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最低八月まで続く書籍化刊行記念更新です。

書籍化作業で更新が止まっていた分まで、二倍の力で頑張ります。


「……くっそー、くだらない茶番に乗せやがって……」


 この悪魔め。と苦悶の表情を作るモノブロ。

 いや、おまえが悪魔だと言ってやりたい。


「中途半端なことするからだぜ、やるときは決めろ。それが悪だろうが」


 イライラがかなり溜まっていたのだろうか、モノブロに向かってそんな文句を言うちんちくりんのトモガラ。

 うーん、どっちかといえば自分の利益のために平気で他人を蹴落としたり、楽しむために親友である俺を嵌めたりするおまえこそ、正真正銘の純粋な悪魔に思える。

 邪気がないだけに、厄介なタイプなのだ、こいつは。


「なにが人質ですか……ただの辱めじゃないですか……」


 いつまでも落ち込むツクヨイ。

 なんと声をかけてやればいいんだろう。


「大丈夫だ、そのまま殺されないだけマシだぞ?」


「住んでる世界が違いすぎます!」


 うーむ、それもそうか?

 だが危険はわりかしすぐそばにでもあると思うんだがな?

 拗ねていないでそろそろ戦いが始まりそうだから援護して欲しいんだけどなあ。


「機嫌直してくれ」


「いやです」


「うーん」


「一回だけなんでも言うこと聞いてくれるなら直します」


「まじで?」


 悩んでいるとそれで許してくれるみたいなのでとりあえず了承しておく。

 一回だけだし、聞ける範囲外の願いをされたら断ればいいしな。


「交渉成立ですよ? 絶対ですよ?」


「構わんからほらたて」


「はぁい」


 そう言ってツクヨイの手を引っ張って立たせる。

 ようやく立ち上がったツクヨイは心機一転気合を入れ直していた。


「元を言えばこの悪魔が中途半端な人質ごっこをしていたからです! 早く倒しましょう!」


「ええ? 君のことを心配していた側なんだが?」


「いいえ! 中途半端にして悪魔よりも恐ろしいローレントさんたちを使う戦法! まさに悪魔の所業! さっさと死になさい! ダークサークル! ダークボール!」


「……ええ、聞いてた話よりも数倍頭逝ってる奴らだな……」


 めちゃくちゃ小声で愚痴ってるが、一応聞こえてるからな?

 だれが頭逝ってるって? ん?


「ぐははは! やる気を出したところで貴様らが勝てるはずがない!」


 小さな声でそう口をこぼしたモノブロは、気を取り直して再び中腰になって叫んだ。

 叫ぶ時のデフォルトなんだろうか?

 確かに丹田に力を入れると大声を出しやすい。

 なかなかにわかっているな、この悪魔。


「絶対勝つんです! 勝って……ぐへへ、ぐふふふ、うへへへへ!!! ──するんです!」


「え? なにするの? こわっ、一番頭おかしい」


 一瞬冷静になったモノブロの隙をついてツクヨイが攻撃を開始した。


「ダークボール喰らえ!」


「くっ!」


 上手い、今の隙をつく技術は感嘆に値するほどのベストタイミングだ。

 先手を取れことでモノブロは防戦一方になる。

 ちんちくりんになったトモガラとモナカに戦闘能力は期待できないので、ここは俺らで相手する必要があるし、初手で完全に不意をつけたのは初めてツクヨイ素晴らしいと思った。


 そのまま俺も跳躍して魔法スキルを使う。

 ツクヨイは定点での援護射撃と支援が得意だからな、その利点は崩さないようにしないと。


「エナジーブラスト」


 接近して洞窟を歩く杖代わりにしていた六尺棒を叩きつける。


「ぐおっ!」


 マックスボーナスがついた防御無視の魔闘に加えて、スペル・インパクトとマジックエッジを付け加えておいたのでなかなかの威力だとは思うが、悪魔のHPはかなりのもので、この初撃の攻撃によって一割も削れなかった。

