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「ルビー! ローヴォ!」


 石柱の上から今にも召し上がられそうになっているモナカを助けるべく、ローヴォを乗せたルビーを向かわせる。

 コマンドサスカッチ、よく雪崩を起こして修行遊びをするだなんて。


 遊びの中に修行を取り入れる。

 そして、それを日常のものとする。


 ……こいつはできる。

 そう思った。


「ピヨピヨッ!」


「おらローレント! 石柱をよこしやがれ! ぶん投げてやる!」


 元を言えば、こいつが投げた石柱が原因でこのコマンドサスカッチは出現したんじゃなかろうか。

 なんだか空いてる左腕で後頭部をさすっているようだし、絶対頭に命中してるよな。


「こうしたほうが早い。アスポート」


 ここぞとばかりにガンガン使っていく。

 ハモンとの修行の後、スティーブンから色々やらされる羽目になるのはわかっている。

 いまいちアスポートのレベルの上がり方が遅かったからここいらにガンガン使っていかなければな。

 石柱を頭上に転移させて、コマンドサスカッチに太い腕を折りにかかる。


「ピッ!?」


「ん? ああ、すまん」


「この雪の巨人さんもろとも石柱を投げられるよか信頼はできますけど、一言お願いしたかったですね」


 衝撃と同時にモナカが空中へ投げ出されていた。

 くるりと空転受身にて、体勢を立て直したモナカにコマンドサスカッチは追いすがる。


「獲物に執着するのは良くねぇよ」


 トモガラがモナカとサスカッチの前に割り込んでその剛腕を受け止めていた。

 ……あの雪崩の中、どうやって移動したんだろうな。


 そう言えば、いつのまにか雪崩も止まっている。

 雪崩はこのコマンドサスカッチが引き起こしたとしてみるべきかな。

 能力なのかもしれんし、雪崩を起こす。

 だとすればとんでもない相手だが……果たしてモナカ、トモガラに通用するのか?


 俺に通用するわけないじゃん。

 何言ってんの。


「ウホホホウホッーーーー! フンッフンッフンッゥホォーーーー!」


 サスカッチは張り合ってきたトモガラに合わせて雄叫びと鼻息をあげながら大きく力を込めた。

 ズズンと積もっていた雪が力を入れる身体の力みに合わせて沈んでいる。


「うお? やっぱ図体のまんまのパワァだわなぁ……ってか鼻息やめろや!」


「張り合う方もどうかしてますけどね……」


 力を込めたサスカッチに対してトモガラもさらに身体を力ませた。

 それによってまとっていた闘志のオーラが膨れ上がったような気がした。


 そして驚くべき事に、サスカッチの声の様子がどんどん悲痛なものに変わっていく。

 荒かった複式呼吸による鼻息も、胸を大きく動かした胸式へ。

 体力的に大いに消耗している証拠なのだが、いったい何が起こっているんだ。


「力が増した?」


「闘技大会で報酬受け取ってんのはお前だけじゃねぇんだぜ? 無詠唱と同じ剛地法。ためを作ることによって、身体強化スキルの倍率を高めるスキルだ。体は硬くなっちまうが、掴んじまえば関係ねぇよ!」


 メキメキメキメキッ!

 トモガラと組まれたコマンドサスカッチの指が嫌な音を立て始めた。


「ゥガッ……ウホォッ……ォォッ」


「うわぁ……み、見てられないです。どっちが悪者ですかあ……」


 ツクヨイが俺の背中で目を抑えながらそう言っていた。

 確かに極悪人だなトモガラ。


 ……極悪人だなトモガラ!

 ……俺と違って!


「どの口がいってんですか……」


 ツクヨイは辟易とした声色で俺の言葉に反応していた。

 何がおかしいというんだ?


 しかし、剛地法……つまるところ空手でいう金剛技法と同じようなものか。

 関係あるのだろうか、まーた裏の何たらかんたらがこのゲームには関わってたり?

