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 ストレージから石柱を引き寄せる。

 下に蹴飛ばして空蹴で距離を取り、もう一個石柱を転移させる。

 それを何度か繰り返し、徐々に高度を下げて行く。


「カイトー、おいしっかりしろ」


 ……気絶してる。

 まじか。

 仕方ない奴だな。


 む、下から撃たれているな。

 ベランダから身を乗り出してこっちを見ている。マフィア三人

 とりあえずベランダに二つ、石柱をプレゼントしておく。


 ーーゴシャァッ!

 ーーうわあああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!


 阿鼻叫喚の地獄画図。

 とりあえず庭先というか、門らへんで戦っていたブラウ達とマフィアが唖然とした様子で上空を見上げていた。

 エアリルに怒られていたので躊躇する気は無い。

 早期決戦で行くのだ。

 楽しむのではなく、完膚なきまでに叩き潰す選択を取りましょう。


「くそったれがあああああ!!」


「降りて来やがれローレントおおおおおおお!!」


「貴様ら、今回攻めてくる敵のことを知ってるというから雇ったんだぞ! どうしてくれる!」


 既にアジトの館の三分の一は崩壊している。

 丁度ボス部屋を掠ったみたいで、慌てふためきながら外に飛び出していた。

 隣に二人、プレイヤーキラーを連れている。

 ボスらしき人物にどやされた二人のプレイヤーキラーが上を見上げて罵倒している。


「ペンファルシオの旦那、確かに俺らはローレントを知っていますぜ」


 プレイヤーキラーは他にもいる様だ。

 ペンファルシオファミリーのボスの両隣で慌てふためいてるやつとはまた違って、落ち着いた面持ちだ。

 時計塔にいたバカ三人と、両隣で慌てふためいているアホ二人とは身にまとっている雰囲気が違う。

 一目でできると思わせがちだが、このゲームの中でできるできないって判断つきづらいっていうか。


 ……うん、わかんない。


 強そうに見えて弱いのとか。

 久利林みたいに飄々としてて強いのもいる。

 ちなみに一見強そうなガストン、イシマル達屈強な生産職は、ザッ普通といった戦闘能力だ。


 とりあえず戦ってみないとな。

 百聞は一見に如かずというし、強さは戦わなければ感じ得ないのだ。

 石柱がそろそろなくなっているのでカイトーを背負ったまま徐々に石柱間を飛んで降下していく。


「ただ、知っててもどうにもならんのですわ」


「やっぱすげぇよミヤモトの兄貴、この状況で動じてねぇ」


「一緒に依頼受けといてよかったぜ」


 屋根が潰れてむき出しになった二階部分に着地する。

 カイトーは適当にその辺に下ろしておいた。


「どうにかするのが貴様ら裏ギルドの連中だろうが、こっちは高い金を払ってんだ!」


 ちょび髭オールバックのいかにもマフィアの親玉やってます的な雰囲気のペンファルシオが悪態をついた。

 それに対してミヤモトというレッドネームが目立つ男は刀を抜いた。


「壊れるのは必要経費として考えりゃいいってもんじゃないですかね? ほら、こうして石柱が切れれば自ずと下に降りて来ますし、そうなれば後は俺に任せてくれりゃ十分ってもんですよ」


「ほう」


 なかなかに自信満々のご様子じゃ無いか。


「損失額を考えろ! ビジネスで考えれば貴様らのやり方は俺の敵と同じだ」


 ミヤモトの言葉に納得がいかないペンファルシオは懐から銃を取り出して彼に向けていた。


「選択肢はない。殺さないだけマシだと思え。依頼料は全額返金してもらう。そしてこの状況を生み出したそこのローブの男は必ず殺して首を俺の前にもってこい」


「へえへえ」


「ちゃんと聞いているのか? 貴様らのギルド長にもこの事は告げる。俺がどれだけの損失を受けたのかをはっきりとさせて、後はそっちの都合でどうにでも処罰を受けーー」


 耳糞をほじりながら話を聞き流していたミヤモトは、全てを聞き終わる前に右手に持っていた刀を横に振った。

 それだけでペンファルシオの言葉が中断され、そして首が横にずれて落ちる。


「あ、兄貴!」


「いいんですか!?」


 ゴトリと床に落ちた首と、少し遅れてドサリと崩れたペンファルシオを見て。

 側に控えていた二人が動揺していた。


「敵だと言われたら仕方がないわな。マフィアと裏ギルドは同業他社みたいなもんだ」


 刃先についた血糊をピッと払うと、ミヤモトはさらに言葉を続ける。


「どちらかが割を食うならば、こういう判断も致し方ない。ペンファルシオは抗争中に巻き込まれて死んだってことにすりゃいいだろ? なあにもともと敵が多い人間だから死んでも不思議じゃないし、むしろ逆に喜ぶ奴が多いわな」


 ニヤッと笑うミヤモトの顔を見て、残された二人は引きつった笑いを浮かべていた。

 そしてミヤモトは改めて俺に向き直って、俺の後ろで寝かされたカイトーを見て言った。


「おん? そいつは中立の盗賊ギルドのカイトーだな? ……丁度良い。邪魔なプレイヤーリストに載ってたから、連れて帰れば俺もお前ら二人とも昇格の機会が得られるぞ」


「どういうことっすか?」


「え、俺ら昇進できるんすか? やったぜ」


「はあ……お前ら本当にノータリンかよ。そいつもある意味同業他社だろうが。中立うたって自分らだけ綺麗どころの立ち位置にいやがるからよ、捕まえて恩を売るか脅すかすればなんにせよこっちに旨味があるだろが」


「た、たしかに! さすがだぜミヤモトの兄貴!」


「これで幹部に上がれたら最高でっすね!」


「って事でローレントよお、とりあえずおまえの首も必要なんだわ。まあ首は無理でもキル証明だけはとっとかないとダメなもんだから、そこんとこよろしく頼むぜぇッッ!!」


 そこそこ早い剣速と踏み込み。

 ミヤモトはペンファルシオを切り捨てたその刀で俺に向かって来た。



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