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お待たせしました。


「白ゴリの雪崩だ!」


 白い体毛を持ったゴリラ型モンスター。

 イエティが軍勢をして山上の方から雪崩のごとくこちらへ向かって来る。

 いったいなにが引き金となってこんなことになっているのやら。

 そう思っていたら、ちゃんの雪崩も後ろから迫っていた。


「イエティさんたち、迫真の表情で逃げてますね」


 モナカが笑いながらそう言っていた。

 それどころじゃ無いと思うんだけどなあ。

 モンスターの大群と雪崩を仕掛けてきておいて。

 何としてでも生き残ってみろなんて。

 やはりハモン、とんでもない野郎だった。


「まあ、それでこそ俺らに対する罰ってもんだけどな」


 トモガラが斧を抜きながら軽い調子でそんなことを言っていた。

 そこまで根に持つようなことでは無いと思うけどな。

 NPCの建物なんか1日経てば復活してるだろうに、ホームモニュメント・タウンの力で。

 まあそれなりに費用はかかるが。

 最近お金が飛ぶなあ。


「果たして罰になるでしょうか?」


 モナカもニコニコした顔で毛皮をアイテムボックスにしまい動きやすい体制をとる。

 ……ならないだろうなあ。

 脅威を前にして、目を輝かせるタイプである。

 両者とも。


「まったく……状況はかなり切迫してるぞっ?」


「ローレントさんが一番ワクワクしてないですか!?」


 俺のローブを引っ張りながらツクヨイがそう叫んでいた。

 そんなことないが、すでにエナジーブラストの詠唱には入っていたりする。


「雪崩に埋もれてビバークする形になれば、保存食が有用になる。ほら、このゲーム食材腐るだろう」


「あんな熊の臓物煮込んだ汁に付け込まれた筋張った熊肉なんて食べたくない! 帰る! ぶらっくぷれいやぁは雪山苦手なんです! ってかなんで私までこんな目に!? 私しか罰ゲームになってないじゃないですかぁっ!! うわああああああああん!!」


 落ち着けツクヨイ。

 雪山で騒ぐと一瞬で体力を奪われるぞ。


「とりまローレント。先にイエティ、その後雪崩だけどどうすんだ?」


「今から逃げるのは不可能だから各々自由に生き残れ」


「んな無茶苦茶な。でも、久しぶりの修行みたいでワクワクしますね」


 取り急ぎ妹弟子であるツクヨイは、俺が守っておかないとスティーブンに怒られそうだ。

 他のやつは罰ゲームだから知らん。


「美男子さん、私もお守りしていただけないんですか?」


「無理だ」


「あら☆」


 モナカは自力で生き残れるだろう。

 っていうかこの状況に恐怖を抱かないやつは、一度経験してそして生き残ってるやつだ。


「巻き込まれたら骨折じゃすまねぇだろうな、とりあえず全力で行くか。フルドライブ、フルポテンシャル、フルストリング、闘志……」


 身体強化スキルのオンパレード。

 闘志の影響かもしれないが、トモガラの身体はとんでもない熱量を持ち蒸気を上げているように思えた。

 フルドライブはハイブーストの正統直系の上位スキル。

 お気づきだと思うが、こういう系の身体強化スキルはハイ、フルと上位に変わる。

 フルブーストにしておけと思ったが、後続スキルにオーバードライブとかそんならしい名前のスキルが来るための布石なんだろうなと思った。


「デリケートモーション、闘志」


 対するモナカは二つのスキルを使用するだけ。


「それだけ?」


「トモガラさんを見たら自ずとわかるはずですが、やや自重が重たくなると雪道では動きづらいんですよね。それに動きも荒いものになりがちですし」


 気になって聞いてみるとそう言っていた。

 ……え?

 ブーストってどっちかといえば身体が軽くなりそうなもんだけど?

 身体重くなるの?


