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「はぁ、魔人のおかげで壊滅的な被害になったって聞いたけど……目撃情報によるとローレントのかめは○波で大半が焼け焦げたってことなんだけど……弁明はあるかしら?」
「ぐっ」
唐突な事実によって、俺は窮地に立たされている。
焼肉屋をやったのは魔人だ。
引き金は俺だけど。
「嘘だ」
「本当よ」
エナジーブラストってそんなに威力あったんかよってくらい、木造の建物を焼き焦がしている。
そういえば基本的に元からあった町のものは壊せないが、プレイヤーが作ったものは耐久度があるんだった。
家の耐久度は住めば減るのだが、土建屋グループの着工はかなりしっかりしていて普通に使いぶんには耐久百年以上はかたいとのこと。
木造建築でもそれくらいはもつからなあ。
「戦闘での被害は仕方ない」
「仕方ないわけないじゃないの」
苦し紛れの弁明もレイラによって封じられてしまった。
「とりあえず、請求書出しておくから。土建屋の駐在が諸々の修理見積もり出してくれるわよ?」
「そんなお金ない」
断固として拒否する。
びた一文払う気は無い。
ってか、魔人倒さなかったらやばかったと思うんだが!
「ニシトモ」
「……こちらで清算しておきましょう」
ニシトモーーーーーーー!!!!!!
売りやがったこいつ!
「村長には逆らえませんので。まあ幾分私の方からも補填しておきますから」
「まあ、借金地獄ですか♡」
モナカは人の借金騒動にニコニコ顔で耳を傾けていた。
うーん、被害総額によると思うが、多分ニシトモに預けている分でこと足りるはずだ。
だがしかし、いつどこで衝動買いしたくなるやもしれんのになあ。
「シャレになんねぇ」
「こっちが言いたいわよ!」
どやされてしまった。
怖い怖い、ここは大人しく払っておきましょう。
「それと──」
レイラはさらに言葉を続ける。
「珍しく日刊GSOの他にも公式から情報が寄せられていたわよ」
「へぇ、俺もまだ見てねぇな」
トモガラが反応する。
どかっと部屋の奥の椅子に座って置かれているお菓子を鷲掴みにして食べていた。
「それ私の椅子!」
「いいだろ減るもんじゃない」
「あーもう、まったく。私……久しぶりの登場だっていうのにあんたら二人はなんでそうなの? 相変わらず二人して自由奔放よね。懐かしいけど」
レイラは書類の束でトモガラを小突いて椅子から追い立てた。
そして豪華な椅子に座ったレイラは弟子たちに振り分けた書類雑務をこなしながら告げる。
「まず最初にいいお知らせなんだけど、思ったより闘技大会が白熱して町おこしに繋がったってことで、今度はノークタウンで開かれることになったみたいよ?」
まじかよ。
公式サイトをみんながチェックしている。
仮想ウィンドウをみんな一様に見ている姿もなんだか面白い光景だな。
「あらあら♡」
「ふむ」
とりあえず黙って見終わるのを待っているとトモガラに頭を小突かれた。
「おめーもチェックしろ!」
「いた!」
「まーた説明人任せにしてぼんやりしやがって」
右手で殴られたが、左手に手斧構えるとか、どういう了見だ。
「あんまりこういうの得意じゃ無い」
「私も機会は苦手です♡」
「じじいとばばあだな……」
ジジイでは無い。俺はな。
さて、公式サイトを確認する。
第一回闘技大会が好評だったため、第二回闘技大会をノークタウンにて開催するという旨が記載されていた。
チーム対抗個人戦の他に新たに団体戦が追加されて、五人組三本選手で勝利という方式も導入された。
そして、なぜか公式戦に俺の名前が載っているんだが……。
「あんたは前大会優勝者だから参加資格なし」
「え」
場が騒然となった。
「冗談よ。第二回闘技大会の優勝者に、第一回闘技大会優勝者への挑戦権が渡されるみたいなのよ。だから、個人戦のみローレントは実質出場不可。団体戦だけフル出場できるってことね」
「おまえ、運営のメール無視して予選出てたもんな。強制措置ってところか」
トモガラの言葉が突き刺さった。
まじかよ……。
「ちなみに、前回みたいにタイアップじゃ無いから、街中予選でシード権を集めるのはないけど、ぜひ出場してほしいプレイヤー何人かにはシード権を個別配布してるみたいね」
シード権どころじゃ無いんだが……。
なら団体戦にかけるしか無い。
団体戦は様々なステージが用意されるとのことで、なかなか楽しめそうだな。
最初から最後まで五対一でも別に構わんが、それはさすがに無理か?
「さて、闘技大会の運営に、当然ながら私も参加できる範囲は参加するんだけど……問題は魔人関係のクエストを一つ達成してしまったことで、同時進行で【暗躍する魔人】ってクエストが解放されたのは理解してるかしら?」
「なんだそれは」
相変わらずトモガラが不躾に尋ねていた。
俺も知りたいところだが、ここはトモガラの面の皮が厚い物言いに任せておく。
「公式を見なさい。まあ、気づいてないと思うけど、毎日チェックしておかないと公式に乗せられたクエスト見逃しかねないわよ?」
そう、一度言葉を置いてお茶を飲んだレイラ。
世界観が崩れるというクレームのおかげで、クエスト関連のインフォメーションは消えた。
もともとあってないようなものだが、それだと困る人向けに公式サイトにちょこちょこ全体クエストとかお願い事はNPCからの言葉として乗るようになっていた。
もっとも、それも公園のでかい掲示板に移行して、仮想ウィンドウを使って見れなくなる日も近い。
リアル寄せされてる。
「魔人の出現と、裏ギルドの登場。そして魔人は街中キルが可能で、プレイヤーも魔人がいる状況でならプレイヤーキルが可能になるらしいのよ」
「それはまずいですね」
ニシトモが苦笑いしながらレイラの話を聞いていた。
「ある意味、タイアップイベントのような状況ができつつあるわけ。絶対にお祭り騒ぎと称してプレイヤーキラー勢は大会当日に乱入キルを狙ってくるでしょうね」
ため息をつきながらそういうレイラに、トモガラが耳を掻きながら言った。
「混乱の中で殺しつくす、そんなカオスな状況を求めてんのか?」
「何言ってんのよ、求めてるって断言しても良いわね。それだけ頭いかれてる連中なわけ」




