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おはようございます、今日もお仕事頑張ってください!


「ふむ、赤猿とはなかなかレアな獣化を引いたな。燃えるような心と強さを持つ強気猿と言われるが、近接職だったらかなり重宝される獣化だろう! ぐははは!」


 かなり強い部類の獣化を引いたらしい。

 逆にツクヨイは闇夜に隠れる暗殺タイプの黒猫獣化らしいのだが、暗視を持っている悪魔の前ではただの猫だと辛い現実を突きつけられていた。


「ね、猫耳です!」


 だが、当の本人は三人称視点でのスクリーンショットや動画を撮影してまんざらでもなさげ。

 っていうかモノブロの話を聞いてすらいなかった。


「……くっ、だがそうやって余裕をこいていられるのも今のうちだ! その獣化と妖精化は我を倒さなければ解けない! グハハハ! 不可能だ! そのまま死んでしまえ!」


「──回し受け捻転両拳突き」


「ぐはァーーーーーッッ!!!」


 いつぞやの魔人のごとく、鋭い爪を伸ばして斬りかかってきたディアブロの巨大な腕を回し受けにて身体の外側に受け流し、がら空きになった胴元にそのまま回し受けした腕を外側から内側に絞り込むようにして突き込む。


 防御からの攻撃が流動的に行くための初歩技だな。

 拳にひねりを加えておくとさらにグッドだ。


 大きく吹っ飛んで行くモノブロ。

 洞窟の壁にぶつかってガラガラと崩壊に巻き込まれる。

 うむ、なんだかめちゃくちゃいい調子だぞ。

 久しぶりにリアルの身体の感覚が戻ったみたいだった。


 モノブロの一撃はさほど脅威に感じなかったので、試しに攻撃を加えて見たが思いの外ぶっ飛んでいた。

 うむ、身体能力が格段に上がっているのは素晴らしい。

 身体がまるで近接職のそれだ。


「ん?」


 腕を組んで見ていたトモガラが思い出したかのように言う。


「そういや、少しでも身体の隠しステータス上げるっつってログインしてすぐとログイン後に基礎鍛錬してたな、ゲームの中で、適当な空き地つかって」


「まあ、もちろん現実でもしているが、ゲームの中でもやることはあまり変わらんかった」


 ついつい癖で鍛錬してしまう。

 そして森の中もついついブーストかけずに走り回って見たり、ちょっと険しい山道を大剣背負って歩いて見たりしてるからな、魔法職でも鍛錬すればそれなりに近接頑張れるって証拠だ。

 これはチュートリアルでも師範代が言ってた!


「ば、バカな……なぜこれほどの力が……──ぶっ」


 とりあえずフラフラ立ち上がってくるモノブロの顔面を尻尾で殴った。

 うむ、なかなか使えるな。

 握ってみても力は抜けないし、弱点ではない、むしろ武器。


「なるほど、獣化してもそこそこの割合で強化されちまうのか、こいつの身体能力って」


「うーん体感だとどれくらいかわからんが、獣化によって違うのか? 倍率ってのは」


 尻尾をモノブロの太首に回し瓦礫の山から引きずり出す。


「おい、教えろ」


「ひぶっへぶっ!」


 尻尾で横っ面を二発ほど叩いてやるとモノブロは震える声でこう言った。


「お、おかしい、赤猿でもここまでの倍率はない……い、いったい何が……はっ!」


 そしてモノブロが何かに感づき、そして恐れおののいた。


「ま、まさか、嘘だ! 適当な奴が獣化でレイドクラスを引けるわけがないはずだ!」


 その言葉を聞いて、俺が何の獣化をしてしまったのか察した。

 赤猿ではなくて、炎の猿。

 炎剛エンゴウと呼ばれるレイド級の巨大モンスターの獣化版だ。


「うわっ、相変わらず引き運ガチ勢かよ……」


「そうなのか?」


 まあ、ゴリラ狩りは誰よりもしてると思うけどなあ。

 怪獣大戦争イベントだって見てたし。


「そのムキムキ加減、どっちかって言うとスーパーサ○ヤ人4に思えますけど、まあローレントさんがとんでもねーってことはわかりましたんで早いところこの悪魔さんを蹴散らしてください。そのレイド級ぱわぁーで」


 そうだな、と言いかけたところで。

 急にモノブロが強烈な叫び声をあげた。


「──グルアアアアアア!!!」


 叫び声なんかさっきからずっと聞いてはいたが、今回の雄叫びはその声に強烈な殺気が乗っかっている。

 どうやら今回は、冗談じゃすまなさそうだな。


「くそ! 適当に相手して適当なところで追い返してやろうと思っていたが、これじゃ我が殺されてしまう! 約束が違うぞ無属性魔法使い!」


 そう叫びながら悪魔の翼を大きく広げる。

 すると、洞窟が異様な力でガタガタと震え、軋む音が響く。

 洞窟中の魔力がこの悪魔に集約しているようで、トモガラとモナカが吸い込まれそうになっていた。


「うおお!」


「あらま〜」


 それを黒猫保母さんになりつつあるツクヨイがカバーする。


「身体能力が強化されてるんですよね、この姿って? なかなか面白いですね! ぶらっくぷれいやぁならぬ、しゃどぅぷれいやぁです! 闇夜に紛れる黒猫美少女です!」


「どの口で言ってんだ! ──うおお! 言葉気をつけるから手を離すな!」


「あらあら、ツクヨイさんはジャリガキの扱いに長けてるんですねぇ、お上手」


「だれがジャリガキだって!? ──はい、黙ります、すいません」


 妖精化してからペースを奪われっぱなしのトモガラは、再び汚い言葉を発し、それをツクヨイに叱咤されて押し黙った。

 胸に抱かれて白目を向いている。

 うーん南無三。


「コントはおしまいだ。我も本気で当たらねばおまえらを倒せなそうだからな」


 完全にフルパワーですって感じの一角悪魔モノブロが首をコキコキ鳴らしながら俺の目の前に立つ。


「ずいぶん小さくなったな」


「悪魔の魔力はその存在感を表す。膨大な魔力を垂れ流して思うがままの姿をだったのを一つに集約したのだ」


 最初の巨大な印象とは打って変わって、大分コンパクトに収まってしまったモノブロは裸足で歩きながらそう説明した。

 つまるところ、洞窟全体に垂れ流していた魔力を一片の余分もなく凝縮した形がそれか。

 巨体ゆえにどうやって戦おうか考えていたが、それは杞憂に終わったな。

 同じような体格の方が俺は専門家だ。

 だがしかし、明らかに巨大だった時よりもその身体から感じ得るモノブロの気配は、いつぞやの魔人よりもさらに凶悪なものになっているように感じだ。


「人間を殺す趣味はないが、プレイヤーなら潔く死んで我の自由を保障しろ──ッ!」


 そう言いながら、モノブロは俺に肉薄する。








引き運良すぎ。

レイドクラスの獣化はやばいです。

うーん南無三!

そしてたくさんの感想ありがとうございます!



書籍版特設ページに、AI解析結果と私のインタヴューが掲載されてますよ!




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