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今日もお仕事お疲れ様でした!


「ふむ、やはりそうじゃったかのう」


 モノブロとの一戦、そしてそこから登場した真打を倒したあらましを告げると、スティーブンはパイプから深く煙を吸って、口の中に満たすと大きく吐き出しながら一息ついて言った。


「レイドクラスを引き当てるとは思わんかったがな」


「話を聞いてると、とことん運がいい奴だな」


 到底倒すことは不可能な洞窟の魔物は、どうやら俺とモノブロの戦いに呼応して出現したという見解だった。

 確かに洞窟の地面を凹ませたり、ボコボコにはしたが、それだけで出るとは思わんかった。

 そういう意味で、色々と運が強い。ということだろう。


 運も実力のうちだというが、運に頼るようじゃ武術家として名折れ。

 全ては自分の実力に内包される。

 そう、運を支配してこそ本域なのだ。

 ローヴォよろしく頼むな、これからも。


「妖精化しても魔法スキル使えるし……獣化させてもレイドクラス引き当ててやがるから……無属性魔法使いよ、我はおまえを一生恨む……」


「相当怖かったようじゃのう」


 体操座りしてブツブツつぶやくモノブロ。

 そこまで怖いことしたっけな、と自分の心に聞いてみる。

 ……猿拳は、確かに怖いな。うん。

 狂気だ。

 野生のチンパンジーとか、大人になるとかなり凶暴性を発揮するよね。


 どこかの芸術家の実験でも、人間は開放的な空間では性的欲求か暴力的欲求に走る傾向があったりしたとか。

 確か、時間指定して自分の身体を好きにしていいって芸術作品みたいで。

 最初は抱きしめたり、いろいろなポーズを取らせたりだったらしいが、時間が経つにつれて服を脱がせたり破いたり、ナイフを手に持たせて首に当てさせたり、銃を持たせてこめかみにあてさせたり。

 次第にエスカレートしていく狂気の有様がどうたらこうたらってな。


「どれ……腕試しは……」


 スティーブンがそう言いかけて前に出ようとした時、ハモンが後ろからくるんと跳躍し一歩前にでた。


「俺がやる。見た感じ、魔闘のスキルはレベルマックスみたいだからな」


「ほう、ならば任せよう」


 モナカと愉快に談笑していたかと思えば、いきなり値踏みするような視線になる。

 鋭い目つきと雰囲気は先ほどとは打って変わって武術家のもの。

 山中に住み修行をしてるだけある。

 猛獣のような雰囲気を身にまとっている、例えるならば虎。


「おまえはいいのか?」


「上等」


 モナカとの手合わせの時、やるなら先に俺とだろうというつもりでいた。

 初邂逅時の負け分を俺はまだ返していない。

 この雪山クエストがいったい何のためにあったのかわからんが、おそらく修行は雪山だという適当なノリで決めたのだろう。

 ハモンの修行クエストならばそれも頷けるものだ。


「あら、私はお預けなんですかねぇ?」


「モ、モナカさん。なんだかいきなり空気がピリピリし始めたのに、よく平気ですね」


「一周回って楽しみというものですよ? 今後の勉強になりますからツクヨイさんもしっかり見ていましょう」


「うむ、兄弟子の戦いっぷりをしかと目に焼き付けるのじゃ」


「いや、もう十分焼き付いてるんですけど……」


 げっそりとした表情でツクヨイが呟いたのが戦いの始まりだった。

 俺の視線が彼女に向いた隙を狙って、ハモンが急襲を仕掛ける。


「よそ見してる暇はねぇぞ」


 ハモンの声の方へ眼を向けると、すでにそこにはいなかった。

 だが、気配は追えている。

 いともたやすく音越えし、瞬で頭上を飛び越え後方からの右腕を回転させながら背中の椎骨を狙う。


 ずらされたら終わりだ、現実であれば半身不随待った無し。

 ゲームだと半身不随並みの欠損ペナルティがかかったりするのだろうか?

 そんなことを考えながら背後のハモンに密着するように退歩。


「退歩靠肘」


 避けるでも受けるでもなく、迎撃。

 初戦では手刀やかかと落としを受けてHPをかなり持って行かれたからな、その教訓が生きている。


「うお! 視界外からの攻撃じゃないとやっぱり躱すのか」


 自分の突きの威力にプラスして攻撃を加えているんだが、ハモンはあっさりと突きの軸足を浮かせ威力を後ろに受け流し、俺のローブを掴んでそのまま顔面に蹴りを叩き込む。


 俺を軸に蹴りか、ならば軸をずらしてやれ。

 ハモンの引っ張りに逆らわず倒れこみ、俺たちはそのまま寝技合戦に突入した。


「はわっ!? い、いまどうなったんです!? み、見えてましたけど何が何だか!」


「ツクヨイさん。今のは貴方に一瞬目が向いた美男子さんの視覚的隙をついて、ハモンさんが跳躍し、背後に回り込んでからの頚椎狙いの螺撃を放ったんです」


「するっと躱されてそっくりそのまま上乗せさせてお返しされたみたいじゃがな」


「まあ、ダンディ様もなかなかお詳しいみたいで」


「地味に運営が奴対策にデータかき集めとるからのう……同じような人種が集まって来とるみたいじゃし」


「なるほど☆」


「え、どうやってするっとお返ししたんですか!?」


「うーん、私もあまり詳しくはないんですが……太極拳の退歩と化勁で突きのインパクトの瞬間をズラし、そこに八極拳の鉄山靠と頂肘を合わせたような技を使ってるみたいです……? 美男子さんの武術はあらゆるものを取り入れてひとまとめにしたようなものなので、なかなか例えが見つかりませんねぇ……」


「は、はぇぇ……スケールがよくわからないんですが、とにかく私に釘付けして隙を突かれてしまったなんて、ぶらっくぷれいやぁは罪深いということだけ理解できました」


「貴方もなかなかどうして、相変わらずですね……☆」


 くだらん会話をしとる場合か。

 さて強襲、急襲、奇襲。

 森での戦闘に長けた身のこなしであるハモンに。

 果たして俺の寝技がしのぎきれるかな?







武術技の名前は適当にあるものをくっつけたりしています。

ローレントがハモンの攻撃をずらした時の効果音はヌルッです。


ちなみに椎骨潰しは動けなくなるペナルティが発生します。

が、粉砕ではなくズラしの場合のみ。

自力でぱこっと戻すと時間経過によって回復します。




エリック神父「部位欠損ペナルティ系はお布施をたくさんいただければ私が回復させますよ〜、っていうか教会へお祈りに行くとなんか調子がよくなるっていう設定はどうなったんですかteraさーん?」


私「……(汗」





あとがき小話(読み飛ばしてもよろし!)

ドラクエ予約して楽しみな毎日です。

あ、後ですね、下記の特設ページにて書籍版の試し読みが公開されています。

挿絵二枚見れる大増量みたいです!





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