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しばらくぶりです。お待たせしました。


 ニコニコと笑いながらも、一切の隙を見せないモナカ。

 その様子を見て、俺も自然と口に笑みが浮かんだ。


「夢のお立ち会いですね♡ 誰しもが、最強の称号を受け継いだお孫さんと戦いたがっていたのは事実ですし♡」


「……ふーん」


「私も年甲斐もなくはしゃいじゃってますし♡」


 そう言いながらスッスッ、と前進するモナカ。

 普通の人、一般的な達人ならば。

 為す術もなく近づかれて、そして投げられてしまうだろう。

 相手に攻撃の拍を読ませない。

 それが無拍子の恐ろしいところだったりする。


「うい」


「あら、読まれてしまいましたか♡」


「そうじゃない」


「なるほど♡」


 俺は別に未取で相手の隙を読み取ったわけではない。

 とりあえず俺の制空圏へと侵入したので迎撃の襟取り。

 お互い無拍子を使えるとなると、相手の無拍子は意味がなくなる。

 同じ技を使うことこそ、最大の防御そして攻撃だ。


「左腕がないのが致命的ですね♡」


「そうだな」


 モナカはそう言いながら腰を落として──浮き落とし。

 拍子を読ませないことで、先に取った襟すら離すことができなかった。

 小さい身体をさらに沈めて、まるで俺の体が浮いてしまったかのように錯覚する。


 掴んだ時は既に掴まれていた。

 そういうことだな。うむ。


「一本ですよ♡」


「柔道ではな」


 このまま背中から落ちてしまえば、完全なる一本負け。

 だが、そんなルールはそもそも存在しない。

 背中の衝撃を犠牲にして、そのまま落とされながらモナカの頭に蹴りを叩き込む。

 同時に受け身も取らずに背中から落ちたので相応の衝撃を感じた。


「ピッ☆」


「頭がおろそかになっているな」


 ダメージ交換は俺の勝ち。


「それって私がまるでバカみたいじゃないですか♡」


「実際にバカどもなんだよ!」


 悲鳴とともに板間の上に沈んだモナカが頭を押さえながら立ち上がると、後ろから上半身を血だらけにしたトモガラがそんな声とともに乱入する。


「こんの、武術馬鹿どもが! この際なんでもありだ! 勝ちゃいいんだよ勝ちゃ!」


「さささ、さすがにトモガラさん戦斧を取り出すのはちょっと! 道場ではちょっと!」


「……わくわく」


 ボルテージの上がったトモガラに、十六夜の声は届かない。

 そしてなぜかワクワクしながら、目を輝かせるアルジャーノ。

 俺とモナカの間に戦斧が叩き込まれた。


「ぶっ潰してやる!」


「プレイヤーキラーも真っ青の迫力ですね♡」


「頭に血が上りやすいやつだからな」


「オラアアアアア!」


 もはや道場ルールなんて関係なくなっていた。

 木片を撒き散らしながら斧を振り回す血だらけの男トモガラ。

 モナカの言う通り、プレイヤーキラーも真っ青になるほどの怒気にまみれている。

 普段はおちゃらけてるんだけどなあ。


「でもなんでもありなら丁度いい。日頃の恨みを色々と晴らす機会になる」


「……やる気十分ですね♡」


「ちょ! 止めに回る側じゃないんですか!?」


 十六夜よ、男は挑まれた喧嘩は買わねばならんのだよ。


「女子供ババアにはわからん男のサガよ」


「どう言う意味でしょうか☆」


 エナジーブラストを使えば、ローヴォのおかげで焼ける可能性百パーだから燃えちゃうかもしれないが。

 NPCの持つ建物は基本的に壊れてもすぐ復活するから大丈夫なんだなこれが。

 信用度は落ちるが、全てトモガラのせいにしちゃる。


「おまえら二人とも真っ二つにしてやらぁ!」


「上等だ。エナジーブラ──」


「──そこまでじゃ」


 真っ正面から戦斧を振り上げて飛びかかるトモガラが消えた。

 そして目の前にスティーブンが姿を現して、そして杖で俺をぶん殴っていた。

 テレポートを使ったノータイム殴り。

 これは……強烈、避けることは不可能。


「ぐっ」


「おごぁっ!」


 道場の端っこで消えたトモガラの声が聞こえたと思ったら、ハモンが顔面を掴んで壁にめり込ませていた。

 今日で何回壁にめり込んだ? トモガラよ。


「師匠」


「ステファンからの緊急の呼び出しを受けてみれば。お主は何をやっとるか」


「手合わせです。稽古です。本当です」


「あらまあ、言い訳だけは饒舌ですねぇ♡」


 黙ってろよモナカ!

 スティーブンは周りを、バキバキに割れた床と天井と、そして道場の壁を見やりながら言う。


「やりすぎじゃ」


 その一言に十六夜が涙を流しながら「ごもっともです、誰だか知りませんがごもっともです、ありがとうございます、ありがとうございます」と呟いていた。


「新手の魔物が襲ってきたのかと思ったぜ、ステファン」


「信じられないかもしれませんがハモン師父、こいつら素手でやりあってましたね」


「ちなみにスキルは?」


「未使用です」


「ローレント、トモガラ、モナカ、今すぐ俺がおまえらを弟子にしたいからさっさとキャラデリしてこいよ」


「……てめぇ、いきなりでてきて人の頭を壁に叩きつけやがってこんにゃろ……」


「血の気が多いのは嫌いじゃないが、話が進まないからもっと寝てろ」


 再び顔面から道場の壁をぶち抜いていた。

 哀れトモガラ。


「まあ、お主も突拍子も無いことを言うでないわ。この二人は純粋な近接職じゃから、お主が弟子にするのは無理じゃしな」


「だからキャラデリ案を推すんだが、運営から怒られたらたまったもんじゃ無いから諦めるぜ」


 あっけらかんとそんなことを宣うキャラデリを推奨してくるNPCハモンが俺の方へと目を向ける。


「ローレント。ステファンからの推薦で、今後の道場段位スキルは俺の預かりとなる。期待しておけよ」


「は?」


 いきなり出てきてこいつは何を言っとるんだ?




ついに、六段スキル魔闘家版がでるんですなあ。

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