表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/626

-25-

 今日も早起き。

 ログインしたら夜明け前でした。


 ひとまず、川はもういいや。

 フィッシャーガーはあんまり湧かないみたいだし。

 一人でエリアクエストをクリアできるのかと言ったらまだ厳しいだろう。

 生産職が続々と川の拠点に集まって来ていた。

 今の所ホームには師匠スティーブンの家を設定してある。

 拠点が軌道に乗るまで気軽にソロをしよう。


 朝からどこへ行きましょうか。

 ポーションの補充だな。

 とりあえず厨房に置いてあるパンとチーズを齧る。

 飲み物は?


 ワイン、開けてみました。

 秘密です。

 ええ。


「わんわん!」


 静かにしろ、バレるだろ。

 スティーブンが起きだす前に、さっさと部屋を出よう。

 駄犬の飯はパンとチーズを齧らせておいた。



[未読のインフォメーションメッセージが届いています]



 んなもん後だ。

 メッセージ機能はオフにしておく。

 必要な時に付けておけば良い。

 ポイントは南の森へ。

 久方ぶりな南の森はところどころ木が切り倒されていた。

 誰の仕業かはだいたいわかる。


 背中に背負っているのは大剣。

 そして手に持っているのは六尺棒。

 杖代わりに使ってますとも。

 草をかき分けてポイントに向かってみると、薬草は根こそぎ毟られていた。

 出戻りプレイヤーは南の森に拠点を移したんだろうか。


 すっかり猟犬の立ち位置になったローヴォに索敵を任せて突き進む。

 そう、新しい薬草の群生地帯を探すんだ。


「わんわん!」


 声が聞こえる方へ向かうとゴブリンが居た。

 茂みから窺うと、ローヴォと睨み合っているゴブリンが三体。

 手に武器は無い、持っているのは薬草だった。

 これは泳がせるべきだ。


 戻って来るように指示を送る。

 調教スキルが火を吹くぜ、吹いたのは口笛ですが。


 大きく迂回して戻ってくるローヴォ。

 そのまましばらく待っているとゴブリン達は周囲を気にしながら適当に薬草を引き抜くと揃って移動を始めた。


 樹海の入り口は雑木林といった形。

 平地に木が密集して生えているが、奥深くへと行くに連れて険しい上り坂になってくる。

 大分なだらかだが、遠目からでもわかっていた。

 森の南には大きな山がそびえている。

 六尺棒を持って来て良かった、杖があるだけで大きく違う。


「ギャギャギャ!」


「ギギッ!?」


 音を立ててしまってバレた。

 なかなかローヴォのように森の中を無音に近い状況で駆けるのは難しい。


「スティング!」


「ギゲッ!?」


 刺突スキルの踏み込みを利用して、飛びかかってくるゴブリンの喉元に棍を突き立てる。

 インパクトの瞬間少し捻るのが重要だ。


「ブースト!」


 その他呪文は流石にMPの無駄だ。

 一応魔法職で十分なMPはあるのだが、節約を気にかけておく。

 倒れたゴブリンの首を踏んで圧し折ると、狼狽える残り二体の頭部に打ち付けて行く。

 山の地の利があるかもしれんが、俺には関係無い。

 倒れたゴブリンの首元にローヴォが食らい付いて仕留める。

 俺も続くように残りの一体が怯んだ隙を付いて大剣を振り下ろした。

 ドロップは?


 魔石(小)が二つ。

 こん棒と髑髏が一つずつ。

 まずまずと言った所。


「キャウン!」


 ローヴォの悲鳴が聞こえた。

 倒れたローヴォの傍に石が転がっている。

 投石?

 一体どこから?


「ケキャキャ!」


 声が聞こえた方向は上。

 ゴブリン程の大きさを持つ猿が手を叩いて喜んでいた。



【ファイトモンキー】Lv5

素早くずる賢い猿。

強い敵が居ると木の上から石を投げる。



 格下だが、流石に地の利が悪い。

 石がもう一発降ってくる。


「キャッキャッキャ!」


 棍で弾くと、手を叩いて喜んでいた。

 うぜぇ。


 大剣をアイテムボックスにしまってヌンチャクに持ち替えた。

 これでそこそこ軽くなって動きやすいと思う。

 最近では大剣背負ってても【ブースト】要らなくなったから、ガチで裏ステータスって奴のお陰なのかもしれない。


 さて、ヌンチャクをどうするのかって?