 あの人、資産家でもあるしなあ……。


 話が逸れたが、トモガラの使用した剛地法はまさに大きく息を吸って力のためを作り、全ての身体強化スキルの倍率がドン。

 さらにそれによってとんでもないことになっていた自重アップの倍率もドンドンのダブルアップだ。

 ズズッと雪を圧で溶かし地面に足がめり込む姿はまさに地と一体化したように思えた。

 だから、剛地法なのだろうか。


「上位派生が欲しいところだが……次の闘技大会で上位入選すればいいだけだから楽勝だぜ」


「上位派生って……さらにデブ化するんですか?」


 モナカのその問いに、トモガラは牙を剥くようにして激しく答える。


「デブじゃねぇよ! ばかたれ! 1キロの筋肉と脂肪を比べて見やがれってんだ! ……上位は金剛地載、文字通り何人たりとも受け入れない、鋼の身体となるんだぜ」


「ほうほうそれで」


「ああん? 見てわかんねぇのか?」


 トモガラは、サスカッチの懐に大きく踏み出した。

 足音がズドンと音を立てる。

 そしてサスカッチの巨体を大きく肩に担ぐと持ち上げた。


「テメェらみたいな繊細な動きは俺には無理だってことはわかってんだよ、だからちっとやそっとじゃへこたれねぇ、それだけの防御力を持った身体能力とこの絶対的な力で、てめぇらをいつかねじ伏せてやるよ」


 そこには技術の崩しなんか存在しない、力ずくのみで形成された技があった。

 無理やり担ぎ上げ、そして雪がすっかり溶けた硬い山肌に向かって、トモガラは肩車。

 本来投げとは崩し、倒れる力を利用して、重力を利用して相手を投げる。

 体捌きによって身体を梃子とし投げるのだが、トモガラのはその一切合切を排除したぶっこぬきからの、重力プラス自分の力を持ってして叩きつける。


「──ッシャァオラァッッッ」


 ゴシャッと潰れる音がして、頭から叩き潰されたコマンドサスカッチの顔面が飛散する。


「おっと」


「ひえっ!?」


 顔が弾け飛んだ拍子に、牙が一本飛んできた。

 俺の背中越しに顔を覗かせていたツクヨイの顔面へと飛来したそれを六尺棒で弾く。


「……目が光ってますって……こ、こわっ」


「素人さえも感じ取れるほどに、荒々しく高ぶってるなあ」


 動の気ってやつだ。

 トモガラの気質は最初は恐るべき程念入りで狡猾な奴だが、一旦それを捨てるとどこまでもボルテージとともに高ぶっていく動の者。

 ツクヨイの目から見ても恐ろしく感じ取れるということは、それだけツクヨイに武道の嗜みがあるか、もしくはトモガラが本能を揺がすほどの気に目覚めたかのいずれか。


 ……むろん、後者だ。

 俺はどっちもこなせるハイブリット。


「猛々しいことこの上ないですが、益荒男ぶりともいいますし、今のあなたはとっても美男子さんですよ」


「ババアに好かれたところで嬉しくもなんともねぇ」


「いけずですね☆」


 ……ハモンよ、ひょっとしてとんでもない奴らに罰を与えようとしてるんじゃないか?

 俺も、昔のスキルも何も揃ってない時とは違って、今は自分にあったスキルが揃いつつある。

 トモガラのようにコマンドサスカッチなんか一瞬だ。

 モナカだってそうだろう、あの状況で化け物に驚いていたようだが、本気を出せた積もった雪の上でも足を雪にまったくとられずに投げることが可能だと思う。


 ちょっとやそっとのこんなんじゃ、容易に乗り越えるぞ。

 最後にハモンが俺の相手だ、みたいになったら俺が前のように何もなしにやられるつもりは毛頭ないしな。

 その前にモナカとトモガラもハモン相手に一戦交えたいだろうし。


 さて、どうなることやら。






ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ

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