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おはようございます、今日もお仕事頑張ってください!


 雪が冷たい、だがそれ以上に身体はたぎっている。

 いささかこの体勢でそんなことを思うのは風紀上問題があるかもしれないが、しのごのいっちゃいられない。


 ローブを掴んで空中蹴りを放ってきたハモンとともにそのまま雪原に転げ蹴りの威力を無効化する。

 さらにローブを顔にかけて視野を奪い、そのままハモンの道着みたいな魔法職装備の襟を掴み締めにかかる。

 背を向けての投身なので、そのまま後転で馬乗りへと転身し、マウントポジションを得てからはもう好き放題なのだが、その前にハモンは身体を捩って抜け出そうとする。


「ああ、抜け出しちゃいます! せっかく首を絞めてたのに!」


「大丈夫ですよ、亀状態になったとしても、この戦いは柔道じゃありませんからね」


 その通りだモナカ。

 待てがかかることは多分ないだろう。

 戦いを見ているスティーブンが強制的に戦いを中断させにくる場合も考えられるが、ちらっと気を配ると黙ってパイプを燻らせて見ているだけだった。


「うおおお!」


 後頭部に手を当てて守りながら、俺を背負って無理やり立ち上がろうとするハモン。

 この距離じゃ頚椎打ちしてもろくにダメージが乗らないし、下手したら反撃を受ける可能性がある。

 最大出力のエナジーブラストを叩き込んでもいいのだが、ハモンがまだスキルを使用していないので俺も使用しない。根比べだ。


「軽いぜローレント!」


 ハモンは俺を背負って容易に立ち上がった。

 身体能力差的に言えばハモンに若干優位性があるな。

 レベル差もさることながら、魔闘というスキルを持ち味にした近接魔法職だ。

 なりたての俺とは身体能力の隠しステータスとやらが違うのか。


 ならば──。


「ぐぬっ!?」


 子泣き爺のように背中にしがみつき、ローブを翻して自分の身体ごとハモンの両腕を拘束する。

 俺は後ろから襟を使い大きく締め上げ後ろに体重をかける。

 下は雪原。

 潰されようが痛くない。

 逆に中途半端なことをするとさらに締めがきつく食い込むぞ。


「──ぬぁああああ!!!!」


「俺のローブが……っ」


 この野郎、魔闘のスキルを使い風を纏うと俺のローブを無理やりビリビリに引き裂きやがった。

 そういえば風属性魔法使いでもあったな、スピードアップだっけ?

 シュバッととんでもないスピードで俺から距離を取るハモンを見ると、かまいたちのような物を纏って構えていた。


「やぶねぇ、やっぱスキルなしじゃステファンが言ってた通りとんでもねぇ化け物だぜこいつら」


「あくまでスキル無しじゃとのう、じゃがわしらにはスキルがある」


「けっ、先に使っちまったからカッコ悪いぜ」


 締め後の残る首後をさすりながら、ハモンは少し苦い顔をしながら言葉を続ける。


「魔闘使ってみろよ。もう使いこなせてんだろ? 無属性の魔闘は効果が地味だからあまり選ぶ奴はいないが、火属性より威力に特化した優れものだぜ? よし、おまえの魔闘を俺に見せろ。ほら、──かかってこいよ?」


 挑発するハモンの言葉とともに、魔闘オンリーを使った第二ラウンドがスタートした。

 魔闘を使用し、大きく踏み込む。

 風属性は攻撃速度の上昇。

 単純に素手での戦闘はまさに迅速。


「ふむ」


 自然体に構える俺に対し、撹乱するように雪原を動き回るハモン。

 森ではないぶん動き自体は読み易い。

 戦闘スタイルとしてはヒットアンドアウェイを使ってくるはず。

 ならば構えはこれだな、


「──無双構え」


 一切の防御を捨てて、ただ攻撃一点のみに集中する。


「以前は隙だらけに思えたが、隙だらけのように見せかけて、一点の隙もない。相変わらず恐ろしい」


 戦いながらお互いに初邂逅の時を思い出しているようだ。

 あの時はギリギリスティーブンに助けられた。

 魔闘すら持たなかったからな。


「確か、右目は義眼だったな」


「それがどうした? それを言ってどうなる?」


「あえて右目の死角は狙わんことにしよう」


「──ふざけやがって」


 ニヤリと笑ってそう言ってやると、ハモンはざわっと己の内の気を、魔力を、昂らせて俺の目の前から消えた。

 そして右後方に現れ、消えた。

 無双構えのまま、死角を取りに来たハモンに正対すると、再び消えてまた後方に姿を表す。


 最大出力、最大速度というわけか。

 いつでも死角をとって俺を倒せるとで言っているのだろうか。

 上等、上等、上等。

 もうどこを向いても死角を取られるなら、いっそ振り返るのもやめちまおう。


「これで仕舞いだな……」


 正面にハモンの気配。

 わざわざ実力の違いを見せるために正面から来たか。

 もしくは動かなくなった俺のあえて正面を取り、隙を誘発するつもりだったのだろうか。


「──なっ!?」


 それから息を呑む音と驚きの声が聴こえて来た。


「本気の俺を目の前にして、目をつぶるとはつくづく調子に乗りやがって……諦めたのか? 魔闘家やめちまえ! お前にその資格はない!」


 再び背後に気配。

 そして大きく踏み込み、振りかぶり。


 魔力をまとった拳を俺の後頭部に振り下ろす──。








誤字修正しました。

1日2更新がんばります。




↓特設ページにて試し読み80ページ(増量ちう)

↓挿絵が二枚みれるよん(レイラとスティーブンが出演中)




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