 ちゃっかり急所を狙っていたが、上手い具合に腕でガードされていたし、やっぱりこの洞窟のボスクラスになると倒すのも容易ではないか、面白くなってきたぞ。


 ちなみに、初撃急所当てによって大きくHPを削る手法。

 闘技大会後、俺の真似をして使うプレイヤーが増えたらしい。


 だが基本的に急所って無意識のうちにガードするものだ。

 このゲームでも普通に魔物は急所を避けてくる。

 故に地味にかなりのプレイヤースキルを持っていないと無理だってことになっているらしい。


 そりゃそうだろうな。

 息を吐くように物事をこなすのは、それなりに修行を積まねば。


「杖で殴ってくるとは、魔法使いのくせになかなかアグレッシブなやつだな! ぐははは! だがその程度では悪魔は倒せんぞ!」


 モノブロはそう言いながら魔法陣を二つ展開させた。

 何か攻撃スキルを放つのだろうか?

 俺はツクヨイの前でいつでもマナバーストを使える体勢をとって六尺棒を構える。


「ぐははは! だったらその杖で好きなだけ殴らせてやろう! もっとも、魔法使いが物理で殴ったところでどうにもならんだろうがな? 獣化してしまえ!」


「きゃっ!?」


「うおっ、──マナバースト!」


 絶対弾くマンを使用したが、弾けなかった。

 獣化とはいったいなんのことやらわからんが、とにかくマナバーストで弾けない特殊なスキルのようだ。

 まずいな、身体が熱いぞ。

 体内から煮え湯が湧き上がってくるような熱量だ。


「おいおい!」


「大丈夫ですか二人とも!」


 膝をつく俺らに、ちんちくりんの二人が心配そうに駆け寄ってくる。


「ぐははは! 実はそこの近接戦士達に妖精化を使ったのは我だったのだよ! 魔法を持たない戦士は妖精化して無効化! そして魔法使いは獣化して魔法を無力化! ぐははは! 獣化すればHPと身体能力は大きく倍増するが、MPは十分の一になり、要求MPが多い魔法スキルは一切使えなくなるだろうな!」


 俺らを見ながら嘲笑うようにそう叫ぶモノブロ。

 まさか、こいつがトモガラとモナカをちんちくりんにした正体だったとは……迂闊だった。

 予測できていたはずなのに、魔法職を無効化する獣化だって?

 くそ、こいつレアスキルいっぱい持ってやがる……。


「ぐはははは! どうだ魔法職! いくらでも殴らせてやるぞ? ふん、だがちゃちな身体能力が倍増したところで、たかが知れてるけどな! ぐはははははーーーーー!」


 そんな声を聞きながら俺とツクヨイの身体が完全に獣化した。


「にゃ? にゃんですかこれ!!」


 ツクヨイは黒い体毛に覆われた二足歩行の猫耳少女に。

 そして俺は……。


「……なんだ?」


 装備していた軍帽が落ちたと思ったら、髪の毛がすっごいフサフサして、尻尾が生えてる。

 赤い体毛で赤い尻尾。

 うおお、腕が倍の太さになった。

 ライオンかと思ったのだが、尻尾がライオンのものじゃない。


「ぐはは、親和性の高い獣となる! ふむふむ、モード黒猫とモード赤猿かな? ぐははは、なかなか似合ってるぞ二人とも! ぐはははは!!!」












ツクヨイ猫耳化。

ツクヨイ、猫耳化ですよーーーー!!!!!


ローレントは相変わらず霊長類の奴に獣化。

結構前からこの魔術封じぐははは!ってのをやりたかったんですが、やっとできました。

体毛は赤く、そして髪が長く、ムキムキになって尻尾が生えています。

想像した姿はお任せします。

まあ……あれですけど。



次回、チート無双回ではなく、ローレントの格闘回。


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