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「トモガラ」


「まったく、なにやってんだかなあ」


 トモガラの手斧は魔人の背中に大きく食い込んでかなりのダメージを与えていた。


「ぐっ!! いきなり何者だてめぇ!!」


「あ? ちょっと黙ってろよ。今感動の再会してんだから」


「知るか! クケケケ! この仕返しはさせてもらうぜ! バッドトーキシック!!!」


 背中の傷口から大きく瘴気を吹き上げる魔人。


「うざってぇな」


 そんな魔人にトモガラは戦斧を手に取るとそのまま片手でひょいと投げた。

 ……手斧の時も感じたが、何やら光る何かを纏っている。

 そして瘴気はそれであっさり打ち消され戦斧が魔人に大きく切り込んだ。


「なっ!?」


 魔人はその光景がまずいと思ったのか慌てて飛び退いた。

 そしてトモガラその光景に目もくれぜず後ろをちょこちょこ歩いてきていた女性に指示を出す。


「おい、モナカ。たのむわ」


「はい、任されました。魔人だなんて戦ったことありませんが──」


 モナカと呼ばれた小柄の女性は笑顔を作ってそう返事をすると、殴りかかる魔人の懐に自然体でスッと歩くように入り込み、そしてそのまま膝を落とし投げ飛ばした。


「──別に問題ありませんね♡」


「なっ!?」


 小さい小娘に投げられた魔人の顔色が驚愕に染まる。

 全く力まず相手の力を利用する投げ方……浮き落としだ。

 いわゆる空気投げ。

 柔道界隈では神業として名の高いもの。


「……浮き落とし、か」


「あら、ご存知なのですね? そこの……えっと……あの左腕なくなって腹に風穴あいた美男子さん」


「ちげぇよモナカ、ローレントな」


 俺のことを見たまんまの名前で呼んだモナカという女性に、トモガラが呆れた顔でそういった。


「まあ、私ったらつい舞い上がっちゃって♡」


 モナカはいつのまにか俺の側に近づいてくると、「まあまあ♡」と顔を赤らめていた。

 近づいてきたのに気づかなかった……。


「うふふふ、美男子であることには同意せざるを得ませんが、そんなことより距離が近いですよ」


「あら、いいじゃありませんか。共有すべき日本の財産でございますよ」


「でも、でもでもダメなんです!」


「ブハハハッ!!!! おいおい聞いたかよ! 美男子だってよ!! ローレントが!? 美男子!? いつだか近所の子供達に怖がって逃げられてただろ!!! ブッハハハ!!」


 彼女たちの会話を聞いたトモガラが腹を抱えて大爆笑していた。


「失礼な」


「まあまあ、私の様な大人の女性にしかわからない魅力だってあるんですよ、トモガラさん♡」


「それもそれで笑える冗談だぜ」


 どう考えても身長150センチを超えていそうにないモナカの言葉に、トモガラはさらに抱腹絶倒した。


「トモガラさん、それはさすがに失礼ですよ……☆」


「──俺様を無視してんじゃねえええええええええええ!!!!!!!!」


 エマージェンシーな状況なのに、急に和気藹々とし始めた状況に魔人が不満を漏らし爆発した。

 さもありなん。

 今までとんでもない殺伐とした状況だったのに、この変な余裕を持ったトモガラとモナカが来た瞬間雰囲気が変わった気がした。

 これはさすがにコミカルシーンってだけの理由づけにはならないと思うんだがなあ。


「ああ、まだ生きてたのか」


「あらいけません。私ってば美男子がいたもんですから──殺し損ねてしまいました♡」


 モナカがテクテクと魔人に近づいていく。

 トモガラはその様子を相変わらずのニヤケ面で眺めているだけだった。

 さっきは意表をついて投げ飛ばしていたが、相手は魔人。

 柔術だけでは攻撃手段が限られてくるはずだ。

 破邪のミスリルナイフでなんとかHPを出現させたはいいけども。

 適当な攻撃じゃまともにダメージが入らないはずだ。


「魔人の瘴気とやらは確かに面倒な代物かもしれませんが……」


「な!? いつのまにまた接近しやがった!?」


 魔人の攻撃を紙一重でかわしながらモナカは言う。


「それに対処するための技だってあるんです」


「はっ! やってみろよ! 格の違いを思い知らせてやる! さっきの戦斧は魔銀製だったからミスっちまったがよ! バッドトーキシック!」


 魔人は自分の指を噛み血を流すと、そのまま組みかかったモナカにぶちまけた。


「……魔銀なのか? あの斧」


「うんにゃ? ちげーよ」


「だよな」


 どう考えても普通の斧だった気がするのだが。


「どうなってるんだ?」


「まあ見てろって」


 聞いても教えてくれないのでとりあえず素直に目を向ける。

 バッドトーキシックを浴びようとしていたモナカの体が光りだす。


「それこそ、道場六段スキル──闘志」


「なっ!?」


 バッドトーキシックが搔き消える。

 凄まじい熱量を持っていそうだ。

 ……ん? 熱?

 もしかして、エナジーブラストとかマナバーストで俺も対抗できたんじゃないか。

 そんなことが頭をよぎった。


「闘気の上位版だな、取るのは難しいがお前らが必死こいて探してた魔銀の代わりになる」


「マジか……」


「ま、例によって知ったのはこの前だが、ちょうどいいところに魔人が出たって情報が入ったからモナカと二人で請け負って倒しに来たんだよ」


 たまたまタイミングが良かっただけだったらしい。


「っていうか、あのモナカって娘はだれだ?」


「ん? ひたすら道場で稽古に励むプレイヤー?」


「なんだそりゃ」


 道場マニアか?

 そんなモナカに目を向けると魔人の腕を取りそのまま一本背負いしていた。


「ぐがっ!」


「手加減はしません──魔人相手ですから♡」


 腕を挫きながら投げていた。

 魔人の肘があり得ない角度に曲がってしまっていた。


「バカなっ!? 俺様の腕が!?」


「力の入れどころの問題ですよ♡ 美男子さんは見事な入り方でしたが、片腕を失っている分少しずれてましたよ?」


「…………まじか」


 片腕がなくとも極めたと思ってたから少しムッとしてしまった。

 それを指摘できるこのモナカという女性は一体何者なのだろうか。

 

「くそったれ!!! 俺様がこんな小娘一体に!!」


「構造が人間ならば問題ありませんよ♡」


 モナカはニコニコ顔で縦四方固めを魔人に極めていた。


「うがあああああ!!」


 もがく魔人は闘志の力によってぷすぷすと焼けた煙を上げている。


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