 まだ【ブースト】は有効なので、投げます。


「アポート!」


 当たるとは思ってない。

 そしてもう一投。

 地味にブーメランじゃなくてもブーメランっぽい扱い出来るので。

 銛とか量を準備しなくて助かっている。

 動きの阻害を狙うなら一杯刺しとくに限るけど。


「ギャッ!?」


 飛び上がった所を足に、続投がヒットした。

 鎖がジャリジャリ絡まっているが、痛そう。

 木から落ちた所を両手に握った棍を振り下ろして叩き落とす。

 HPはそれで全損した。



【喧嘩猿の骨】

柄素材として利用できる。

軽くて堅い。

実はこれで殴られると痛い。


【喧嘩猿の脳】

錬金術で利用できる。

一応食材としても扱われるが、美味しくはない。

保存には瓶が居る。



 まさかの生ものですか。

 猿の脳って、どこの珍味だ。

 確かに見るからに美味しく為さそう。


 そして保存に瓶が居るなんて初見だ。

 持ち合わせなんて無い。

 アイテムボックスに入れることは可能っぽいが、生臭くなりそうだ。

 入れて置く。

 腐らせないうちに帰れば良い!


「ケキャーー!」


「キキッ!」


 断末魔に反応して集まって来た。



【ファイトモンキー】Lv7

素早くずる賢い猿。

強い敵が居ると木の上から石を投げる。


【ファイトモンキー】Lv6

素早くずる賢い猿。

強い敵が居ると木の上から石を投げる。



 レベルは先ほどより高めだが、特に変わった様なことは無い。

 一昔前の俺だったら流石に集まられたら厳しかったかもしれないが。

 今は良い武器だってある。

 ローヴォは昏倒から復帰して、恨みを晴らす満々だ。

 レベル的に、相手取れるのか?

 一応相手は霊長類だ。


「グルルル!!」


「キキャーーー!!」


 レベル6の猿とレベル8の犬が睨めっこしてる横で。

 何故か木から降りてこっちにダバダバと走ってくる猿の相手をする。

 棍でひとつきは躱される。

 飛び道具持って無いと、牙で襲いかかてくるようだ。

 飛びかかってくる猿に合わせるようにヌンチャクを振るう。

 難なくこめかみに当たって、頭蓋骨が砕ける音と共に光の粒子に。


 駄犬は?

 多少HPが減っているのもの何とか勝利と言った所。

 俺の被害はほとんどない様な物なので、ポーションを使っておく。


「わんわん!」


 まだ猿死にきってないのに勝ち誇っている。

 さっさと首元に噛み付いてしまえば良い物の。

 まぁ虫の息だからいいか。


 足で踏んで解体。

 光の粒子にしてやる。

 魔石は落とさなかった。

 骨と脳のみである。


「ケキャー! ケキャキャ!!」


 戦いの様子を見ていた猿が居た。

 牙を剥き出しにして威嚇しているようだが、どっちかっていうと子犬が大型犬にビビって吠えるそれに近い。



【ファイトモンキー】Lv2・恐慌状態

素早くずる賢い猿。

強い敵が居ると木の上から石を投げる。



 レベルがさっきよりも遥かに弱い。

 そしてレベルの横に恐慌状態と書かれている。

 どういうことだ?

 仲間が殺されてパニックを起こしているのか。

 それとも、俺と10レベル以上離れているから恐怖を感じているのだろうか。


 どちらにせよ狩ることは変わりない。

 経験値にしてくれる。

 ヌンチャクを構えると、鳴き声に変化があった。


「アキャーーーーーーー!!!!」


 森全域に響き渡りそうだ声だ。

 流石にこれだとモンスターはよって来ないし、良くない物を誘き寄せる気がする。

 鳴いてる内に息の根を止めておく。


 投銛を手元に出して投げる。

 水の上じゃなくても漁師スキルは活きて、補正。

 よし、首元のジャストヒットした!


「——ギャゲッ!?」


 木から落ちた猿は光の粒子に変わる。

 今回は脳みそ無かった。

 骨だけ、ちくしょう。

 ドロップ品を手早く回収しつつ、この場を離れよう。



[ウギャアアーーーー!!!!]



 遠くの方で、さっきの鳴き声に反応する叫び声が聞こえた。

 空気を振るわせる様な雄叫びだ、森がざわついている。


「わぅわぅ」


「ビビるな、町まで戻るぞ、先行しろ!」


 尻込みするローヴォを後押しして二、三歩進むと。

 背後で大きな音がなった。

 振り返ると、そこそこ大きめの岩が地面にめり込んでいた。

 そしてその岩の上にファイトモンキーよりも大きな体躯を持った猿が乗り上げる。



【バトルゴリラ】Lv6・激昂状態

ファイトモンキーがクラスチェンジした中位種。

従えてハーレムを形成し、戦いを好む。

・群れのボス



 俺の知ってる猿とは全然違う。

 猿公よりももっと凶悪な化け猿に近い面構え。

 夜叉猿だっけな?

 それに近いが、アレよりも弱そうだった。


「ゴギャアアアア!!!」


 余りの雄叫びにローヴォが気圧されて転んでしまった。

 まだ子供だから、流石に格上相手じゃ恐ろしかろう。

 逃げ切れるか?

 うん、無理。

 戦って爆ぜることを選ぼう。

 まさか南の森の山奥に、こんなモンスターが居たなんて。

 踞るローヴォを庇うように、俺は前に出る。


 得物は?

