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一日二回更新!ウオオオ!
ブラックダウン。
ツクヨイがそう告げた瞬間、世界から色が消えた。
「おお」
「これがエリア級の闇属性魔法スキルブラックダウンです! へへーん!」
そういいながら無い胸を張るツクヨイ。
ハッと気付きながら慌てて腕で胸を隠していた。
「み、見えてます?」
「……とりあえずブラックダウンの効果を教えてもらおう」
「なんで今更目線逸らすんですかー! 見えてるじゃないですかー! もうやだああああ!」
「いいから教えろ」
黒いマイクロビキニを身につけたツクヨイは「ひーん」と泣きそうな顔をしながら蹲っていた。
あ、ガチで泣いてらっしゃる。
まじかよ、別に誇るようなもんでも無いけど、恥ずかしがるようなもんでも無いだろ。
「ツクヨイ、似合ってる」
俺だって女の子の扱いくらい手慣れたもんだぞ。
もう三十手前だしな。
魔法の言葉で囁いてやれば、とりあえず機嫌は直してもらえるだろう。
「……ほんとうですか?」
「うん、似合ってる似合ってる」
「ほんとうにほんとうですか?」
しつけーなあ。
「いいから、とりあえずブラックアウトの効果を教えろ」
「め、目が光ってます! こわい!」
ローブで肌を隠し始めるツクヨイからスキルの詳細を聞いてみると。
ブラックダウンの効果は詠唱三分で、効果発動後約一分間エリア範囲全てのモンスターから対象パーティ、クランなどのターゲットを外すと言うもの。
その一分間はターゲットが外れるのと同時に、様々な状態異常を相手に与えるらしい。
だが、一分後は通常に戻り、そして状態異常の付与も消えるとのことだった。
「だったら悠長に構えてる暇ない!」
「ご、ごめんなさーい!」
くだらんやり取りで四十秒くらい使ったぞ。
「あと何秒だ!?」
「十秒です!」
くそったれ!
魚は停止しているかと思えばそうでは無い。
そうだよな、ただターゲットを見失った状態だから、回遊してるよな!
敵モンスターを停止させることはできないらしい。
それでも凶悪なスキルだが。
アポートでケイブスタブに食らわせた石柱を引き寄せる。
そして足をついて空蹴。
これで二秒くらいつかった。
急接近しながら手持ちを刀に持ち替える。
狙いはもちろんエラだ。
巨大な魚のエラに刀を突き込み、そしてぐしゃぐしゃに乱切り。
「ゴパッ!?」
ブラックダウン状態は攻撃を当てるとターゲットが復活するのか。
まあ好き放題やられ放題では無いだろう。
異常状態付与があと二秒続くので、動きがトロくなって弱体化したケイブスタブにできるだけ多く攻撃をぶち込んでいく。
両方のエラを奪い、両目を奪い。
怯んだところへ腹ビレの付け根。
肛門の部分に刀を突っ込んだ。
「ゴゴゴパッ!?」
新感覚か?
いや、痛いだろうな。
相当痛いはずだ。
残り一秒くらいなので、すぐにスペル・インパクトで内側から破壊。
……ミヤモトと戦った時。
あいつは確と俺の気を認識していた。
だったら、空手の秘儀裏当てだったり。
古流骨法の徹しとか使えるんじゃないだろうか?
でもスキルで手っ取り早いし確実だからいいか。
内臓シェイクをこのゲームは認識するのかわからんし。
するんだろうなぁどうせ。
生産解体っつーもんがあるから、お察しだ。
「ゴッポフッ!」
くぐもった音ともに、ケイブスタブが内側から爆発した。
ガノイン鱗と違って普通の鱗はその辺もろいか。
「わきゃー!?」
「ん?」
鋭い小骨がツクヨイの方に飛んでいた。
そうか俺漁師だから、生産解体が働いて素材が丸のまま。
そして強烈な威力を内蔵に受けて爆発。この結果に。
だがローヴォがなんとか弾こうと頑張っている。
「ちょ、こ、この水着装備脆いんですから!」
だったらローブ羽織るんじゃなくてさっさと装備替えろよな。
そして小骨の一つが運悪くローヴォのガードをすり抜けて、黒いマイクロビキニの紐の部分を断ち切った。
「──へ?」
上下の水着がはだける。
「きゃああああああああ!!!!」
……いや、装備耐久低くても、壊れたら普通にインナー姿に戻るだけだろうに。
黒いスポーツブラとパンツだが、いや、さっきの水着の方が布面積少ないって。
それでも女性プレイヤーは恥ずかしいんだろうな。
下着と水着ってそういう意識の違いがあるし。
「ブクブクブク……」
「あ、おい」
水着による水中呼吸機能失ったツクヨイはそのままブクブクとしゃがんだまま溺れてしまう。
「うう、なんでこんなに恥ずかしい結果に……このまま入水します……」
「いやいやいや」
ローブで彼女の身体を包むと、そのまま水面へと上昇した。
ケイブスタブの素材はどうしようか。
勿体無いが、仕方がない。
今回は自分で解体せずに、スキル解体でアイテム化しよう。
【洞窟怪魚の鋭牙】
驚くほど軽く、だが硬い。
高い貫通性能と攻撃力を持つ鋭い牙。
爆発したから素材少な目ってなんやねん。
魚の素材って牙と骨くらいしかないよな。
ガノイン鱗持ってる奴がいたらいいんだけど。
これが作者の精一杯のサービスシーンです。
別作品で鍛え直してきます。
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明日も二回更新です。
がんばります。
あとがき小話。(読み飛ばしておっけー)
高校生の時、親戚がやっているフグの養殖の手伝いをしたことがあるんですが、いつかローレントに養殖をさせたいと思っています。
その時私がやったのは、フグに餌をやったり、万単位のフグを一匹ずつ数えて隣の生け簀に移したり。それで居眠りして海に落ちて死ぬかと思った記憶があります。
水中って本当に怖い。




