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「うッ──」


 威勢良く構え、そして先手を狙って来たマルスが止まった。


「……ほう」


 師範代のつぶやきが聞こえる。

 うむ、迂闊に攻めたらバカを見るぞ、とりあえず今の俺の自然体に隙がないと判断ついたらしい。


「まあ、お綺麗な自然体で♡」


 後ろでモナカが俺の立ち姿をそう評していた。

 左腕を失っているならば、死角となる左半身を後ろにし、右足を一歩前に出した半身の構えを取るのが一般的であるのだが、完全なる自然体はあらゆる構えを凌駕する。

 構えていると、隙を読まれるからな。


 この自然体、相手は基本的に俺の左腕を狙ってくるだろう。

 だがそれは虚実の死角。

 馬鹿正直に狙ってくれば容赦なく後の先を取るのだ。


「片腕がない状況で僕の攻撃が捌けるか! ──その左半身、勝負ゆえに敢えて隙をつかせてもらう!」


 マルスは敢えてそこをつくことを決意したようだ。

 ある意味生真面目な性格が表れている。


「む」


 ──かと思いきや。

 ステップを踏みそして大きく左右に揺さぶりをかけながら、俺の右半身に後ろ回し蹴り。

 いや、どちらかというとローリングソバットというやつかな。


 歯車のように動きを合わせ左足を軸に後掃腿。

 足元がお留守。

 バランスを崩したマルスの足首をそのまま手で払い上げる。


「くっ! それでこそライバル!」


「まあ、お上手な受け身良い。そして良い気概です♡」


 後方受け身をとりすぐさまバク転して距離を取り、俺からの追撃を逃れたマルスに対して、モナカが満面の笑みでそう呟いていた。

 こいつを倒す時は大抵投げ技だったっけな。

 一応相手を倒して、マウントを取る術は身につけているみたいだったが、完全な受け身やら投げ技はあまり教えられていない様子だったのを思い出す。

 ……受け身、練習してたんだな。

 魔法職は力が弱かったから、投げ、関節、絞め、急所打ちに偏るのは必然だが、本職の近接職にはそんなもの必要ない、打撃で外から破壊するというのがセオリーみたいだし。

 あくまでこのゲームでは。


「こないならこちらから! ──ッッッ!?」


 誰も行かないなんて言ってないだろう。

 マルスの視線の隙をついて一歩踏み出し、人差し指をその目に突き込んだ。


「まあ♡ それが間の真髄というやつですね♡」


 ちらりとモナカに目を向けてみると、何故かはしゃいでいた。

 初手は見極めか、完全に殺しに行くのに尽きる。

 選択肢はそれだけだ。


 相手を見切り、殺す。

 相手が何かする前に、殺す。


 マルスの動きはそれなりに鋭くはなっているものの。

 やはりただの努力鍛錬。

 スポーツの延長線上に過ぎないとわかった。


 オリンピックだったら努力すれば金メダルかもな。

 でも、武術界隈では即死。


「攻撃するなら頭を狙え」


 マルスは顔を左に振ってギリギリで目つぶしを躱した。

 それでは右耳、いただきました。


「ぐわぁぁぁあああああ!」


「痛がる暇はない」


 あのトモガラでも、覚悟を決めたら目つぶしが来るとわかっていても目を閉じない。

 それくらいの覚悟を決めろ。

 というか戦いの最中に耳を抑えるな、余計な声を出すな、目を閉じるな。


「ゴッ──」


 そのまま後ろへ回り込むと、裸締めの要領で肘で首を取り。

 膝を蹴りおって担ぎ上げ、後頭部から投げ落とす。

 受け身を学んで来ていたようだが、これで受け身を取ってみるがいい。


 片腕がない分技が不完全だから取れないこともないはずだ。

 敢えて頭部を打撃せずにこうして逃げ場を残してる俺、優しいよな。

 でも痛みによる崩しを完全に決めているから受け身も難しいかもな。


「まて。です♡」


「ん?」


 投げ落とす俺に身体を密着させたモナカが、マルスの襟を掴むと強引に引き剥がした。

 そして自分の背中に乗せてころりと床に置く。


「試合の最中だが」


「不完全とは言え、鬼横山の伝説の技──天狗投げを軽々しくやってのけるとは、お見それしました♡」


「……うふふ、お見初めしました? 何を言ってるんでしょうかあの娘っ子、うふふふふ!!!」


 俺の勝負に途中で割り込んだのを見て、十六夜が弓を引きながらモナカの元へ飛び出した。


「ダ、ダークサイドから早くお戻りになられた方が良いかと思われますが♡ あと弓はダメです」


 あまりの異質な迫力に、モナカはぴゅーっと逃げていき俺の後ろに隠れる。


「ローレントさんから離れてください! 前回ずっと私のターンだったのに! 何故ぽっと出のあなたがいいポジションを狙ってるんですか!」


「……それは同意」


 いつのまにか道義に着替えて来たアルジャーノが、そんなことを言いながらテクテクと歩いて来て、師範代に訪ねた。


「……段持ちに習ってもブーストはもらえるの?」


「ん? まあ、あくまで道場を使ってやる分には誰が教えてもいいんだがな? スキルは俺が渡すが」


「……ならスキル頂戴。習うのは彼に習う」


 指差した方向がもろに俺なんだが?

 師範代は一瞬変な表情になったが、顔をニヤリと歪ませて言った。


「ふむ、面白い。俺は許可する」


 待て待て──、


「待ってください!!!! 何勝手に決めてるんですか!!!! いきなりアルジャーノさんの私の味方かと思ったらいきなり敵発言!?」


「まあまあ、女の子は空手より柔道の方が使いやすいと思いますので教えるのは私が♡ あ、私には美男子さん方が二人で一緒に身体をば……♡」


「……それは同意できない」


 なんだかしっちゃかめっちゃかになって来た。

 相変わらずトモガラはこの状況を見て爆笑しているし。

 俺、マルスと戦いたいんだけど……ってマルスの方に目を向けると。


 血だらけになりつつも鬼の形相で俺の方を睨んでいた。

 ……冷汗。





十六夜「せっかく前回のパートではディナーデートから一緒のクエストに参加できると思ってたのにですよ! 私の扱いなんですか! 緊急クエストの諸々を拾ったのも私ですよ! 置いてけぼりですか!? 魔銀のかけら拾った意味ないじゃないですか! ぽっと出の小娘に! キー! ウフフフフフフフ!!!」



ニシトモ「ちなみにオルトウィルは私がお送りしました」


オルトウィル「テージシティにこっそり戻ってます」


セバス「…………」




ローレント「いつも感想ありがとう」







あとがき小話よみとばしてもいい


無拍子という技がありますが、そろそろ間の真髄とか適当ぶっこいた名前の技をやめて。

なんか相手の無意識、潜在意識、そう言った類の全ての隙をついて行動する技に名前をつけたいと思います。


下手すると最強攻撃とかへんな名前になりかねないのでお願いします!!

お願いします!! お願いします!!!!!!


明確に存在しない隙をとるから無取むどりとかでも別にいいでしょうかね。


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