「身体強化スキルのジレンマだな。体感的には早くなるし攻撃も重たくなり、防御も硬くなる。でも防御スキルや攻撃スキルに比べたら屁でもない。俺レベルの重ねがけをして初めてここまで悪条件が重なるんだよ」


 カウンター以外の防御スキルは、技術が入らない変わりに身体が重くなり動きが遅くなったりする。

 その分頑丈さではついづいを許さない。

 そんな細やかなバットステータスが身体強化ゲーだと言われたこのゲームの身体強化スキルにもある。

 もっとも、少ししかないから。

 身体強化+攻撃スキルというバランスの良い構成をしていればかなり強い。

 オーソドックス故に、技術がなくとも攻撃を避けつつ当てるという現実な動作ができればかなり強い。


 話がそれたが、身体強化スキルオンリーのトモガラは重ねがけによって僅かな増量効果がさらに増しているらしい。

 運営は羽のように軽い動きを実現してくれそうにもないようだ。


「ヒョロガリがスピードあるとかそんなのねぇよ。陸上の世界でも基本的に筋肉あってデケェ奴が足速いし、格闘技の世界でも体重体格イコール強さ。お前ならわかるだろうが?」


「あら、柔よく剛を制すを真っ向から否定している言い草ですね」


 トモガラの言葉にモナカがニコニコと笑顔を作りながらも鋭い声でそう返していた。


「剛能く柔を断つ。それが俺のポリシーだ。動きが大振りになっても威力はケタはずれた。今の俺ならかすってもモナカならHP半分は持っていける。ローレントくらいなら即死だろうな」


 なに?

 俺が即死?


「言いますね、道場ではコテンパンにされたトモガラさんが」


「あ? 俺のアドバンテージはこのパワーよ。雪崩ごとき蹴散らしてやらぁ」


 そう言いながら雪崩とイエティに向かって行くトモガラ。

 そのまま飲まれて死ねばいいのだが、しぶといだろうな。

 こいつのしぶとさは俺に次ぐ。


「ふふ、スキルデブに言われる筋合いはありません。雪崩と遊んででください」


 モナカもそう言いながらトモガラの後を追い。

 雪を強引に蹴り飛ばしながら走る彼の頭に飛び乗って、そのまま踏んづけながらイエティの上へと大きく跳躍した。


「私はちょっくら──波乗り。いやイエティ雪崩乗りでも楽しみますから」


「おいこらモナカァッ! あとで覚えとけよこのアマ!!!」


 さすが柔道の達人。

 デリケートモーションを使わなくても重心配分は完璧なのだろうが、一応保険でつけているみたいだ。

 道場専用身体強化スキル闘志の力を抑制するためにな。


 イエティの頭の上をぴょんぴょん飛び跳ねて移動しているようだが、着地から跳躍の重心配分がキモすぎるくらい完璧。

 そして小柄でこの混乱もあるせいで、全く気にもとめられず一番大きそうなイエティの肩に乗って一休みしていた。


「ロ、ローレントさんは何か秘策ないんですか!? わ、私死んじゃいます! このままだとダメです助けてー!」


「大丈夫だ。とりあえず絶対守るから」


「あうう、いきなりそんなこと言われても……とりあえずお姫様抱っこされて見たいです」


 何言ってんだこいつ。

 ヤンヤンはすでにテイムクリスタルの中へと戻っている。

 ツクヨイにもらった俺のテイムクリスタルの中には、すでにノーチェが入っているのでローヴォとルビーはしまえない。

 もとよりローヴォはしまわれるのが嫌いらしくしまう訳にもいかんがな。


「とりあえず避難だな」


 エナジーブラストを放ちながら上空へと跳躍した。

 ルビーもローヴォを背負って空中へ駆け出す。


「ひ、ひえええええええ!!! あ、足持たないでくださいいいいいい!!!!!」


 サービスカット。






活動報告に諸々報告かいてます(今から書くんですがね)。

刊行決定、八月予定です。

ラフを載せてます。


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