 魔樫の六尺棒と黒鉄の双手棍にしておく。

 大剣・羆刀は、奥の手としてヤバくなったら使おうか。


「ギャア!」


 バトルゴリラが飛びかかってくる。

 想像以上に早かった。

 詠唱してる時間は無い、アイテムボックスから銛を取り出すと牽制で投げる。

 振り払う一撃で圧し折られる。

 だがこれで一瞬の隙を付けたら良いのだが……。


 だめだ、横凪の一撃がくる。

 ヌンチャクの打撃で応じるが、弾いた所で指は打撲一つ負ったように見えない。

 カリカリと打ち付けた筈の手で、指で顔を掻くバトルゴリラ。

 今の内に詠唱してしまえ。


「ブースト! メディテーション・ナート! エンチャント・ナート!」


 武器の攻撃力を底上げする。

 ヌンチャクは腰に戻して改めて両手で魔樫の六尺棒を持つ。

 特性的に一番攻撃力が高い武器だ。


 唸りと共に突進が来る。

 山の傾斜を利用して、傾斜を駆け降り、木を使用して三角飛び。

 右手に持ったしなる魔樫を左腕で硬めで溜を作る。


「イヤアア!!!」


 遠心力を持って一閃。

 狙うのは後頭部。

 手応えは?


「グギャオオオオオ!!!」


 ありませんでした。

 更に激昂状態が加速した気がする。

 着地して、上を目指す。

 六尺棒を利用した歩行、三即だな。

 ウチの流派にしか無い。


 後ろからは叫び声と共に迫ってくる足音。

 ローヴォは?

 確認している余裕は無い。


 これで一応立ち位置が逆転した。

 狙い目は頭部。

 傾斜の上に移動することで少しでも対抗できるようにする。


 ヌンチャクを投げる。

 次は弾かれず、避けられた。

 鉄の痛みを知ってるのだろうか。


「アポート! スティング!」


 相変わらずレイピアではないが、突きの威力が上がるならば問題ない。

 問題ないのだ。

 獣相手に動きを読まれるとかそんなもの無いに決まってる。


「——ッ!?」


 狙いはゴリラの喉仏。


 ……こりゃ驚いた。

 必死の一撃を放った筈なのに。

 まさか六尺棒を掴まれるなんて。


 手応えは?

 微妙な所、多少の手応えはあったが……。

 仕留めきれる程ではなかった。

 だが、HPは半分以上減っている所を見ると、ダメージは大きかったのかもしれない。


 バトルゴリラが勝ち星をあげるようにドラミングする。

 ドドドドと山に重たい音が響き渡る。


 まだ、負けてない。

 お前が死ぬか、俺が死に戻るか。

 俺はまだ死に戻ってない。


 六尺棒から大剣に切り替える。

 異変を感じたバトルゴリラが訝しげにこっちを見ていた。

 六尺棒の届く距離まで接近している。

 故に大剣を背負ってスピードが落ちるなんて気にする事は無い。

 間合いに入っているのだから。


「デヤアアア!」


 勝ち誇るゴリラの顔を打ち付ける。

 牙が折れる音がする。


 それだけだった、タフすぎ!

 ちくしょう、余裕の表情かましてんじゃねぇ!


「アポート! スラッシュ!」


 渾身の力を混めて振り下ろそうとするが。






 脇腹に強い衝撃を受けて。

 俺のHPは全て消滅した。




ーーー

プレイヤーネーム:ローレント

職業:無属性魔法使いLv13

信用度:80

残存スキルポイント:0

生産スキルポイント:3


◇スキルツリー

【スラッシュ】※変化無し

【スティング】※変化無し

【ブースト(最適化・黒帯)】※変化無し

【エナジーボール】※変化無し

【メディテーション・ナート】※変化無し

【エンチャント・ナート】※変化無し

【アポート】※変化無し

【投擲】※変化無し

【掴み】※変化無し

【調教】※変化無し

【鑑定】※変化無し


◇生産スキルツリー

【漁師】※変化無し

【採取】※変化無し

【工作】※変化無し

【解体】※変化無し


◇装備アイテム

武器

【大剣・羆刀】

【鋭い黒鉄のレイピア】※修理中

【魔樫の六尺棒】

【黒鉄の双手棍】

装備

【革レザーシャツ】

【革レザーパンツ】

【河津の漁師合羽】

【軽兎フロッギーローブ】

【黒帯】

称号

【とある魔法使いの弟子】


◇テイムモンスター

テイムネーム:ローヴォ

【リトルグレイウルフ】灰色狼(幼体):Lv8

人なつこい犬種の狼の子供。

魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。

群れというより社会に溶け込む能力を持っている。狩りが得意。

[噛みつき]

[引っ掻き]

[追跡]

[誘導]

[夜目]

[嗅覚]

※躾けるには【調教】スキルが必要。

ーーー


本日の更新は23、24、25話でした!

ではこの辺で!

明日は昼夕更新です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