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書籍化刊行記念更新中です。頑張ります。



【ケイブセンチピード・マザー】Lv15

洞窟に潜むムカデの魔物。クラス4。

全ての洞窟ムカデの生みの親。




「シャッ──」


「む!」


「きゃっ!?」


 口から何かを飛ばして来た。

 嫌な予感がしたのでツクヨイを抱いて横に飛ぶ。

 そして片手で後転してすぐに体勢を立て直す。


「め、めがまわるぅ」


「しっかりしろ」


「は、はひ」


 目を回すツクヨイに声をかけておく。

 緊急回避で目を回して立てなくなっちゃ困る。


 口から飛ばされたものは、溶解液だったようでシューシューと音を立てながら洞窟の壁を溶かしていた。

 過去にゴブリンの集落で狩りした時も、相手の装備を壊してくる武器をもったゴブリンがいた。

 そういう手合いは超絶厄介なんだよな。


「下がっていろ」


「い、いや私も戦いますです! 妹弟子ですよ! ──わきゃっ!」


 突進攻撃をかわす。

 ツクヨイは後転詠唱のスクロールで大きく弱体化してるから、あまりここで消耗させるわけにもいかん。

 それでもというなら……。


「俺が遊撃に回るから、ダークサークルとブラックカーテンでなんとか耐えてくれ」


「え、いや……そこは私が遊撃じゃ?」


「基本待ちの闇属性魔法職が何をいうか」


「やっぱり下がってます」


 ……おい、おい。

 まあ、なんでもいいけどとりあえずマザーは俺たちを待ってはくれないみたいだ。

 ちょうどマナバーストのクールタイムが終了したので使う。


「マナバースト」


「──ジャアアア!?」


 弾かれたところへローヴォと駆け出す。

 俺は洞窟を駆け上がり頭上から、そしてローヴォは下から強襲する。

 天翔飛びというよりは、空渡りに近い。

 四足戦闘は地形を利用しやすいのでモンスター相手に引けを取らないな。

 さすが、獣から発想を得る武術も多数あるが、このゲームの中のモンスターの戦い方も取り入れて見てもいいかもしれん。


「グォン!」


 俺より圧倒的に速いローヴォが数ある節足のうち数本を噛みちぎる。

 それでも被害は軽微だろう。

 嫌がって下に気を取られたところで、そのまま頭部を潰しに行こう。

 固かろうが関係ない、悪鬼ノ刀を突き刺しにかかる。


「むっ!?」


 ローヴォの方を向いていたはずなのに、マザーの口から何かが飛来した。

 空中で身を翻す、空転受け身の応用。

 ギリギリで掠め、そして弾き飛ばされた。

 だが耳のあたりに裂くような激痛を感じる。


「ぐっ」


「ロ、ローレントさんっ! み、耳がっ!」


 聴覚を失ってはいないが、感触的に奪われたのがわかった。

 いったい何がと思ってマザーを見ると、口から小さなムカデがちょろちょろ伸びていた。

 おそらくあれに噛みちぎられたのだろう。

 迂闊だった。

 まさか、そんな攻撃をしてくるとは。


「ぐっちゃぐっちゃ……シャシャシャアア!」


 咀嚼音とともにマザーの中にいた小さいムカデが笑った気がした。

 俺の耳は美味かったのだろうか、もっと食いたいのだろうか。


「……………………へぇ…………」


 舐められたもんだな。


「ちょ、ローレントさん! 回復のスクロールを!」


「必要なし」


 洞窟の壁を駆け上りマザーに跳躍する。

 今度は普通に突進をかますマザー。

 空蹴にて、空中で前転しかわす。

 ホーミングして俺を食い破りに来たもう小さいムカデ。


「残像だ」


 ノーチェの能力で俺の位置を誤認させてある。

 そのまま片手で掴み上げ、断ち切った。

 舐めてくれた分、一回だけじゃすまさん。

 四当分くらいにしてやれ。


「──シャアアアアアアアア!!!!」


 怯んで仰け反るマザーに弾機銛を取り出して打ち込む。

 頭に刺さるが、神経節を断ち切るまではいかなかったらしい。

 逃げ延びようとするマザーの頭に、ワイヤーを手繰り飛び乗る。


「わ! わわわ!! ど、洞窟が崩れるぅ!!」


「ぐわぅ」


 頭を腕で保護しながら慌てるツクヨイを背中に乗せて、ローヴォは軽快にステップを踏んでマザーのぶつかった衝撃で降り注ぐ瓦礫を躱していく。


 そんな中、俺はというと。

 巨大な頭の上でマザーの太い触覚を断ち切ろうとしていた。

 これがまた、頭を揺さぶるから難しい。


 一歩間違えると振り落とされかねないので、こうしましょう。


「ふんっ」


「──シャアアアアアアアア!!?!?!?」


 予備の弾機銛を取り出して、 俺の足ごとマザーの頭に縫い付けてやった。

 少々痛いが、これで一つ踏ん張りがきく。

 触手はある程度自由に震えるらしく、俺を狙って大きく振り上がった。

 一本は刀で断ち切ってやり、時間差で飛来した2本目はガードして掴んで噛みちぎった。


「……ぺっ。これでおあいこだな」


 マザーは頭を大きく振って壁に叩きつけようとしてくる。


「飛んで逃げればダメージを負うのはおまえだけだぞ?」


 そう言ってやると、方向転換し暴れ狂うだけだった。

 言葉が通じているのだろうか?

 まあ、俺はムカデと同じように洞窟の凸凹を利用して天井を駆け抜けるタイプでもある。

 銛をストレージに回収してぴょんと離脱する事くらい簡単だ。


「どうだ? 寄生虫に頭から食われていく感覚か?」


 そのまま執拗に、寄生虫のようにマザーの頭へ攻撃を重ねていく。

 さすがは虫だな、背中に乗られては対処する方法がないだろう。

 マザーは業を煮やしてついに自分の身体を洞窟の側面、天井に叩きつけ始めた。


「シャアアアア! ジャアアアア! ギィァァアアアア!!!」


「──ロッ、ローレントさん!!!!」








ローレント「耳返せ」


マザー「もう消化したわよ!」


ローレント「代わりのものよこせ」


マザー「な、なによ! やめなさい! や、やめて! 触覚やめぇえええええ!」


ローレント「ふぅ」






刊行記念更新頑張れてます。

まだまだ頑張ります。

できれば発売予定となっている8/10日までは続けたいです。

応援よろしくお願いします!


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