けて「ほおお、なんか不思議な感覚」と声を漏らしていた。


 ……やめろっつーに。


「してローレント」


「はい」


 次は俺の番か……。












ツクヨイ「ふがふがふがふがふが」


ローレント「やめろっつーに」


ツクヨイ「ふんがぁ」


スティーブン「まともに話をきかんか」




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